IBM、Amazonを特許侵害で提訴

 米IBMは10月23日、自社の特許を侵害したとして、電子商取引大手の米Amazon.comを提訴したと発表した。損害賠償の金額は特定されていない。

 IBMは、Amazonが複数の特許を侵害したうえ、自社の知的財産を意図的に不正利用したと主張している。侵害された特許としてIBM側は、双方向サービスにおけるアプリケーションの表示、双方向ネットワークにおけるデータの保存、双方向サービスにおける広告の表示、電子カタログからの商品注文などを挙げている。

 今回IBMは、テキサス州東部のテイラー地区とラフキン地区の2つの地方裁判所にそれぞれ訴状を提出した。IBMは、Amazonに特許侵害について通知したのは2002年9月だったが、同社は協議に応じようとしなかったとしている。またIBMによると、Amazon以外の企業は問題となっている特許のライセンスを取得しているという。

 Amazonは、今回の訴訟に関する正式な通知は受け取っていないとしてコメントを拒否した。

 IBMの広報担当者は、IBMが訴訟を乱発するような企業ではないとしたうえで、今回このような措置を取るに至ったのは、IBMがこの問題を深刻に受け止めているためだと強調している。

 訴状には、「Amazonは、IBMの技術を不法に入手し、ビジネスに利用している」と書かれているほか、Amazonが「違法な特許侵害」によって生み出した数十億ドルの収入に応じて特許使用料を請求する権利がIBM側にあると書かれている。また、Amazonが特許侵害行為を継続できないようにするため、IBMは裁判所に差し止め命令を出すよう求めている。

 米アレン・マトキンス法律事務所のパートナー、ランディ・ブロバーグ氏は、この裁判でAmazonが勝利した場合、業界に大きな影響が及ぶ可能性があると指摘する。同氏によると、IBMは長年にわたり、自社が多くの特許を保有していることをさまざまな企業に通知してきたという。また、過去10年ほどの間に、IBMからこうした通知を受け取ったという企業から「3〜4件ほど」依頼があり、いずれの企業もIBMによる提訴を避けるためにライセンスを購入したとしている。

 しかしAmazonは、今回の訴訟を受けて立つだけのリソースを持っている。ブロバーグ氏は、同社が勝利した場合、IBMが他の企業に対し特許ライセンス購入を促した行為について詳細な調査が行われる可能性もあるとしている。

 IBMの広報担当者は、ブロバーグ氏の指摘に対し、特許のライセンスを購入するよう促す書簡を他の企業に積極的に送付するようなビジネス慣行はないと反論している。同担当者によると、IBMがアプローチしているのは、許可なく自社の技術を利用していると思われる企業だけだという。

 今回の訴訟が、業界内に波紋を起こすのではないかと見られているもう1つの理由は、問題になっている特許が無効と判断されるリスクが存在することだ。この場合、他の企業もIBMの特許ライセンスの根拠に疑問を投げかける可能性がある。ブロバーグ氏は、「特許侵害で訴訟を起こすのは、一か八かの賭けだ」と指摘する。

 訴訟に踏み切ったIBM側にも弱みはある。1つは、同社がAmazonによる特許侵害を察知してから数年間も何もせずにいたことである。ブロバーグ氏によると、この事実はAmazon側に有利な材料になるという。また、特許を巡る裁判における原告側の訴訟戦略に反しているという問題がある。通常、始めに小規模な立場の弱い企業を相手に訴訟を起こし、裁判所から自社に有利な判断を引き出したうえで、特許に関する法令順守を求めてより大きなライバルに挑むという手法がとられるが、今回IBMは、いきなりAmazonを相手取って訴訟を起こしており、厳しい法廷闘争になる可能性がある。

(ホアン・カルロス・ペレス/IDG News Service マイアミ支局)

提供:Computerworld.jp