ソフトウェア特許コンファレンスで提示された問題とソリューションの概要

11月17日、「Software Patents: A Time for Change?」(ソフトウェア特許に変化の時代到来か?)と題されたコンファレンスが、Boston University Law SchoolとMassachusetts Institute of Technologyによって開催された。コンピュータのヘビーユーザと法律家が同席するという一風変わった本コンファレンスにおいて様々なパネラーが総計10時間にわたり繰り広げたのは、ソフトウェア特許にまつわる問題や想定されるソリューションについての討論であった。

パネル1:メインディベート:ソフトウェアに関する特許法とそのリフォーム

本コンファレンスの口火を切ったのは、Computer & Communications Industry Associationの上級研究員およびUniversity of Michigan School of Informationの非常勤講師を務めるBrian Kahin氏による、ソフトウェア特許に関する問題点の説明であった。ここで解説されたのは資産としてソフトウェア特許を取得した企業についてであるが、同氏が想定していたのは、自社で開発中のテクノロジと関係の薄い特許を多数申請ないし買収したというケースである。ソフトウェア産業においてこうした行為の多くは、同業他社が特許資産を利用した賠償金目的で仕掛けてくる特許訴訟に対する防衛策として行われている、とのことだ。

欧州連合(EU)におけるソフトウェア特許の現状について解説をしたのは、Foundation for a Free Information Infrastructure(FFII)のメンバであり、2003年から2005年にかけて同組織におけるイギリスでのコーディネータを務めていたJames Heald氏であった。同氏の説明によると、過去に同地域で特許訴訟が起こされたことはないが、ソフトウェア特許については、関係する司法制度そのものに一貫性が欠けているとのことである。ヨーロッパの特許管理当局は、特許として申請しうるソフトウェアの要件について非常に漠然とした規定しか定めておらず、具体的にどのような要件であるかをHeald氏が「テクニカルな問題に対するテクニカルなソリューション」とされていますと説明すると、会場はクスクスという笑い声で満たされた。Heald氏によると、欧州憲章には特許に関する記述が無く、裁判所への問い合わせも簡単には行えないため、ヨーロッパにおけるソフトウェア特許の将来的な展望には憂慮すべき不鮮明さが漂っているとのことであった。実際のところソフトウェア企業の大半、特に小規模な会社がこの種の問題を考える場合、業界全体が著作権という枠組みで規制されていると見なす傾向にあるとのことだ。

パネルの第1部を総括したのはBerkeley Center for Law & Technologyの取締役を務めるRobert Barr氏であった。Barr氏の説明によると、多くの法律はソフトウェアとハードウェアを区別しておらず、そのような体制をもたらした源流は、半導体産業がソフトウェア産業を規制する目的で整備された法律にまで遡れるとのことだ。こうした体制にほころびが生じるのは、ハードウェア製造者がソフトウェア開発に手を出した場合であり、具体的な事例としてはCisco Systemsの試みた自社のネットワーク製品に対する独自オペレーティングシステムの実装などが挙げられる(Barr氏は以前にCisco Systemsの知的所有権についての責任者を務めた経験があり、同社の特許コンサルタントとして活動していた)。次にBarr氏は、現在進められている特許関連法のリフォーム構想について触れ、そこでは損害の分担や意図的な権利侵害に関する改善が検討されていると語った。もっとも、こうした試みが有効に機能するかという点になると、同氏は懐疑的な態度を示していた。

パネル2:ソフトウェア特許に関する実証的証拠

パネルの第2部は、University of California Berkeley Graduate SchoolおよびEconomics of Technology and Innovation at the University of Maastrichtにて教授を務めるエコノミストのBronwyn Hall氏による、数理経済学的な分析結果の解説で始められた。同教授は1つのイベントスタディとして、1994年から1995年の間に起こされた特許訴訟がソフトウェア産業にどのような影響を及ぼしたかを説明し、企業にとってソフトウェア特許が益をもたらす存在であるのかを論じた。ここで報告されたケースは比較分析をする関係上、ソフトウェア業界に属さない複数の株式公開会社企業のデータを基にしている。Hall教授による分析結果は、In re Alappat 33 F.3d 1526(Fed. Cir. 1994)、In re Warmerdam 31 USPQ2d 1754(Fed. Cir. 1994)、In Re Lowry 32 F.3d 1579(Fed. Cir. 1994)、In re Beauregard 53 F.3d 1583(Fed. Cir. 1995)に関係したハードウェア/ソフトウェア企業および、米国特許商標局(USPTO)のガイドラインを基に、5日分の市場効果を計算したものである。そして同教授の導き出した結論とは、ソフトウェア特許の中には有益な効果を及ぼしていないものが多く存在し、しかもその割合は上昇傾向にある、ということであった。

ソフトウェア開発者側の観点からの見解を述べたのは、Boston University School of Lawで講師を務めている Jim Bessen氏であった。Bessen氏が示したのは、ソフトウェア業界において1つの企業が特許訴訟に巻き込まれる可能性に関する統計値である。結論として同氏は、特許訴訟で失われる損失は得られる利益を上回っていることを明言した。

パネル3:FOSSコミュニティ、起業家、標準、情報通信、電子商取引、金融サービスにまつわるソフトウェア特許

FOSSコミュニティを代表して発言したのはMIT Sloan School of ManagementにてTechnological Innovation and Entrepreneurship Groupの代表を務めるEric von Hippel教授であり、分散型の開発ネットワークがどのようにテクノロジの発展に貢献し、新奇的な考案に対する権利や報酬がどう扱われているかを解説した。von Hippel教授は1つの事例としてPostgreSQL v7.4のインテリジェント・データ・バキューミングのケースを取り上げ、この機能の設計や開発に寄与した人間の数を示した上で、このような機能を実装する行為は特許という枠組みに収めることが不可能であることを論証したのである。「開発の成果を特許として申請するのは、いわゆる発明者に相当する人々ではなく、雇用者である企業が行っているのです」。

起業家側からの意見を述べたのは、Berkeley Center for Law and Technologyの所長およびElectronic Frontier Foundation(EFF)の理事会メンバを務めるPamela Samuelson氏であった。Samuelson氏は創業間もない企業に注目して、大部分の起業家はソフトウェア特許への関心が薄く、その影響についても意識が低いとしている。創業間もない企業によるソフトウェア特許への関心が薄いのは、これらの企業はUSPTOへの特許申請による既得権益を有しておらず、また事業規模も小さいので恐喝的なパテントトロール(patent troll)に狙われる危険性をあまり感じないためである。ただし、こうした企業が新規株式公開を行うレベルに成長すると、パテントトロールに狙われる危険性も高くなる。Samuelson氏も他の講演者と同様、現状の特許申請システムをリフォームする必要性を訴えていた。

標準という観点で講演をしたのは、W3CのTechnology and Society Domainのディレクタを務めるDaniel Weitzner氏であった。Weitzner氏の説明によると、設立当時のW3Cはテクノロジ的な側面に集中していたため、特許というものを意識してはいなかったとのことである。つまり、技術使用のライセンスに関する標準の制定がW3Cで検討されることはなかったのだが、開発者は従来そうした活動に関与しないのが通例であったため、そのような発想自体に思い至らなかったのである。これまでインターネットの世界は、いわゆる習慣法的な標準によって規制されてきた。そのため、すべての開発者が同意してライセンスに関する標準を一元化するとなると、関係者の数の多さと多様性が障害となるのである。

ソフトウェア特許に起因した言論の自由の規制という観点から情報通信の分野をカバーしたのは、EFFのPatent Busting Projectにて法律スタッフを務めるJason Shultz氏であった。同氏は、特許資産の存在は独占状態を生みだし技術革新を阻害すると語り、その事例としてブログに関する特許の申請数は200件にも及んでいること、そして、データへのアクセスや人々の社会的交流の手法については既に無数の特許が取得されていることに言及した。Shultz氏は、例えば電話などソフトウェアでないものの特許とソフトウェアの特許では違いがあることに触れ、ソフトウェアの場合「新奇性をもたらしたのは人間の役割であったが、そうしたものはテクノロジには当てはまらない」としている。その後Shultz氏は、ソフトウェア特許を取得した者は他の企業を狙うのではなくエンドユーザの利益に反する活動をするようになると続けた。例えば、仮にブログ関連の特許申請がいくつか認められたとすると、Bloggerを買収したGoogleなどは特許侵害の訴訟に巻き込まれる可能性が非常に高くなるであろう、とのことだ。

電子商取引の分野について述べたのはeBayで特許関係の相談役補佐を務めるEmily Ward氏で、同社が体験したソフトウェア特許に関する事例を紹介した。同氏は「ソフトウェアだけを特別扱いする理由は何もありません」と強調しつつ、この分野において特許侵害訴訟のターゲットとなるのは主としてソフトウェア企業になるだろうが、その理由としてソフトウェア特許が容易に取得できる点を指摘している。また大手企業の大部分は各自の有す特許権を行使しようとしないだろうが、それは最終的な利益をもたらさないからである。仮にこうした企業が大手の同業他社と相対する状況になった場合、相手側も豊富な特許資産を抱えているはずであり、どちらも勝利者とは成りえない可能性が高く、それは核戦争においては勝者など存在しないと言われているのと同様であると。ところが、規模の小さい企業ではこうした点は鑑みられない。そして往々にして見られるのが、企業が赤字経営に転落した際に、保有特許を利用した特許侵害の訴訟により損失を補填しようとするケースだ。具体的な例としてWard氏は、eBayの場合は毎年100近くの特許関連訴訟に巻き込まれているという点を強調していた。こうしたパテントトロールたちは、特許の法的効力を軽視する傾向の強い自治体を選んだ上で、侵害訴訟を起こすケースが多いとのことである。

この部のパネルを締めくくったのはFederal Reserve Bank of Philadelphiaの調査部門でシニアエコノミストを務めるBob Hunt氏であった。冒頭Hunt氏は、金融サービスとソフトウェアとがどのような関係にあるかを、統計的モデル、データの結合(信用情報など)、ヘッジテクノロジなどを実装する場合を用いて説明した。同氏はより大局的な観点からソフトウェア特許について語り、「特許の軍拡競争」を繰り広げるだけでは企業の研究開発に貢献しない特許が増えるだけであって、特許のあり方としては、特定のテクノロジと密接に関連した曖昧性の低いものが望ましい、との持論を述べている。同氏は、専門家でない業界人が特許を申請するとダメージは更に広がり、市場全体としての革新性を損ねる方向に誘導しかねないと警鐘を鳴らした。

パネル4:法的観点から見たソフトウェア特許

パネルの第4部はGeorge Washington University Law SchoolJohn Duffy教授による、ソフトウェア産業とその他の産業分野における特許のあり方は、これまで言われていたほどの差異はないという旨の発言で始められた。つまり、境界線の不鮮明さ、複数の革新的製品の並立状態、企業規模の小ささ、分散環境下での開発活動などは、どのような産業分野にも共通する要素なのだと。また、USPTOは曖昧性の高い特許に許諾を与えていると言われるが、それはソフトウェア産業にだけ特有の問題ではないと説明されていた。Duffy教授の見解に従えば、特許というシステムに共通するより明確な基準が確立されるべき、ということになる。

アメリカにおける特許関連法について語ったのは、University California Berkeley School of LawPeter Menell教授であった。ソフトウェア特許にせよビジネス特許にせよ、特許として受理されるものは、35 U.S.C. 101に定められた「process」(プロセス)であることおよび、Report No. 1979, 82d Cong., 2d Sess.にある「anything under the sun made by man」(人の作り出したこの世に存在するすべて)という1952年に制定された要件を満たす必要がある。法解釈上ここで言う「process」とは、物理的な効果を生み出す製品であると見なされており、そうした意味においてソフトウェアは含まれないことになる。この第101条にある文言が定められたのは、1952年というソフトウェア産業が誕生する以前の話であり、同条文の起草者にとっては、この内容が将来的にソフトウェアという存在をカバーすることになるかなどは思いもよらなかったはずである。また第2の要件である「anything under the sun」(この世に存在するすべて)という記述を論拠として曖昧性の高い特許申請を許すのにも問題があり、言外の要請として第101条などの関連条項も遵守させる必要性から、この要件は「anything under the sun that is made by man, but it is not necessarily patentable under section 101 unless the conditions of the title are fulfilled」(人の作り出したこの世に存在するすべてが対象となるが、それだけでは必ずしも第101条の定める特許出願物になるとは限らず、そのためには同条項の条件を満たす必要がある)とされている。Menell教授は裁判所や特許システムに対して、物事をより広い視野でとらえ、歴史的な背景も考慮に入れることを求めていた。

Boston University Law SchoolのMichael Meurer教授は、特許の分類法についての説明からスタートし、境界線の不鮮明さ、特許情報への公的なアクセス、所有という枠組みにとらわれない財産権、特許認可に要するコストなど、関連する様々な問題を列挙した。同教授は財産権と所有についての問題を説明する際に、かつて教授の父親がカモ狩りに出掛けていた当時の話だとして、「仮にカモを1匹しとめたとしても、それだけで群れ全体の所有権は主張できない、というのが当時の共通認識でした」という例え話を持ち出した。つまり先のDuffy教授とは異なり、Meurer教授の主張では、特許問題はソフトウェア産業でこそより深刻な意味を持つ、ということになる。実際、USPTOは現在こうした問題点の一部をリフォームすべく検討を進めているところであるのだが、有効な変更を施すにはロビー活動が不足しているとのことだ。またIBMは、特許の申請企業だけではなく個人としての発明者も申請者名に記載することで、特許の透明性を高めるべきだと提案している。

University of Akron School of LawJay Draftler教授は、化学とソフトウェアの分野における特許の相違点から話を始めた。つまり何らかの化学反応について特許を申請した場合、特許として認められるのはそこで使われる触媒だけであり、問題の反応式に関与しうる化学物質のすべてが特許に含まれる訳ではない、ということである。これに対してソフトウェアの場合は、フローチャート全体が特許の対象物と成りえるため、その点では他の分野よりも窓口は非常に広いと言うことができる。次にDraftler教授は話を特許申請に絞り、前述の第101条における「whoever claims」(申請をするいかなる者)という文言に着目して、これがソフトウェアに対しても適用できるかを説明した。同教授による結論は「適用できない」ということではあるが、この文言については今後も引き続き検討をしてゆきたいとしている。

Draftler教授が指摘したのは、ソフトウェア開発は必ずしも新奇的な考案を意味しない、という点である。つまり新奇的な考案を行うには、テクニカル的なリスクを負う必要があり、必然的に失敗をするリスクも伴うと。この点、ソフトウェア開発の場合は、そうしたリスクが不可避という訳ではない。つまり、ソフトウェアの保護には特許よりも著作権というシステムが適しているのには、そうした理由があるのである。Draftler教授の説明にて、特許戦略にまつわる失敗談として取り上げられていたのが過去30年間における最大の特許取得者であるIBMであり、既に同社はその特許資産のかなりの部分をパブリックドメインとして公開しているとのことであった。

パネル5:討論会:今後の活動およびリフォームのオプション

パネルの第5部の先陣を切ったのはSoftware Gardenの代表を務めるDan Bricklin氏による、特許審判における控訴尋問の場で不十分な知識しか持たない陪審員によってもたらされる問題についての討論であった。つまり、特許侵害を問われているテクノロジを実際に使用したことのある陪審員がいない場合、ないしは、どの陪審員もそうしたテクノロジと原告側の主張する特許との関連性を理解できていない場合、というのが現実に起こりえるのである。Bricklin氏は今後の希望として、陪審員の中の最低1人は審議対象のテクノロジを使用した経験を持つものを選ぶようにし、陪審員への報酬も弁護士並みに引き上げて、審議に必要な知識の収集に費やせる資金的余裕を持たせるようにできないものかとしていた。特許審判における控訴尋問が重要であるのは、そこでの結果が「究極的な先例として」当該特許が用いられる産業全体に影響を及ぼすためである。

Progress and Freedom Foundationで非常勤上級研究員を務めるSolveig Singleton氏の語るところでは、ソフトウェア特許に関連した問題の山積状況に対しては、例えば特許というシステムを完全に撤廃するという極論から、現行の特許審査制度を改善するという穏健案まで、非常に多数のソリューションを想定することが可能だということだ。同氏によると、いずれのソリューションを採用するにせよ、必要なのは関係者の動機を高めることと、特許申請の評価過程をリフォームすることである。例えば行政機関としてのUSPTOに行動の一貫性が欠けている理由は、それを行おうとする大きな動機がこの組織に存在しないためであるが、これと対照的なのが軍隊という組織であって、そこでは敵兵を倒すという動機が存在し、そのために関係者全員が最善の努力を払うようになっている。

ソフトウェア特許の持つ曖昧性について解説したのは、Brookings Institutionで客員研究員を務めるBen Klemens氏であった。同氏が具体例として取り上げたのは、全米大手の書店チェーンBarnes and Noblesが展開したオンラインストアに対するAmazonによる訴訟事件である。つまりこのような非ソフトウェア系の企業であっても、IT部門を運用しようとすれば、ソフトウェア特許の持つ曖昧性に起因して、何らかの特許侵害に巻き込まれる可能性からは逃れられなくなっているのだと。こうした観点からKlemens氏は、パテントトロールという行為を「知識を持つ者が、正しい知識を持たない者に対して特許侵害訴訟を仕掛けようとすること」という独自の定義で説明している。またKlemens氏は「特許というシステムに辟易した法律家が多数存在する現在、何かが起こると期待して良いでしょう」という表現を用いて、立法府である議会よりも司法制度によるソリューションの導出を期待していることを示した。

USPTOのリフォームをする際に避けては通れない問題について言及したのは、Computer & Communications Industry Associationの代表兼CEOを務めるEd Black氏であった。同氏は最大の問題の1つとして、「検討すべきテクノロジを理解している議員が12名程度しかいないこと」を挙げている。Black氏が待ち望んでいるのは、予備知識のない人間がエレベータでの移動時間中に目を通す程度で理解可能な文章でいいから、個々の問題の本質をそれぞれ1枚の用紙にまとめ、これから何を行うべきかを分からせるようにするという作業を、誰かが行うことだそうである。この目標の達成の障害となるのは、Black氏の見なすところの報酬のみを最優先している特許関係の法律家たちであり、そうした人々が最大の発言力を有しているということだそうだ。

最後を締めくくったのは、Software Freedom Law Centerの顧問を務めるRichard Fontana氏による、オープンソースとUSPTOの関係についての説明である。Fontana氏が望んでいるのは特許申請の公開が進むことであり、そうした観点から同氏は、バイオ産業におけるバイオロジカル・デポジットに相当するものをソースコードのデポジットとして構築することを提案した。Fontanta氏は「オープンソースを訴訟の対象とするのは現実的ではありません」と説明し、オープンソースの場合ソフトウェア特許に対して不安を感じる必要性はさほど多くないと結論している。またソフトウェア特許においてオープンソースが大きな役割を果たすようになるのは、パテントトロールや曖昧性の高い特許申請といった行為が廃れた後の話になるだろうとのことだ。ただし、特許訴訟に巻き込まれる可能性は低いとは言うものの、オープンソースの多くは、GPLのv3(2006年7月27日時点の草案)およびv2(1991年6月発行)などの著作権ライセンスの中にアンチパテント条項を記載しておくことで自己防衛を図っているのが現状である。

本コンファレンスの一部は批評大会という趣が強かったものの、様々なバックグラウンドを持つ多数の研究者たちが意見交換できた点は評価すべきであろうし、議論を盛り上げるためにパネラーがあえて反論をする場面などは、それなりの聴き応えがあった。欲を言うならば、より白熱したQ&Aセッションがあってもよかっただろう。今回のコンファレンスから導き出せるのは、現状を変えるための何かが必要だという結論であるが、問題はその行動の主体となるのが司法機関なのか立法府なのか、あるいはUSPTOなのか草の根運動なのかという点だ。近未来に変革をもたらす可能性として一番考えられそうなのは、やはり草の根運動ということになるだろうが、それには特許関係の法律家およびソフトウェアの開発者やエンジニアが協力して参加する必要があるはずだ。

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