LiMo Foundation設立、モバイルLinuxのコモディティ化を目指して

先週、Motorola社を含む6社の携帯電話メーカが、「モバイルLinuxについてのグローバルなイニシアティブ」であるLiMo Foundation設立の正式発表を行なった。LiMo Foundationは、プライベートな協力体制を敷いてモバイルLinuxの開発を行っていくことを計画している。成果物はオープンソースにその端を発するものではあるが、現在のところはそのすべてがオープンソースというわけではない。

非営利の財団であるLiMo Foundationには、Motorola、NEC、NTT DoCoMo、Panasonic、Samsung、Vodafoneの6社が各々80万ドルずつを出資しようとしている。LiMo Foundationが掲げる目標は、Linuxベースの「エコシステム」を作り上げ、モバイル用のプラットフォーム/アプリケーション開発のうちのコモディティ的な部分を開発するためのプライベートな協力体制を育てるというものだ。

Motorola社エコシステム・市場開発担当副社長のChristy Wyatt氏によると、モバイル関連の顧客は、自分たちの携帯電話に使われているオペレーティングシステムが何であるのかは知らないし気にもかけないのだが、優れたメモリ管理などの一部の機能はどの顧客からも求められるという。したがって、そのようにどの顧客からも求められるメモリ管理のような「コモディティ」的な機能についてLiMo Foundationで協力して開発を行うことができれば、各企業は時間も資金もエネルギーも節約できることになる。そしてその結果、各企業は、それ以外の部分、つまり(LiMo Foundation参加企業同士であれその他の企業であれ)ライバル企業との差別化を図ることのできる、豊富な機能を持つアプリケーションの開発に集中することができるとのことだ。

Wyatt氏によると、「実際、新しい開発モデルを作り出すということが活動の目的なのです。LiMo Foundationに参加している企業はどこもすでにビジネス的にかなり順調に行っている企業です。そしてここでさらに、みんなで協力し合うための単一のリファレンス実装を持つことになります。このことが重要なのは、それにより私たちは、モバイルLinuxという優れたプラットフォームを中心としてエコシステムを作り上げることができるようになるからなのです」とのことだ。

とは言えこのエコシステムの全体がオープンというわけではない。Wyatt氏によると「私たちはオープンソースの成功事例について調べましたが、ワイヤレス通信業界は特許やライセンス関連での込み入った複雑な事情を数多く抱えているので、プラットフォームの中心部分がすでにGPLではあるとは言え、全部が全部オープンソースでというわけには行きませんでした。そこでLiMo Foundationの開発メンバーである参加企業がGPLのプラットフォーム上で開発を行ない、開発メンバー以外の参加企業はそのライセンスを得て、自社の商用製品に統合することができるという形になりました。つまりまず参加各社はLiMo Foundationに技術提供をします。そして、参加各社は、LiMo Foundationに提供された技術全体を、モバイルプラットフォームに統合するためにLiMo Foundationからライセンスし返してもらうことになります」とのことだ。

LiMo Foundationにより、Motorola社を含む設立メンバー企業はライバル企業のNokia社に対抗するための強力な武器を手に入れたのかもしれない。しかもそれだけでなくLiMo Foundationは、Linuxベースの携帯電話の機種を大幅に増やすことを見込んでいる。ただしこのことについて、モバイル機器用オペレーティングシステム開発のライバル企業Symbian社は「膨大な作業」が必要になるだろうとコメントしている。

数々のオープンソース関連の文書の著者として知られるDavid A. Wheeler氏によると、LiMo Foundationが目指すような協力体制からは「大きな恩恵」を得られる可能性があるという。「Unixが採用された時の様子に非常に似ている。その時も、何社かの企業がすべてを全部自分でやろうとすると資金がかかりすぎるということに気付いたのだ」とWheeler氏は指摘した。

Wyatt氏もWheeler氏と同じ考えのようだ。Wyatt氏は「安定した堅牢なプラットフォームが必要とされています。しかし、研究費や開発費が浅く広く費やされてしまうと、そのようなプラットフォームを実現するところまで到達することができないのです。そこで、技術革新とコストダウンを両立する方法は何だろうかと私たちは考えました。そして既存のプラットフォームの全選択肢を調べた結果、商用プラットフォームではその2つを両立させることはできないという結論に達したのです」と説明する。

Motorola社は以前、Symbian Mobile OSに出資していた。しかし昨年、Nokia社に持ち株を売却している。そして今ではSymbianベースであるMotorolaの携帯電話は唯一「A1000」のみとなっている。一方Nokia社のSymbianベースの携帯電話は30種以上だ。そのためMotorola社のLinuxへの移行は、Nokia社から市場シェアを奪うための動きだと見ることもできる。(なおEETimes.comの記事内で引用されているIC Insightsによる調査結果によると、2004年のNokia社の売り上げは同年のMotorola社の2倍であり、またそれはMotorola社とSamsung社の売り上げを足し合わせたものよりも多い。)

それでもWyatt氏によるとLiMo Foundationは、過去へのこだわりではなく未来を見据えての活動なのだという。「私たちはモバイルLinuxによって最も優秀で最も革新的な最良の開発者たちが、市場で自分たちの強みを発揮するためのより大きな場を提供することができるのです。私たちはオープンなエコシステムの可能性を信じているのです」。

一方Wheeler氏は、LiMo Foundation設立の動機はむしろMotorola社が、Symbian社のプロプライエタリなライセンス上の制約に縛られることを嫌い、そこから抜け出したいという要求から来たものである可能性があるという。「自分たちの運命は自分たちで決めたいというのは、多くの企業が言っていることです。したがってMotorola社の立場で考えれば、非常に納得のいくことです」。またWheeler氏は、LiMo FoundationはApple社の最近のiPhoneの発表に対する反応である可能性もあるという。Wheeler氏によると「Apple社は、同社を経由したものを除き(iPhone用の)サードパーティ製のアプリケーションを認めていません。私はApple社は優れた製品を作っていると思っていますが、しかし勝つのはいつもオープンな製品なのです」とのことだ。さらにWheeler氏は、もしLiMo FoundationからiPhoneと競合するような携帯電話が生まれれば、「Apple社もその方針を変えざるを得ないのではないかと私は思います」と付け加えた。

Wyatt氏によると、LiMo Foundationの設立一周年までの目標は、より多くの参加企業を集めることだという。これは、LiMo Foundationがまかなう必要のある4800万ドルという経費を考えると驚くには当らない計画だ。LiMo Foundationの文書では、より多くの参加企業が集まれば、(目下の参加企業の自己負担分の費用を削減することが可能になるため)設立2周年までには、創設メンバーである企業は各々40万ドルを出資するだけで済むようになるだろうという楽観的な見積りをしている。Wyatt氏によると「すでに様々な企業から多くの関心を寄せていただいています」とのことだが、Motorola社としては、モバイルLinux界では良く知られた企業であるMonta Vista社やTrolltech社と提携する計画はないとのことだ。Wyatt氏は「どちらの企業とも今のところ関係はありません」としたものの、前OSDL(Open Source Development Labs)のMobile Linux Initiativeについては協力関係を望んでいると述べた。

NewsForge.com 原文