AMD、サーバ向けクアッドコア「Barcelona」を正式発表――アナリストはリリース遅延の影響を懸念

 米国AMDは9月10日、回路線幅65ナノメートル(nm)のサーバ向けクアッドコアOpteronプロセッサ「Barcelona」(開発コード名)を正式発表する。同社は8月からBarcelonaを出荷しているが、10日の記者会見で同プロセッサを正式発表し、納入先と価格、ベンチマーク・テスト結果を公表する予定だ。

 AMDのサーバ/ワークステーション部門コーポレート副社長、ランディ・アレン氏によると、今回発表されるBarcelonaは、省電力に重点を置いたクロック周波数1.9GHz、消費電力68ワットのモデルと、価格性能比に重点を置いた2.0GHz、95ワットのモデル。AMDは第4四半期に、ハイパフォーマンス・アプリケーション向けの2.3GHz、120ワットのモデルと、今回発表の2モデルを高速化したバージョンをリリースする。

 AMDは2003年に初代Opteronを投入し、旺盛な需要を享受した。同プロセッサの省電力性能を顧客が歓迎したためだ。だが、まもなくIntelも省電力競争に参戦し、両社はプロセッサの小型化・高速化を進め、90nmへの縮小やデュアルコア・プロセッサの提供でしのぎを削るようになった。そうしたなかでAMDの業績は悪化し、最近の数四半期は数億ドル台の赤字を計上している。

 また、AMDはグラフィックス・チップ・メーカーのATIテクノロジーズを買収し、同社の技術の統合にも取り組んだ。一方、Intelは昨年、回路線幅65nmのクアッドコアXeonプロセッサ「Clovertown」(開発コード名)を投入し、サーバ向けプロセッサのクアッドコア化と65nm化でAMDに先行したと喧伝した。さらにIntelは、45nmプロセスの「Penryn」プロセッサのリリースを第4四半期に予定している。

 AMDのアレン氏は、BarcelonaはIntelからの挑戦に対する回答だとしている。「Intelのクアッドコア・プロセッサは、2個のデュアルコアXeonプロセッサを結合しただけだが、Barcelonaは1つのダイ上に4つのコアを搭載する設計になっている」(同氏)

 アレン氏はさらに、Barcelonaでは各コアの浮動小数点演算ユニットが既存製品の64ビットから128ビットにアップグレードされており、データ・フローのボトルネックを回避するために従来同様Direct Connectアーキテクチャとオンチップ・メモリ・コントローラを採用していると強調。この設計のおかげで、Barcelonaは従来と同じ消費電力量で、より高い性能を発揮できるという。

 「Barcelonaの登場により、Clovertownの非力さがおわかりいただけるはずだ。われわれが今後、よりクロック周波数の高いモデルを投入すればなおさらだろう。顧客は、回路線幅を基準にプロセッサを選ぶわけではない。彼らが重視するのは性能とベンチマーキングだ」(アレン氏)

 同氏はDirect Connectアーキテクチャについてもこう述べている。「Direct Connectアーキテクチャは、仮想化を行ううえで非常に有益だ。複数のOSとアプリケーションを稼働させ、オンチップ・メモリに保持できる以上の量のデータを利用できるようにするからだ」

 しかし、アナリストの1人は、こうしたBarcelonaの長所を認めつつも、仮想化対応サーバへのアップグレード需要の急増というチャンスをAMDは逃してしまったと指摘する。

 「多くの人が、Barcelonaの登場は6カ月以上遅いとみている」と語るのは、アメリカン・テクノロジー・リサーチのマネージング・ディレクター、ダグ・フリードマン氏だ。同氏はこう続ける。

 「Barcelonaには高い期待が寄せられていた。AMDは昨年末以降、サーバ向けプロセッサ市場でシェアが頭打ちになっているが、BarcelonaはIntelのデュアルダイ・クアッドコア・プロセッサの対抗製品として、AMDの起死回生の切り札になるという見方もあったほどだ。だが、 Barcelonaは結局、なかなかリリースされなかった。現段階のBarcelonaは、サンプル出荷数量、サーバへの採用状況、ラインアップという点で十分な勢いがないという印象を受ける」

 AMDは迅速にBarcelonaの増産を進め、より高速なバージョンを投入しなければならないと、フリードマン氏は話している。

(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

米国AMD
http://www.amd.com/

提供:Computerworld.jp