IBM、OpenOffice.orgプロジェクトに正式参加――Lotus製品のコードを提供へ

 米国IBMは9月10日、これまで留保していた「OpenOffice.org」プロジェクトへの参加を正式に表明、同オフィス・スイートに自社コードを提供すると発表した。同社では、国際標準化機構(ISO)がMicrosoftの文書フォーマット「Office Open XML(OOXML)」の標準化を否決したことが、OpenOffice.orgへの参加理由の1つだとしている。

 IBM Lotus部門のストラテジー担当ディレクター、ダグ・ハインツマン氏によると、同社は以前から、コラボレーション・スイート「Lotus 8」に含まれるアプリケーションの開発にOpenOffice.orgのコードを利用してきたが、今までは正式なメンバーではなかったという。IBMは今後、同プロジェクトにコードを提供し、LotusとOpenOffice.orgの統合を目に見える形で進めていく予定だ。

 ハインツマン氏は、ISOが最近になってOOXMLの技術標準化を否決したことが(関連記事)、IBMがOpenOffice.orgに参加する理由の1つだと認めている。

 OpenOffice.orgは、OOXMLと競合する「OpenDocument Format(ODF)」を採用しており、IBMもこの文書フォーマットを支持している。IBMは他のODF支持者らとともに、一般企業や政府機関におけるODFの採用を奨励し、そうした組織のITアーキテクチャではオープン・スタンダード技術のみを使用するべきだと主張してきた。

 ハインツマン氏は、ISOによるOOXMLの標準化否決とIBMのOpenOffice.org正式参加について、「確かに両者は関係している」としたうえで、「ODFに対応した公的なコード・ベースを今こそ確立するべきだと思う。そうすれば、これらの新しい価値を育てていくのに必要な人々の貢献を十分に得られるだろう」と語った。

 OpenOffice.orgを設立したのは米国Sun Microsystemsである。同社は「StarOffice」と呼ばれる、OpenOffice.orgの商用版を独自に提供している。IBMが OpenOffice.orgへの参加をためらってきたのも、IT市場でIBMと長年ライバル関係にあるSunが、同プロジェクトに対するコード提供者として主要なポジションを占めてきたからだ。

 知的財産を専門に扱う弁護士で、ODF支持者としても有名なアンドリュー・アプデグローブ氏は、IBMがSunとの競争上の利害衝突に目をつぶり、Microsoftの「Office」の代わりにOpenOffice.orgを普及させる活動に協力するようになった背景には、ISOの決断に加え、GoogleがStarOfficeに接近しているという事情もあると指摘。ISOがOpen XMLの標準化を拒絶したことにより、OpenOffice.orgがOfficeの真の代替となる可能性は、かつてないほど高まっているという。

 「(Open XMLの)後退と、無料の『Google Pack』ダウンロード製品にStarOffice 8を同梱するとしたGoogleの1カ月前の発表が、IBMの決断を促したことはほぼ間違いない。こうした一連の出来事によって、(ODFに関する)懸念や従来の問題を吹き飛ばす大きな見返りが得られるかもしれないという期待が生まれ、(中略)社会的な推進力がいっそう強くなっている。過去4年間にわたり、SunとIBMがOpenOffice.orgを支援するうえで協力できなかった理由が何であれ、年間売上げが150億ドルに達するオフィス市場の独占状態を打ち破る一世一代のチャンスが来ているのは確かなのだ」(アプデグローブ氏の「Standards Blog」より)

 Sunは、OpenOffice.orgへのIBMの正式参加を歓迎するとの声明を発表した。Sunによると、2000年のリリース以来、OpenOffice.orgのダウンロード数は1億回に上っているという。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp