Google Chinaがオープンソースにかける期待

Googleは、何としてもオープンソース業界の表玄関となりたがっているようだ。しかし、Google Chinaに関する限り、オープンソースは同社にとって、より一層重要なものと位置づけられている。

「Googleはなぜオープンソースを使うのか? 理由はいたって単純です。自分の運命は自分で決めなければならないからです。中国とて状況は変わりません」とGoogle Chinaの社長、Dr. Kai-Fu Leeは言う。8月24・25の両日、北京で開催された2006 Open Source China Conferenceの講演での話だ。

Leeによれば、Googleはオープンソースに大いに借りがある。オープンソースがなければ、開発にもう1億ドル余計にかかっていただろうという。「しかし、Googleがオープンソースを採用したのには、もっと重要な理由があるのです」

例えば、オープンソースはプロプライエタリなソフトウェア製品では得られない自由度をGoogleに与えてくれる。「我が社は世界中に多数のサーバーを配しており、常にソフトウェアの改訂が必要です。もしソフトウェアを他の会社から購入していたら、変更に数週間、場合によっては数年もかかるかもしれません」

オープンソースソフトウェアは、市場の要求に即応できる柔軟性をGoogleにもたらしている。Googleはソフトウェアの機能をいつでも改訂できるので、市場の変化に即座に対応することができる。

オープンソースは、デリケートなビジネス情報を扱う点でもGoogleによい効果をもたらしている。「ソフトウェアを他の会社から購入したとすると、支払い回数から我が社のサーバー数が外部に洩れる可能性があります。今のところ、この情報は公表していません」

Leeの講演は同会議で彼の相手役を務める中国工程院会員、Ni Guangnanの講演と相通ずるものがあった。Niもまた「自分の運命は自分で決める」との意見を表明した。Niによれば、中国は創造力に富む国になること、国家情報セキュリティを維持すること、さらにソフトウェアの不正コピー問題を解決すること、この3点を実現するために国家戦略の一環としてオープンソースを推進しているという。彼は中国のオープンソース業界が今後急成長すると予想する。

2年前に中国の検索エンジン市場での指導的地位を失って以来、Googleが必要としているのは、まさにこの点なのである。主たる競争相手のBaidu.comは飲み込みが速く、Googleとほとんど同じサービスを急速に開発・提供しつつある。Leeは、Baiduの物まねを「Googleへの最高の賛辞」と冷やかす。しかし、実際のところGoogleっぽいBaidu.comは、Googleが必ずしも得意でないマーケティングと関係構築術に長けており、中国市場でGoogleを簡単に凌駕する可能性がある。

中国の調査会社、Analysis Internationalによると、Google Chinaは、Baiduから王座を奪い返せないばかりか、今年、二位の座もYahoo Chinaに明け渡す可能性があるという。先月、Google ChinaはLeeがMicrosoftからGoogleに来て1年足らずで社長を辞めるとの噂を打ち消したが、この噂はGoogle Chinaの業績不振が中国でよく知られた事実であることを物語っている。

現在、Google Chinaは中国市場で勝つために新たな方策を必死で求めている。そして、以下に挙げる理由から、同社のオープンソース採用が適切な選択であることは間違いない。

第1に、オープンソースは中国におけるGoogleの力をより効果的に高める方向で作用する可能性がある。今年、Googleは製品研究開発センターを設立し、中国国内で100人のソフトウェア技術者を採用した。Leeによれば、これらの技術者は他の国々の技術者が何百人かかってもできなかった仕事をやり遂げたという。これを達成できたのは、「オープンソースのこれまでの成果を土台にしている」からだと彼は言う。

第2に、オープンソースはGoogleが中国政府との共通の基盤を拡大するのに役立つ可能性がある。中国のような国で成長するためには、政府との相互信頼を築くことがどうしても必要だ。Leeの指導のもと、Google Chinaはそのための方策をいろいろ試してきたが、かえって評判を落としただけで何の成果も上げていないように見える。オープンソースという同じ高速車線を走るGoogleは、今や中国政府からより多くの支援を受けることができるようになったのである。

第3に、オープンソースはGoogleがローカライズ活動を長期視点で推進することに資する可能性がある。Leeは、Google Chinaが地方のオープンソースコミュニティへの支援をさらに強化し、若いオープンソースプログラマの訓練にもっと投資すると約束している。

だが、中国においてオープンソースは始まったばかりだ。成熟したオープンソースコミュニティはまだ存在せず、現地の会社はオープンソースを主に新たなビジネスチャンスと見ている。協力関係を築くため、Googleは中国を懸命に説得しなければならない。早食いほど多く食い、そうでなければ困窮するというわけだ。

NewsForge.com 原文