ミュンヘン市、Linux移行をようやく開始──計画から1年遅れで

 ドイツのミュンヘン市は9月21日、デスクトップPCのLinux移行を開始したと発表した。同市がWindowsベースからLinuxベースのデスクトップPCへ移行する方針を表明してからすでに3年近くが経っている。

 ミュンヘン市のLinuxプロジェクト担当者、フロリアン・シースル氏は、「ここに至るまでに多少の紆余曲折はあったが、ようやく着実に前進し始めた」と語っている。

 9月19日以来、同市役所内の1万4,000台のPCのうち最初の100台が、MicrosoftのWindows OSとOfficeアプリケーションをベースとするものから、Linux OSとOpenOfficeをベースとするオープンソース環境のものに切り替えられた。「現段階では、まだWindowsとLinuxの両方の環境を使っている。だが、今後2年のうちに、Linux環境が拡大し、Windows環境が縮小していく見通しだ」とシースル氏は語った。

 ただし、同氏は、Linuxへの完全移行は「非現実的」としている。同市で使用しているいくつかのハードウェアとソフトウェアは、今後もWindowsを必要とし、一部の製品、特にデスクトップ・パブリッシング(DTP)分野のものは、今後もApple Computerのシステムを必要とする、とシースル氏は語っている。

 ミュンヘン市は今年末までに、200台のPCをオープンソース環境へ移行させる計画だ。シースル氏によると、それらの大多数は、比較的単純なオフィス・コミュニケーションに使用されているという。

 移行されるPCは、Linuxディストリビューション「Debian GNU/Linux 3.1」、ユーザー・インタフェース「KDE(K Desktop Environment)3.5」、アプリケーション・パッケージ「OpenOffice 2」を基盤としている。

 シースル氏が率いるLinuxチームは、移行作業を開始するにあたって、Microsoft製品とオープンソース製品間のフォーマット変換に役立つガイドラインを作成した。「OpenOfficeでは、問題なくMicrosoftのフォーマットを開いて閲覧することができる。単純な文書では処理上の問題はほとんどない。ただし一部のケースでフォーマットが崩れる可能性があるため、フォーマット変換上のトラブルを防ぐために、一部の文書は特別な方法で取り扱う必要がある。ガイドラインにはそのような事項が記載されている」(シースル氏)

 今後の大きな課題の1つに、複雑なプロセスを抱える部署での移行作業がある。シースル氏は、「専門的な処理を行っている大きな部署での移行は骨が折れるだろう。しかし、われわれはそれに取り組むための計画を立てており、全デスクトップ・システムの80%にLinuxを導入するという目標を2008年末までに達成するつもりだ」と語った。

 同市のLinux移行プロジェクトが遅れた主な要因は、ソフトウェア特許問題を巡る議論がなかなか決着しなかったこと、システム・コンフィギュレーションとサポート・サービスの提供契約を巡る入札企業との交渉が予想以上に長引いたことにある。このようにプロジェクト遂行が困難を極めたことから、シースル氏は、徹底的にテストを行うべく、試験運用期間を当初の計画よりもさらに1年延長することに決めたという。

 シースル氏は、ノルウェーのベルゲン市がLinux移行計画を2年延期したことに対するコメントについては避けた。ベルゲン市は今年9月に、WindowsとUNIXサーバをLinuxに入れ替える作業は、現在取り組んでいる電子自治体ポータルの構築を終えてから行うと決定した。

 なお、欧州の都市では、オーストラリアのウィーン市も大規模なLinux採用を決定している。

(ジョン・ブラウ/IDG News Service デュッセルドルフ支局)

提供:Computerworld.jp