Skype、管理機能を強化し「Skype」の企業利用拡大を目指す

 ルクセンブルグのSkypeは、企業におけるインターネット電話サービス利用の拡大を目指し、管理機能をサポートした企業向けの「Skype」ソフトウェアのベータ版を数週間以内に発表する見込みだ。

 同社で企業向け通信およびSkype担当バイスプレジデントを務めるマイケル・ジャクソン氏によれば、企業向けのSkypeでは、システム管理者が標準的なWindows管理ツールを使ってSkypeの各種設定を行うことが可能になるという。例えば、インターネットへの接続方法の選択や、ファイル転送機能の利用可否などを設定できるようになる。

 ジャクソン氏は9月25日、パリで開催された「IDC European IT Forum 2006」において、「Skypeの企業利用は広がっている。登録ユーザー1億1,300万人のうち、30%がビジネス・ユーザーだ」と語った。

 しかし以前、SkypeがP2P通信に利用している独自仕様プロトコルに、セキュリティ上の問題があるとささやかれたことがあった。「Skypeを使うことで、ネットワークを混乱に陥れることになるという悪評が立てられた」と、ジャクソン氏は話す。同氏によれば、コンシューマの利用を想定したSkypeはあらゆるネットワーク環境で動作するように設計されており、その通信の遮断が困難であることから、こうした悪評が生まれたのだという。

 米Intelで、従業員たちが勝手にSkypeをインストールしたとき、IntelのCIO(最高情報責任者)、ジョン・ジョンソン氏も、セキュリティに関する不安を抱いたという。同フォーラムにおいてジョンソン氏は、「Skypeに脆弱性が見つかり、それを利用してだれかが社内ネットワークに侵入する方法を思いついた場合でも、対策をとることが難しい。Skypeにセキュリティ・パッチを適用しようとしても、だれが、どこで使っているのかを把握するのが困難だったからだ」と語った。

 こうしたセキュリティ上の不安を払拭できるように、SkypeはIntelに協力してきた。その一環としてSkypeは、プロキシ・サーバ経由でSkype通信を行う方法を開発した。これによって、Skypeにセキュリティ上の問題が見つかった場合に、Skypeの通信を遮断することが可能になった。このためにIntelでは、従業員が使用しているSkypeをプロキシ接続対応版にアップグレードしなければならなかったが、ジョンソン氏にとっては問題ではなかった。「ネットワーク環境をスキャンして、何がインストールされているのかを調べることができるようになった」(同氏)という大きなメリットを得られたからだ。

 ジョンソン氏は、コンシューマ向けに設計されたSkypeは、インスタント・メッセンジャー(IM)との共通点が多いと語る。「もともとIMは、コンシューマ向けの技術としてスタートしたが、今では多くの企業で利用されている。Skypeが今後、企業で積極的に利用されるようになる可能性は否定できない」

 ちなみにジョンソン氏自身は、Skypeを使った経験はあるが、現在は利用していないという。同氏にとってSkypeは、コンピュータにインストールしておくべき標準ソフトウェアではないからだ。「私としては、常にコンピュータを新しい状態に保っておきたい。そのためには、ちょっとしたソフトウェアをアップデートし続ける手間はなるべく避けたいと考えている」(同氏)

(ピーター・セイヤー/IDG News Service パリ支局)

提供:Computerworld.jp