IBM、ペーストを使ったCPU冷却技術を開発

 米IBMは10月26日、英国ロンドンで開催された「BroadGroup Power and Cooling Summit」において、熱伝導性を持つペーストを高温のCPUとヒートシンクの間に流し込むことで、冷却効率を従来の2倍に高める冷却方法を開発したと発表した。

 同社の研究グループは、木の根や人間の血管の自然な分岐パターンにヒントを得て、大量のペーストをわずかなエネルギーで移動させることで、高温下で膨張するチップの損傷や破損を回避できることを発見した。

 IBMチューリッヒ研究所の先端サーマル・パッケージング研究グループのマネジャーを務めるブルーノ・ミシェル氏は、「この研究成果により、エンジニアはより強力なチップを設計し、ムーアの法則を維持してトランジスタ密度をさらに高めていくことができる」と述べている。

 CPUの高密度化が進む中、現在の消費電力は1平方cm当たり最大100ワットに上っており、発熱の問題が深刻化している。ファンでヒートシンク上に空気を送る現在の冷却技術は限界に近づきつつある。大規模サーバ・ファームでは多数のファンが必要となり、ITマネジャーはサーバ設備に加えてCPUの冷却にも多大な費用を投じなければならないのが現状だ。

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ペーストを使った冷却方法の概念図

 こうした状況を受け、多くのベンダーは、冷却システムを単なる技術的な要素ではなく、マーケティングの大きな武器と位置づけるようになっている。  IBMは8月に、一連のブレード・サーバとラック・サーバを発表した際、これらに採用された高速CPUとともに新しい冷却技術の宣伝に力を入れた。これは「Cool Blue」と呼ばれ、エンクロージャのドア内に液体を通すことでサーバの熱を冷やすというものだ。

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開発中の「直接ジェット噴射」冷却モジュール

 同様に、Dellの創業者マイケル・デル氏は、10月23日に開催されたコンファレンスで、「Dellの最新のデスクトップPCとサーバでは、省電力型プロセッサの採用によって消費電力が抑えられ、発熱が軽減される」と強調した。

 このような省電力プロセッサとしては、AMDのOpteron Rev.F、IntelのXeon 5100(開発コード名:Woodcrest)、および、開発中のクアッドコアXeon(開発コード名:Clovertown)、Sun MicrosystemsのUltraSPARC T1などがある。

 しかし、将来のCPUではさらに発熱量が増加することが予想されている。このため、IBMでは、空気の代わりに水を使ってチップを冷却する革新的なアプローチをテストしている。これは、5万の微細なノズルを使って、回路がぬれることなく水を循環させる仕組みを採用しており、「直接ジェット噴射(direct jet impingement)」手法と呼ばれる。この冷却システムは初期テストで、現在の冷却方式の約4〜6倍に当たる1平方cm当たり370ワットの電力を吸収することに成功している。

米IBM
http://www.ibm.com/

IBMチューリヒ研究所
http://www.zurich.ibm.com/

提供:Computerworld.jp