TechX Worldコンファレンス参加レポート: 話題の中心はLinuxの相互運用性

今週火曜ダラスで開催されたPenton Media社主催の TechX World コンファレンスには、 100人を超えるITマネージャやシステム管理者が参加した。 TechX Worldコンファレンスは、 まる一日をかけて開催されるセミナーで、 今回は今秋開催される4回シリーズのうちの3回目だ。 メインのテーマは「サーバルームの戦略」であり、 特にLinuxとWindowsの混在環境における相互運用性に重点が置かれていた。

コンファレンス当日の予定の大半は数々のセッションで占められていた。 1回のセッションは90分で、4つのトラックごとにそれぞれ3種類ずつ計12セッション が用意されていた。 トラックのテーマには、「オペレーティングシステムの相互運用性」、 「ディレクトリとセキュリティの統合」、 「データの相互運用性」、「仮想化」の4つがあった。 そのうちの最初の2つである 「オペレーティングシステムの相互運用性」と 「ディレクトリとセキュリティの統合」のトラックでは、 LinuxとWindowsの相互運用性についての話がほとんどであった。 4つめの「仮想化」トラックでも同様に LinuxとWindowsの相互運用性の話題が上った。 3つめの「データの相互運用性」のトラックだけは、 Microsoft社のSQL ServerとOracleとの統合に焦点が当てられており、 LinuxとWindowsの相互運用性の話題はまったく出てこなかった。

セミナーはすべて、実際的な使用事例を題材とした「ハウツー」的な問題に焦点が当てられていた。 例えば、Sambaでファイルやプリンタの共有を行なう際のアクセス制御に関する設定の問題や、 Linuxの認証機構とMicrosoft社のActive Directoryの統合に関する設定の問題などが 取り上げられていた。 また参加者たちも自らの同じような実際的な問題を質問や話題として取り上げていた。 参加者たちはLinuxオペレーティングシステムに対して懐疑的な態度を示すどころか、 Linuxの存在にはすでに慣れ親しんでいて、 今や関心の目は異種混在環境における実際的なLinuxの取り扱い方法に向けられていた。

Linuxに対する見通しと市場

さらに言えば、各々のセッションへ分かれる前に行なわれた朝一番のパネルディスカッションにおいて 司会をしていた Forrester Research社の Merv Adrian氏が参加者に対しいくつかの質問をして挙手を取ったところ、 参加者の約90%が「Windowsをメインとする仕事環境」であると挙手したものの、 「Linuxを使用している」参加者も80%近く存在した。

その後、司会のAdrian氏は事前の打ち合わせ通り、 シングルサインオンや仮想化の戦略についての質問を パネリストであるIBM社のMark Banda氏、 Centeris社のBarry Crist氏、 Microsoft社のErick Watson氏に対して投げ掛けた。 しかし参加者との質疑応答の時間になると再びLinuxが話題の中心となり、 「Linuxディストリビューションの選び方は?」や 「スタッフのLinuxのトレーニング方法は?」などの質問が出席者から出ていた。

パネリストたちは終始、質問に率直に答え、気さくな冗談を交わしていた。 「Linuxに対するMicrosoft社のスタンス」という話題が出て来たときでさえ、 そうであった。 参加者の一人が「Microsoft社はいつ、 Linuxディストリビューションを買収したり、 独自のLinuxディストリビューションを作ったりするのですか?」 と質問すると、 パネリストの一人であるMicrosoft社のWatson氏は笑い声を漏らした。 そしてWatson氏は「近いうちにはないですね」と答えた。 ただしMicrosoft社はLinux用のソフトウェアということに関して それほど妄信的に毛嫌いしているわけではないとも付け加えた。 というのもWatson氏によると、 Microsoft社はすでにSFU(Windows Services for Unix)を開発しているし、 また消費者向けのアプリケーションについてはMicrosoft社は常に 最終的にはビジネス上の現実主義的な実利の判断をしているからとのことだ。

この質問に対してはパネリストのIBM社のBanda氏も発言し、 IBM社は何年も前からこの質問に答えてきたと前置きした。 Banda氏によると、 IBM社は同社の顧客とのサポート契約へビジネス資源を集中させることができるように、 Linuxのディストリビューションビジネスには立ち入らないようにしているとのことだ。 というのもBanda氏の説明によると、 独自ディストリビューションを一度始めてしまうと 独自に行なう変更のすべてに対して 自らバグ修正や保守を行なう責任が生まれてしまうことになり、 それではプロプライエタリUnixの抱えていた問題へと自らを引き戻すようなものだ ということだ。

またBanda氏は最近Oracle社がLinuxディストリビューション市場へ参入する と決定したことについても触れ、 「今週Larry(Ellison氏)がそんな決断をしましたけれど、 Oracle社にとってマイナスになるでしょうね。 私に言わせると、どう考えてもビジネス上優れた決断ではありませんよ。 Red Hat社を困らせてやろうといった感情的な反発という動機だけで行なってしまった決断ですね」 と述べた。

その後、参加者がLinuxの将来について質問をした。 その質問に対してBanda氏は IBM社がデータセンタでのLinuxの使用に本気で取り組んでいることを繰り返し述べた上で、 しかしだからといってLinuxがデスクトップにおいても広く受け入れられるようになる わけではないだろうと付け加えた。 Banda氏が言うところによると デスクトップはサーバのマイグレーションとは事情がまったく異なり、一般的に顧客は 「デスクトップ環境を変更されそうになると途端に拒絶反応を示し出す」ものなのだという。

次にMicrosoft社のWatson氏は、 Microsoft社は現在のところLinuxのことについて、 ファイルサーバやDNSサーバといった それほど重要でない部分で役割を果たすことになるだろうが、 ビジネス上決定的に重要な分野へと進出することはないだろうとみなしていると述べた。 しかしこのLinuxに対するMicrosoft社の見方は、 Centeris社Quest社 (どちらもWindows用のLinuxサーバ管理ツールを開発している企業)の担当者など、 セッション間の休憩時間にビジネスパートナー展示場で 私が個人的に話すことができたベンダのほとんどが持っていた見方とは異なっていた。 彼らの顧客が今後どのような目的でLinuxを導入していくと思うかを私が尋ねると、 全員一致の答えが返ってきた。その答えは「データベース」だった。

誰が正しいかはさておき、 コンファレンスの参加者と話してみて明らかになったことは、 LinuxがサーバルームとIT予算の中ですでに認められた存在だということだ。 当て推量だが、このコンファレンスに参加した一日を通して もっとも繰り返しよく聞かれたフレーズは「Active Directory」だったと思う。 そのことから結論を導くのであれば、 コンファレンスの参加者たちはもはや Linuxに仕事をさせるためのハウツーに関心を寄せているわけではないということだ。 そうではなく関心の目はすでに、 一つの組織内においてLinuxとWindowsの両方を運用する場合における作業の合理化という 問題に向けられているということのようだ。

NewsForge.com 原文