Samba開発者がNovellとMicrosoftの提携を批判

 MicrosoftとNovellの提携に対して、オープンソース・ソフトウェア陣営から新たな批判の声が上がった。彼らはNovellがオープンソースの原則に背いているとして、契約を見直すよう迫っている。

 今回批判の声を上げたのは、LinuxサーバからWindowsクライアントにファイル/プリント・サービスを提供できるようにするためのオープンソース・プログラム「Samba」の開発者たちだ。基本的にSamba開発チームはNovellと協力関係にあり、SambaがNovellのSUSE Linuxと一緒に出荷されているため、このグループの発言には注目が集まっている。

 オープンソース・コミュニティの他のグループと同様、Sambaチームも知的所有権に関する部分の契約を問題視している。11月12日に出された声明では、この提携は軋轢を招くものであり、オープンソースの目標にも背くものと指摘している。営利的な立場なのか、非営利的な立場なのかによって、ソフトウェア開発者とユーザーに対する扱いが異なっているからだ。

 Sambaチームは、「Novellがこのような提携に踏み切ったのは、同社がフリーソフトウェア・コミュニティとの間で維持してきた関係を完全に無視したということを示している。われわれは、基本的に同社に製品を供給する立場にあり、フリーソフトウェア・コミュニティの目標と理想に反するような他の勢力のために利己的な契約を結ぶ権利はないということを彼らは認識するべきだ」と述べている。

 Sambaチームは、NovellがGPL(SUSE Linuxはこのライセンスに基づいて流通している)を侵害したと批判しているわけではないものの、特許に関する契約を取り消し、フリーソフトウェア・コミュニティの義務を認めるよう求めている。

 Novellは、この件について今すぐコメントすることはできないとしている。これまで同社は、提携により特許訴訟を起こされる危険がなくなるため、SUSE Linuxのユーザーと開発者にとって利益になると説明してきた。

 11月2日に発表されたこの提携では、MicrosoftとNovellがそれぞれのOSの相互運用性を向上させることで合意している。またMicrosoftは、SUSE Linuxを使っているユーザーに特許権を主張せず、SUSE Linuxにコードを提供した非営利の開発者に対しても特許権を行使しないことに同意した。

 オープンソース陣営が懸念を示しているのは、契約のこの部分だ。著名なLinux唱道者のブルース・ペレンス氏は、SUSE Linuxユーザーを訴えないという内容の契約をNovellと締結することで、Microsoftが他のLinuxディストリビューションを使っているユーザーを暗に脅していると指摘する。

 ペレンス氏は、「GPLとは、それを採用したソフトウェアのディストリビューターが一致団結してソフトウェアの特許と戦わなければならないということを明確に示すものだ。Novellは、Microsoftと提携することで、この統一された防衛体制を破壊し、フリーソフトウェア・コミュニティ全体の長期的な利害と引き換えに、ライバルに対する短期的な優位を得ようとしている」と語っている。

 オープンソース開発者を法律面から支援しているソフトウェア・フリーダム法律センターも、この提携を批判しており、とりわけMicrosoftがSUSE Linuxディベロッパーに対して特許権を主張しないと約束した点を問題視している。

 同センターの最高技術責任者ブラッドリー M.キューン氏は、11月9日に出されたオープンソース開発者向けの書簡で、「特許に関するこの合意は、自宅で開発し、自分で使うソフトウェアにのみ適用されるものであり、ソフトウェアを配布した場合、配布先にまで拡大されるわけではない」と書いている。

 キューン氏によると、開発者が特許に関する免責を受けるには、自分が行った開発作業に対する報酬を受け取らないようにしなければならない。また、Microsoftには条項を変える権利があるため、契約の内容をそのまま信じることもできないという。

 キューン氏は、「この“空約束”は、安全性に対する誤った意識を生み出す可能性があり、無益どころか有害ですらある。Microsoftは、特許に関するこの契約を利用して、孤立し、報酬を受け取らず、重要性も低いフリーソフトウェア開発者だけが良いという見方を示そうとしている」と述べている。

(ジェームズ・ニコライ/IDG News Service パリ支局)

提供:Computerworld.jp