Sysadmin of the Year受賞はミス・アメリカになるのとはわけが違う

Sysadmin of the Yearと聞けば、「さあ皆さん、栄えある今年最高のシステム管理者のご登場です」という低く甘い大げさな呼び声と共に赤い絨毯の敷かれたステージに現れ、腕一杯にバラの花束を抱えて嬉し涙をこぼす受賞者の姿を想像するかもしれないが、それはまったく別のコンテストである。大きな違いの1つは水着審査がなかったことだが、最優秀賞を受賞したMichael Beck氏は、仮に水着審査があったら「オレンジと黒のサーフパンツ」を穿いて臨んだだろう、と話している。

ミス・アメリカの出場者はたいてい幼い頃から美人コンテストへの参加を始めているが、Sysadmin of the Yearの候補者たちは、こうしたコンテスト出場の予備段階を経験していないようだ。その代わり、システム管理者である彼らは何年間も、ファンの音が鳴り響くサーバルームでの作業と同僚のデスクトップ機の諸問題への対処に明け暮れてきた。同僚たちが彼らの奮闘を大いに讃えた結果として、総勢4,820名ものシステム管理者がこの比類なき名誉の賞にノミネートされた。ノミネートされたシステム管理者のうち、約2,500名が「この通り、あなたはノミネートされました」という通知に対する返信を行うことで、応募の手続きを完了させた。

このノミネート通知に返信したシステム管理者たちには、”ThinkGeek”のTシャツが贈られた (ちなみに、NewsForgeおよびLinux.comのオーナーもThinkGeekのオーナーもOSTGであり、同じくOSTGの所有するSourceForge.netが今回のコンテストの共同スポンサーになっていた)。

もっとすばらしい点は、ノミネートされたシステム管理者全員が、上司や部下も含めて職場の仲間から働きぶりを認めてもらっていることを認識できたことだ。

システム管理者は、ないがしろにされることがよくある。スポンサーのSplunkでこのコンテストを企画したPat McGovern氏は「何か問題が起こらない限り、システム管理者には誰も声をかけない」と話している。また彼は、Sysadmin of the Yearというイベントを用意したことで会社は大いに賞賛してくれた、とも語っている。その大半はシステム管理者たちからの賞賛ではないかと思われるが、だからといってこのアイデアのすばらしさは少しも変わらない。

Sysadmin of the Yearを受賞したり、その下位の賞を取ったりすることが給与アップにつながる、という確証はまったくない。最優秀賞者のBeck氏は、給与に対するこの賞の潜在的な効果は「不明」だと述べている。準優秀賞を取ったDarren Barry氏は米空軍の技術軍曹で、彼の俸給は階級と勤務時間数に基づいて決まるため、今回の入賞が昇進につながらない限り俸給額が増えることはない。ほかの入賞者もおそらく同様だろうが、たとえすぐに報酬が増えなくても、少しは自慢に思ってもよい(また、そうするべき)だろう。

人気コンテストに非ず

最も推薦が多かった候補者はSomething Awfulのコードを書いたRadium氏(本名はKen Stumpf)で、McGovern氏によると彼には876票の推薦があったという。推薦者は彼の同僚ではなくサイトの読者であって、審査員が求めていたような人々ではなかった。さらに、McGovern氏は次のように語っている。「推薦状の大半はほんの1行か2行のもので、数時間のうちにあまりに急激に増えたので最初はボットの仕業かと思ったよ(どうやらSomething Awfulが「Radiumを推薦しよう」というメッセージを掲載したためのようだ)」。

むしろ審査員の関心を惹いたのは、たとえば次のような候補者の姿だ。

この20代半ばの若者は、日常業務の担当者としてだけでなくITマネージャも任されていて、その主な役割は私たちの毛糸販売店に新しいPOSシステムとコンピュータをインストールすることでした。この店で働く男性は彼も入れて2人だけしかいないというのに、彼はハードウェアからソフトウェアまで(恐ろしい量のデータ入力も含めて)この作業のすべてに独りで取り組んでくれました。それもシステムに関わるそれぞれの判断は、スタッフや技術に疎い私たちのことを考えて、十分に検討されているのです。

なお、この推薦状には「毛糸店、それも10数名の女性のなかで技術担当として働いてくれる男性求む。55歳以上の方であれば「Sysadmin of the Year」の入賞者でなくても追加手当の支給を検討」とも記されていた。

とてもいい話だ。

だが、優秀賞に輝いたSean Thomas氏の推薦状から抜粋した以下の2つの段落は、もっと感動的な内容になっている。

2004年秋に私たちのオフィスが近隣の火事で焼失しました。設備やインフラはすべてそこのサーバルームに据え付けていたので、無事に建物の外へ持ち出すことはできなかったのです。

私たちが建物から避難するまでには4分足らずの時間しかありませんでした。皆、自分のデスクトップ機をわしづかみにして必死で出口に向かったのです。システム管理者は最後までオフィスに残っていました。ありがたいことに、彼はサーバルームから出てくるときにRAIDバックアップサーバを救い出してきたのです。彼はこのバックアップサーバを使って、私たちの環境を復元し、稼働させてくれました。

この推薦状をよく見ると、優秀賞を勝ち取ったThomas氏を推薦したのが 彼の妻でTrue Prism Technologiesで一緒に働くCrystal Thomasさんであることに気付くかもしれない。ただしThomas氏本人は、彼女は彼自身には内緒で推薦することを決めて他の同僚の協力を得たのだ、と明言している。

賞を狙うシステム管理者に向けて何かアドバイスをくださいと頼むと、Thomas氏は「とにかくバックアップをしっかりすることです。そして最悪の事態に備えておくことでしょう」と答えてくれた。

サーバルームから生まれる物語

映画『 The Naked City (邦題:裸の町)』では800万人もの出演者の姿が描き出されていたが、おそらくはシステム管理者の物語も少なくともそれと同じくらいの数は存在するはずだ。Sysadmin of the Yearの賞は、我々に彼らのうちの数人のことを知る機会を与えてくれる。ミス・アメリカのコンテストほど華やかではないかもしれないが、候補者は少なくとも同じくらいの拍手喝采を浴びるに値する人々だ。たとえ、彼らの熱心な働きの影響を直接的に受けながら過ごしている人々からしか賞賛の声が届かないとしてもである。

来年の参加者は、おそらく今年の4,800名余りをさらに上回るだろう。世間には賞賛に値するシステム管理者がそれ以上に多く存在することは確かだ。もしかするとあなたもその1人かもしれない。もしそうならLeague of Professional System Administrators(LOPSA、専門的にシステム管理に従事する人々のための連盟組織)への参加を検討してみてはいかがだろうか。

また職場の同僚(および多くのLOPSAメンバー)から来年のSysadmin of the Yearに推薦してもらうのを待つにしても、システム管理者感謝の日(System Administrator Appreciation Day)のことを忘れてはいけない。まだ何ヶ月も先(7月の最終金曜日)のことだが、前もってカレンダーに印を付けて同僚たちにそれとなく知らせておく価値はきっとあるはずだ。

多分そうした同僚の何人かが気を利かしてくれて、来年はシステム管理者感謝の日にランチに連れて行ってくれるだけでなく、Sysadmin of the Yearへの推薦もしてくれることだろう。

希望だけならいつだって持てる、そうでしょう?

NewsForge.com 原文