値下げ圧力に直面するVMwareの仮想化製品

 2006年には、多くの企業のIT部門が仮想化の効果に着目し、サーバ統合を急ピッチで進めたことを追い風に、仮想化最大手のVMwareのソフトウェアが市場で躍進した。しかし、2007年に入り、仮想化によってサーバとストレージの無秩序な増加を抑制し、データセンターの電力コストを低減することを目指すCIOが増える中で、VMwareの製品は値下げ圧力にさらされるようになってきた。

 その背景にある要因の1つは、同社のライバルのXenSourceとVirtual Iron Software 、同社製品より安価なオープンソース・ベースの新製品をリリースしたことにある。

 また、サゲザ・グループの社長、クレイ・ライダー氏によると、IBMの「Power 5」や現在開発中の「Power 6」といった新しいプロセッサや新しいOSでは、仮想化機能の搭載により、仮想化ソフトウェアを追加利用する必要性が少なくなっており、それも要因の1つであるという。

 例えば、Sun Microsystemsは「Solaris 10」にContainerと呼ばれる仮想化機能を搭載しており、Microsoftも2007年第1四半期に「Windows Virtual Server」のベータ版をリリースし、年内に同製品を出荷する予定だ。

 これはユーザーにとって朗報と言える。仮想化機能がハードウェアやOSの一部になれば、ソフトウェア・ベンダーは新しいソフトウェアのテストの自動化や、セキュリティ・パッチ管理など、有用な付加機能をサポートする必要が出てくるからだ。

 Virtual Ironが昨年12月にリリースした仮想化プラットフォーム製品のVersion 3.1は、ライセンス価格がソケット当たり499ドルで、VMwareの同等製品の2,875ドルを大きく下回る。XenSourceも1,000ドルを切る新しい仮想化製品を投入している。

 Virtual IronとXenSourceは、いずれもオープンソースの仮想化ハイパーバイザ「Xen」をベースにした製品を販売しているが、VMware製品はオープンソース・ベースではない。

 一方、ミドルウェア・ベンダーのBEAシステムズは、仮想化によるコスト削減を独自のアプローチでサポートする製品を準備している。BEAは2007年前半に「WebLogic Server Virtual Edition(WLS-VE)」をリリースする計画だ。

 同製品は、JavaアプリケーションがOSを必要とすることなく、ハイパーバイザ上で直接動作できるようにするBEA独自のJava仮想マシン(VM)「Liquid VM」を、同社のJavaアプリケーション・サーバに搭載したものだ。

 WLS-VEを使えば、必要なコンピュータ処理能力が大幅に軽減されるため、アプリケーション当たりのハードウェア・コストが削減できると、BEA SystemsのJavaランタイム製品グループ担当副社長兼ゼネラル・マネジャー、ガイ・チャーチワード氏は説明している。

 アナリストの多くが、2007年に仮想化の取り組みを計画しているCIOに、戦術的に考えるだけでなく、戦略的に考えることが必要だとアドバイスする。

 ライダー氏もその1人だ。同氏は、「仮想化を真に活用するには、特定のマシンの運用だけでなく、エンドユーザーのアクセスも考慮に入れて導入に取り組まなければならない。それは戦略的アプローチによってのみ可能になる」と指摘する。

 つまり、仮想化のプロジェクトに取り組む際には、サーバだけでなく、ストレージやネットワーキング、新規ソフトウェア導入といった要素も考慮する必要があるというわけだ。

 米国国防総省の防衛契約管理局(DCMA:Defense Contract Management Agency)のCIO、マイク・ウィリアムズ氏は、2006年に仮想化プロジェクトを実施した際に、戦略的に考えることの重要性を思い知ったという。

 ウィリアムズ氏はVMware製品の導入により、同局のサーバの台数を560台から160台に、データセンターの数を17から3つに減らした。だが、その結果、ネットワーク・トラフィックが3つのデータセンターに集中し、WANに大きな負担がかかるようになってしまった。同氏は、まずWANを最適化すべきだったと自責の念を持って振り返る。

(ロバート・マクミラン&チャイナ・マーテンス/IDG News Service サンフランシスコ支局)

提供:Computerworld.jp