テスト環境でも威力を発揮するサーバ仮想化技術――テスト時間が6分の1になった例

 サーバ仮想化技術の導入によるメリットには、ハードウェアの有効活用、コストの削減、業務の効率化などがある。すでに多くの企業がサーバ仮想化に注目し、積極的に導入を検討しているようだ。

 そのような状況の中、新たな分野で仮想化サーバを活用する動きが広まりつつある。それは、テスト環境への適用だ。

 米国EMCの子会社で仮想化ソフトウェア最大手のヴイエムウェアや、サージェントといったサーバ仮想化技術を提供するベンダーは、今後仮想化技術の活用が見込まれる分野の1つにソフトウェア・テストを挙げる。

 実際、ヴイエムウェアは昨年6月に、テスト環境に特化した仮想化技術を提供するアキンビ・システムズを買収した。アキンビ・システムズは、複数の仮想サーバにまたがって動作するアプリケーションの開発/テスト環境を提供するソフトウェア・ベンダーで、昨年10月には「Virtual QA/Test Lab Management System(VQMS)Version 5」をリリースしている。

 サージェントの製品戦略担当副社長、エリック・ジョソウィッツ氏によると、顧客企業の半数が、マイクロソフト製品導入前のテストやService Pack適用前の回帰テストにVQMSを使っている。残る半数の企業も、基幹系アプリケーションをテストする際にVQMSを利用しているという。

 「VQMSを利用すれば、テスト・インフラを統合し、複雑なテスト構成のオンデマンド・セットアップや解除を自動化できる。これにより、テスト・プロセスに要する時間を大幅に短縮することが可能だ」(ジョソウィッツ氏)

 同氏は、現在のテスト・プロセスの課題として、手作業が多い点を挙げる。

 「例えば、ERPパッケージの『SAP R/3』をテストしたい場合は、複数のサーバをテスト用に初期化し、R/3、データベース、データをロードしてからサーバに接続しなければならない。これらの作業は2週間を要することもある。しかし、VQMSを利用して一度イメージを作成してしまえば、テスト構成は数分で展開できる」(ジョソウィッツ氏)

 また同氏は、マイクロソフトが提供するパッチをテストするときにも、VQMSが威力を発揮すると語る。

 同氏によると、同社の顧客企業であるロッキード・マーティンでは、約300台のクライアントPCにパッチを配布するテストに、従来は6日間かかっていた。しかし、VQMSを利用してテスト環境をサーバに統合し、一度に50台のPCを仮想的に運用する環境を構築してテストを行ったところ、300台を対象としたテストは5時間ほどで終了したという。

 「今まで6日間かかっていたパッチのテスト/配布作業が、たった1日で終わってしまった」(ジョソウィッツ氏)

 なお、ロッキードでは、パッチ・テストの管理にはヒューレット・パッカード(HP)の「Mercury Quality Center」を、パッチ配布にはマイクロソフトの「Systems Management Server(SMS)」を利用している。SMSは、ネットワーク上に点在するPCを管理し、パッチを配布したり脆弱性を監視したりできるサーバだ。

 サーバ仮想化技術をテスト環境に導入するメリットは、実運用環境に影響を与えることなくソフトウェアの導入展開をスピードアップできることだ。今後、サーバ仮想化技術はテスト環境においても、絶大な威力を発揮することになるだろう。

(ジョン・ディックス/Network World 米国版)

米国サージェント
http://www.surgient.com/

米国ヴイエムウェア
http://www.vmware.com/

提供:Computerworld.jp