Red Hat Enterprise Linux 5のリリースを機に再燃する「汎用OS不要論」――Linuxディストリビューションの肥大化に批判の声

 米国Red Hatは、Linuxディストリビューションの新版「Red Hat Enterprise Linux 5」(RHEL 5)を3月14日にリリースする。だが、ソフトウェア・ベンダーの間では、もはや機能満載のOSなど必要ないのではないかという議論が再燃している。

 OSやアプリケーション・サーバなどの各種スタックをパッケージングした、いわゆる“ソフトウェア・アプライアンス”を提供しているベンダー各社は、画一的な OSの時代は終焉に向かうと予測している。将来はソフトウェアを最低限必要なOSコードで走らせるモジュラー・システムが主流になる、というのが彼らの見方だ。

 これは、別の言い方をすれば、ソフトウェア・アプライアンスが汎用OSに取って代わるということだ。しかし、こうした意見がある一方で、従来どおり汎用OSが必要だと主張する慎重派もいる。

 最近では、Microsoftの「Windows Vista」を巡って同じような議論が巻き起こった。昨年8月には、Gartnerのアナリスト3名が「複雑化・肥大化の一途をたどるWindowsにこれ以上の発展は見込めない」とするリポートを発表した。Gartnerでは、Windowsは近い将来モジュラー・コンポーネントに分割されると予想する。

 「RHEL 5にも同じことが言える」と語るのは、ソフトウェア・アプライアンスのプラットフォーム・ベンダー、rPathのCEO(最高経営責任者)兼共同創立者であるビリー・マーシャル氏だ。同氏は同OSについて、「新機能が追加されたことで肥大化し、Windowsと同じくらい使いにくくなった」と手厳しい。

 OSベンダーは、欲しがる企業があるかもしれないという配慮から、ありとあらゆる機能をOSに詰め込もうとする。MicrosoftとRed HatがOSのリリース時期を延期せざるをえなかったのは、このことが理由の1つになっている。

 当然ながら、巨大化したOSは相応のディスク・スペースを必要とする。「OSによっては、インストールの条件として1.82GBものディスク容量が必要だ」とマーシャル氏。これに対し、1つのアプリケーションを走らせるためのコードしか持たないソフトウェア・アプライアンスなら、わずか300MBで済むという。

 一方、調査会社451 Groupのアナリスト、ジェイ・ライマン氏は、ソフトウェア・アプライアンスは比較的小規模な企業には受け入れられるとしながらも、汎用OSはなくならないと主張する。

 「汎用OSがなくても、エンタープライズ・インフラストラクチャを運用することは可能だ。とはいえ、多くの企業ではそうしたOSがインフラストラクチャの中核を占めており、専任の管理スタッフも置いている」(ライマン氏)

 IBMのLinux/オープンソース戦略担当ディレクター、アダム・ジョランズ氏も、ライマン氏と同様、汎用OSは徐々に消滅するという意見には懐疑的な見方を示す。IT管理者は手持ちのハードウェアをできるだけ有効利用したがっており、OSに付属している機能やアプリケーションを隔離するのはそれに反する、というのがその理由だ。

 「大多数のユーザーは、OSの機能や付属アプリケーションを使ってたくさんのことをしたいと思っている。そういったニーズを満たすには汎用OSが不可欠なのだ」(同氏)

(ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局)

米国Red Hat
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提供:Computerworld.jp