特許改革法案が米国下院で可決――大手ITベンダーや業界団体は歓迎の意

 米国下院は9月7日、米国の特許制度を全面改訂する特許改革法案(Patent Reform Act of 2007)を賛成225票、反対175票で可決した。同法案については、多くの民主党員をはじめ、MicrosoftやIBMなどの大手ITベンダーが支持を表明する一方、多くの共和党員、小規模発明家、一部の労働組合などが反対していた。

 特許改革法案が現行法と異なる点の1つは、特許侵害訴訟において裁判所が賠償額算定方法を変更できるようになることだ。製品の一部が特許を侵害している場合、裁判所はその製品全体の価値を判断して賠償額を決定するというのが今のやり方だが、それに対し同法案では、裁判所は侵害部分の価値だけに基づいて賠償額を決定することが可能になる。ただし、このようにして決定することが義務づけられるわけではない。

 また、米国特許商標庁(USPTO)によって特許が付与されてから1年以内であれば、特許に異議を申し立てられるというのも、同法案が現行法と異なる点だ。

 同法案ではさらに、米国独特の「先発明主義」を、ほかの国々で採用されている「先願主義」に転換することも規定されている。

 米国行政管理予算局(OMB)は9月9日、下院での可決を受けて声明を発表し、特許改革法案への反対を表明した。「賠償額算定方法の変更が可能になれば、特許侵害訴訟の複雑化とリスクの増大により、技術革新のインセンティブが低下するだろう」とOMBは声明で述べている。OMBによる反対は、ジョージ・ブッシュ大統領が同法案に拒否権を行使する可能性を示唆している。

 大手ITベンダーは5年近く前から特許改革を訴えてきた。SIIA(米国ソフトウェア情報産業協会)、BSA(ビジネス ソフトウェア アライアンス)、CompTIA(コンピュータ技術産業協会)といった業界団体も、下院の法案可決に歓迎の意を表明している。

 多くの民主党員と一部の共和党員も特許改革法案を支持している。現行法の下では、特許所有者があまりにも簡単に訴訟を起こし、莫大な賠償金を取得できてしまうと、法案支持者は主張する。

 同法案を提出したハワード・バーマン下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、「米国の特許制度は崩壊に瀕している」としたうえで、「何も手を打たないことは、力強い経済の実現を目指す議会にとって得策ではない」と訴えてきた。

 これに対して反対派は、特許改革法案は小規模発明家を犠牲にして大手IT企業を優遇していると主張してきた。「この法案は、強い力を持つ少数者の集団を利するものだ」と、ダナ・ローラバッカー下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は述べている。

 大手ITベンダーが同法案を支持するのは、特許侵害の賠償金額が高すぎることが背景にある。マーシー・カプター下院議員(オハイオ州選出、民主党)は、法案を支持する大手ITベンダー4社は1993~2005年の間に、特許侵害訴訟で総額35億ドルの和解金を支払ったと指摘。この間の4社の売上高は1兆 4,000億ドルだったという。

 「ITベンダーは従来から、米国の特許保護を弱めるよう議会と最高裁に訴えてきた。彼らの目的は、明らかに不公正なビジネス手法を改めると同時に、特許侵害訴訟のコストを減らすことにある」(カプター氏)

(グラント・グロス/IDG News Service ワシントン支局)

提供:Computerworld.jp