IBM、クラウド・コンピューティングの導入支援構想を発表――Googleとの大規模Web分散コンピューティングの取り組みを企業向けに展開

 米国IBMは11月15日、企業のデータセンターを対象に、Webアプリケーションの大規模分散運用の新たなモデル「クラウド・コンピューティング」の導入を支援する「Blue Cloud」構想を発表した。

 Blue CloudについてIBMは、「ローカル・マシンやリモート・サーバ・ファームではなく、グローバルにアクセス可能な分散されたリソースの集合体を利用するコンピューティング」と説明している。

 先月、IBMはGoogleと共同で、大学に講座を提供し、大規模分散コンピューティング・システム上でのソフトウェア開発を支援することを明らかにした。Blue Cloudは、この取り組みを企業向けに展開するものとなる。なお、両社は大学に対して3つのデータセンターを開放したが、企業がBlue Cloud製品を利用する場合は自社サーバを用意することになる。

 Blue Cloudは、「Blue Gene」によるスーパー・コンピューティング、チェスの世界チャンピオンのガルリ・カスパロフ氏に勝利したコンピュータ「Deep Blue」、グリッド・コンピューティングといった、IBMの数十年にわたる大規模コンピューティングの経験に基づいているという。

 IBMのハイパフォーマンス・オンデマンド・ソリューション担当CTO(最高技術責任者)、デニス・クワン氏は、クラウド・コンピューティングは、膨大な数のユーザーにスケールアウトで対応するWeb層と、グリッド技術などを利用するバックエンドのデータ処理層の両方をサポートするとしている。

 最初のBlue Cloud製品の提供は、2008年春に予定されている。価格は未定だが、その1つは、CPUにPOWERやx86を採用する「IBM BladeCenter」で動作し、ワークロードの変動に応じたリソースのプロビジョニングや割り当てを容易にするという。また、同社のメインフレーム「System z」をサポートする製品の提供も予定されている。

 Blue Cloudの中核要素は、XenやPowerVMで仮想化されたLinux OSと、並列ワークロード・スケジューリング技術「Hadoop」で構成され、運用管理には「Tivoli」が利用される。クワン氏によれば、データセンターのスペースと電力の不足が問題視されるなか、Blue Cloudは、膨大な台数のサーバ・マシンを最も効率的に管理できるようにすることを目指しているという。

 また、同社の開発/製造担当シニア・バイスプレジデント、ロッド・アドキンス氏は、「Blue Cloudは、ユーザー企業が自社でWeb 2.0アプリケーションのプロトタイピングやテストのためのクラウド・コンピューティング環境を迅速に構築するのに役立つ」とし、「このアプローチによって、ITマネジャーは、スケールアウト型のインフラの管理にかかわる複雑さとコストを大幅に軽減できるようになるだろう」と述べている。

 なお、IBMによれば、ベトナム政府はIBMの協力の下に、IBMアルマデン研究センターのクラウド・インフラを通じて、科学技術リソースを大学と研究機関に提供するクラウド・コンピューティングのパイロット・プロジェクトを進めているという。

(ジョン・ブロドキン/Network World オンライン米国版)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp