ストレージの電力効率を改善する「5つの実践」

データセンター管理者は、サーバの電力消費量については重要性を認識しているが、ストレージの電力消費量に関しては意外にも注目していない。特にSAN環境を統合することで得られる省電力化のメリットは、“データセンターのグリーン化”を推進するうえでもキー・ポイントになる。そこで本稿では、ストレージの電力消費量の現状について述べたのち、その利用効率の改善を図るうえでやるべき「5つの実践」を紹介する。

Dan Crain
Network World米国版

 データセンターの管理者なら、電力利用効率の向上が重要であることは理解しているはずだ。特に昨今のデータセンターでは、IT機器の高密度化に加えてそれらの統合が進んだ結果、わずかなスペースに多くのIT機器が密集状態で設置されている。こうした環境下では、電力利用の効率改善が危急のテーマとなる。

 ストレージおよびサーバ環境の統合を実践している企業は多いが、SAN(Storage Area Networks)環境を統合すれば、さらなる省電力化が可能なことは意外にも知られていない。実際、電力会社との契約電力量を限界まで利用、あるいはその近くまで利用しているデータセンターにとっては、SAN環境の統合と電力効率にすぐれたストレージの採用は必要不可欠な措置と言える。

 ほとんどのITマネジャーは、サーバの電力消費量については重要性を十分認識している。しかし、彼らが見落としがちなのが、ストレージの電力消費量である。いまや爆発的な勢いでデジタル・データは増え続けており、それを保存するためのストレージも企業内で増大の一途をたどっている。米国の調査会社IDCによれば、2006年単年で生成されたデジタル・データ量は1,610億GBにも達するという。

 また、米国の調査会社Gartnerの調査結果によると、データセンター内に設置された全IT機器の電力消費量のうち、40%をサーバが占め、次いでストレージが37%を占めているという。さらに、SANデバイスを含むストレージ関連製品の消費電力が現在1kW以上に達している点を考慮すると、ストレージおよびSAN環境のエネルギー利用効率の改善は、データセンター全体の消費電力(および電力コスト)を削減するために、もはや避けて通ることはできないだろう。

「単体で見るのではなく、全体で見よ」

 では、ストレージのエネルギー利用効率を改善するには、具体的にどうすればよいのか。それを説明する前に、まずは自動車と燃料の関係を例にとって、エネルギーの利用効率について解説する。

 電気自動車/ハイブリッド自動車/コンパクト自動車が、大型自動車や輸送車よりも燃料効率が高いことは明らかである。しかしながら、例えば1度に大勢の人間を運ぶことができるバスの場合、1人当たりの消費燃料は少なくて済む。つまり、「単体で見るのではなく、全体で見よ」というわけだ。この考え方は、現在のデータセンターにおいても、複数のデバイスを大きな共有型リソースに統合するという手法で実践されている。

 これはSAN環境にも当てはまり、個別に構築されたSAN環境を1つの大きな共有リソースとして統合することで、各SAN環境の配下にある個々のストレージの利用効率を改善することができる。ストレージの利用効率が改善されれば、運用コストの削減やむだな電力消費の抑制につながる。このことは、データセンターにおける電力消費量という観点からも非常に重要なポイントだ。

 以下では、先に挙げた自動車の燃料効率の例を参考にしながら、データセンターでストレージの電力効率を向上するための「5つの実践」を紹介する。

1. SAN環境の統合を図る

 バスは自動車よりも多くの燃料を消費するが、1人当たりの乗客にかかる消費燃料は一般的な自動車よりも低い。この考え方に基づき、SAN環境の統合をこれから行うならば、コスト効果の高い、スケーラブルなSANダイレクタの導入を検討するとよいだろう。これに対してSANスイッチを個別に追加していく方法は、設定によってかえって電力消費量が増加する可能性がある。

2. 省電力化が図られた最新ストレージを利用する

 ハイブリッド自動車は、ガソリンやディーゼルのような従来の燃料で走る自動車よりもクリーンである。IT機器においても、省電力が考慮された最新のサーバ/ストレージ/スイッチを導入して消費電力とコストを抑えることが重要だ。

3. 休眠中のストレージの電源はオフにする

 使われていないストレージの電源は必ずオフにすることが重要だ。例で示したバスに当てはめて考えてみると、使われていないストレージの電源をオンにしておくことは、車庫に入っているバスのエンジンをアイドリングさせているようなもので、エネルギーの効率的な利用に結びつかない。しかし、幸運にも現在の新型ストレージ製品の中には、休眠中のハードディスク・ドライブのスピンドル回転を止め、消費電力を低減する技術を搭載しているものがある。

4. 物理インフラ全体の冷却効率を考慮する

 放熱量の高い機器、あるいはさらなる冷却を必要とする機器は、電力消費量だけでなく、予算にも著しく影響を及ぼす。例えば、上り坂を走り続けるバスのように、空調システムを酷使し続けると電力消費量および運用コストは上昇する一方だ。つまり、機器レベルだけでなく、物理インフラ全体の電力利用効率を高めて空調システムの運用コストを抑制しなければならない。データセンター内のホット・アイル/コールド・アイルへの設置を考慮して設計されたストレージならば、物理インフラ全体における電力利用効率の向上に貢献するだろう。逆にホット・アイル/コールド・アイルを考慮しないで設計されたストレージは、空調システムをむだに稼働させることにつながりかねない。

5. 「Green Grid」の参加ベンダーにコンタクトする

 Green Gridは、データセンターおよびビジネス・コンピューティングにおけるエネルギーの利用効率向上を目的に発足した業界団体だ。世界を代表するITベンダーが軒並み参加しており、標準規格/測定法/プロセス/技術開発を通して、データセンターの総エネルギー消費量の削減を目指している。Green Gridの参加ベンダーにコンタクトし、支援を得ることができれば、ストレージのみならず、データセンター全体の省電力化をより効果的に推進することができるだろう。

 これら5つの実践で、個々のビジネス条件に見合った省電力化をデータセンターに施すことができるはずだ。データセンターのグリーン化は、単に消費電力の削減や企業の基本方針に従うだけの取り組みではない。賢明な経営戦略であり、これからは競合他社との競争優位性に結実していくことだろう。

(Computerworld.jp)

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