GNOME Mobile and Embeddedイニシアチブが本格始動

 本日(4/19)、GNOME Foundationはカリフォルニア州サンタクララで開催中のEmbedded Linux ConferenceでGNOME Mobile and Embedded(GMAE)イニシアチブに関する発表を予定している。このイニシアチブの狙いは、組み込みおよびモバイルの開発プラットフォームとしてのGNOMEの利用を支援することにある。創設には、ACCESS、Canonical、Intel、Debian、Nokia、Red Hat、Fluendo、Linux Foundation、Maemoといったオープンソースの組織や営利企業が携わっている。

 GMAEイニシアチブは昨年から発展を続けてきた、とGNOME Foundationの理事Jeff Waugh氏は語る。昨年7月のGUADECカンファレンスでは、GNOMEの参加者が集まって「GNOMEのモバイルおよび組み込みテクノロジに対するもっと形式化されたコミュニティの取り組み方法」について議論したという。

 最初の会合以降の活動について、Waugh氏は次のように話す。「すばらしいチームの結成、GMAEプラットフォームの定義、出荷用デバイスに関する成功からの学習、まとまったコミュニティとしての実力の証明がなされた。メンバーは協力してGNOMEの主要なパフォーマンス問題に取り組み、モバイルおよび組み込み機能向けの多数のベンダパッチをメインのGNOMEツリーに提供した」

 GMAEプラットフォームには、平均的なLinuxデスクトップで使われるGNOMEテクノロジのサブセットが含まれる。具体的には、GUIツールキットGTK+、マルチメディアフレームワークGStreamer、リアルタイム通信フレームワークTelepathy、ネットワークサービス検出のAvahi、アドレス帳やカレンダを管理するEvolution Data Server、BluetoothプロトコルスタックBlueZである。GMAEプラットフォームには、C、C++、Pythonを使う開発者向けのAPIが用意される。

 このプラットフォームはGNU LGPL(Lesser General Public License)の下で配布されるため、プロプライエタリ、オープンソースのどちらのプロジェクトでも役に立つ。さらに、今後1年間で追加予定のものとして、モバイル電子メールフレームワークTinymail、地理情報サービスGeoClue、Java ME(Java Mobile & Embedded)、オーディオ管理のPulseAudio、ハードウェア情報システムHALがある。

 なかには、すでにGMAEプラットフォームを利用している人もいるかもしれない。同イニシアチブの発表によると、現在GMAEプラットフォームは、数あるデバイスのなかでも、ネット接続端末Nokia N770およびN800、OLPC(One Laptop Per Child)プロジェクトの端末、OpenMokoの携帯電話Neo1973に入っているという。

 オープンソース業界の多くのグループが標準規格やガイダンスへの貢献に注力しているが、GMAEは実際に市場で利用できる製品に配慮しようとする数少ない組織の1つだ。ACCESSでオープンソーステクノロジのディレクタを務めるDavid “Lefty” Schlesinger氏は、GMAEでは出荷される製品用のコードがすべてだと言う。「我々が取り組んでいるのは、標準規格や要求仕様のドキュメントではなく、コードだ」

 すでにGMAEグループは組み込みデバイスやモバイルデバイス内のGNOMEテクノロジに携わる関係者たちを取りまとめることにある程度成功している、ともSchlesinger氏は言う。ARMプロセッサのように、浮動小数点演算ユニットを持たないマシンでは、Cairoのパフォーマンス上の問題から現行版GTK+ツールキットの採用にはいくつかの課題があったという。GMAEイニシアチブは、年に2度開かれる会合を通じて、問題点を特定するための十分なデータを集め、その他のCPUでCairoパフォーマンスを向上させるための解決策に取り組むことができた、とSchlesinger氏は話す。

 ところで、組み込み機器に注力するGMAEイニシアチブは、一般のGNOMEデスクトップユーザにどんな影響を与えるのだろうか。Waugh氏は、GNOMEの「モバイル分野における経験」が関係者全員にとってのGNOMEプラットフォームの改善につながると言う。「各種モバイルテクノロジをデスクトップ環境に統合することは、特にノートPCユーザにとって役に立つ。また、ノートPC、電話機、PDAといった複数のデバイスを利用する際の使い勝手も改善されるだろう」

 今回の公式発表はGMAEへの参画を「オープンにする第1段階」に過ぎず、「我々はGNOMEプロジェクトの参加者全員に門戸を開いている」とSchlesinger氏は言う。

 また、Waugh氏は次のように語る。「GNOMEには、常にコミュニティと営利企業とのすばらしい連携があった。GMAEでは、業界とコミュニティからの大いなる支援を受けながら、こうした連携を新しい市場へと発展させる。このイニシアチブは、コードの開発、我々の優れたプラットフォームでの作業の共有、GMAEを取り巻くエコシステムの支援を主な活動とする」

 「Web端末、UMPC(ウルトラモバイルPC)、携帯電話、特定用途のノートPC、科学/教育用の測定機器など、非常に多くのデバイスでGMAEテクノロジの実証を行うことで、我々は、このプラットフォームがまったく新しい市場へと進出するだけでなく、新たな市場を生み出すことさえ期待している。自分たちの優れたプラットフォームを利用して生み出したこうした「見事な新しいアイデア」を、我々は非常に誇りに思っている(Waugh氏)。

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