Mozilla幹部、ジョブズ氏の2大ブラウザ論を「時代遅れ」と批判――「ジョブズ氏が望んでもわれわれは市場から退場しない」

 米国Mozilla Corporationの幹部は6月14日、AppleのCEOスティーブ・ジョブズ氏がWebブラウザ市場は同社の「Safari」とMicrosoftの「Internet Explorer」(IE)の一騎打ちになると主張しているのは「時代遅れ」だとかみついた。

 ジョブズ氏は11日、Appleの年次コンファレンス「Worldwide Developers Conference(WWDC)2007」での基調講演で、Windows版Safariを発表し、その将来ビジョンを披露している。

 MozillaのCOO(最高執行責任者)ジョン・リリー氏は、ジョブズ氏が基調講演の中で、現在のWebブラウザ市場シェアが、IE、Firefox、Safariでそれぞれ78%、15%、2%を占めているとしたうえで、将来的には、Safariが約4分の1、その残りをIEが占めるようになるという円グラフを示したことを問題にする。

 リリー氏はブログに投稿した記事の中で、「あの円グラフは、プレゼンテーション上のミスでもないし、ほかのWebブラウザがたまたま省略されたということでもない。ましてや下手なマーケティング戦術でもない。彼がWebブラウザに対してどのような考え方を持ち、どのようにユーザーを獲得しようとしているかを示している」と指摘、「ジョブズ氏が望んだとしても、Mozillaは市場から退場しない」と強調した。

 リリー氏はジョブズ氏の姿勢に対して怒りを隠さない。「ネットワークで結ばれた今日の世界では、ソフトウェアの流通が、以前のように独占的な会社やカルテルによってしばられることはない。Webは人々のものであり、企業のものではない」

 また同氏は、今回のプレゼンテーションで、ジョブズ氏の本音が垣間見えたと指摘する。「ジョブス氏は、時代遅れで企業中心的なWebとは相容れない考え方を持っている。ジョブズ氏はしばしば、良く言えば『現実世界を見る曇った目』、悪く言えば『世界のより多くの部分をAppleの管理下に置こうという明白な意図』をあらわにする」(リリー氏)

 Appleは14日、Windows版Safariのダウンロード数が、リリースから48時間で100万に達したと発表している。リリー氏は、競争そのものについては歓迎しながらも、「ジョブズ氏は、Windows版Safariが歴史を覆し、1億人の新規ユーザーを獲得し、2大ブラウザの時代を復活させると宣言したが、そんなことは起こりえない」と強調した。

 Web利用状況を調査しているネット・アプリケーションズによると、5月のWebブラウザ利用シェアはIEが78.7%、Firefoxが14.5%、Safariが4.8%だった。

(グレッグ・カイザー/Computerworld オンライン米国版)

米国Mozilla Corporation
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