テキサス大学、毎秒数兆回の計算を実行するプロセッサのプロトタイプを発表――産業界や科学分野などでの活用に期待

 米国テキサス大学コンピュータ学科の研究チームは4月24日、毎秒数兆回の計算を実行できる、汎用コンピュータ向けプロセッサ「TRIPS(Tera-op, Reliable, Intelligently adaptive Processing System)」のプロトタイプを発表した。TRIPSは、膨大な数のアプリケーションを同時に処理できる性能を有しており、今後は産業界や科学分野などでの活用が期待されている。

 TRIPSは2つのプロセッサ・コアを搭載している。各コアは1クロック当たり16命令を実行し、最大で1,024命令をインフライト(実行している状態)で制御できる。ちなみに、現行の高性能プロセッサは、1クロック当たり4命令しか実行できない(ピーク時)。

 また、「Explicit Data Graph Execution(EDGE)」と呼ばれる新しい命令処理アーキテクチャが採用されているのも特徴だ。これは、一度に1つの命令を処理する従来のアーキテクチャとは異なり、一度に大量の情報をより効率的に処理できるアーキテクチャである。

 現在利用されているプロセッサは、コアをマルチ化することで、プロセッサの処理速度向上を図っている。しかしこれは、コア自体の処理速度が向上しているわけではない。

 研究グループによれば、コアをマルチ化する(プロセッサ数を増やす)方法でコンピュータの性能向上を図った場合、ソフトウェア・プログラマーの負担が大きくなるという。なぜなら、プロセッサ数の増加にソフトウェアが対応できるよう、プログラマーがコードを書き直さなければならないからだ。

 テキサス大学コンピュータ科学の準教授、スティーブン・ケックラー氏は「マルチコア技術の進歩が限界に近づいている現状において、EDGE技術は代替アプローチを提供してくれるものだ」と、その将来性を語る。

 ちなみにTRIPSの研究チームは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)設計を米国IBMの半導体事業部と提携して行っている。なお、同研究チームの主要スポンサーは米国防総省高度研究計画局(DARPA: Defense Advanced Research Projects Agency)であり、ほかにも、米国Intel、米国Sun Microsystems、国立科学財団(NSF)が支援している。

(マイケル・クーニー/Network World 米国版)

米国テキサス大学コンピュータ学科
http://www.cs.utexas.edu/

提供:Computerworld.jp