PC Garageでフリーソフトウェアのコミュニティを構築

2003年、Debianの熱烈な支持者4人が集まり、地域社会におけるフリーソフトウェアの利用を促進する非営利組織、Community Free Software Group(CFSG)を設立した。組織の発足以来、CFSGのメンバーは、地域の企業や個人から寄付されたハードウェアにDebian Linuxをインストールして実行する方法を近隣の若者たちが学ぶための支援を続けている。

現在、CFSGは、3回目のPC Garageを実施している。PC Garageとは、ニューヨーク周辺の各コミュニティセンターで子供たちがコンピュータに触れて学ぶ機会を提供する取り組みである。CFSG設立者の1人、Selso DaSilva氏は、PC Garageのことを次のように話している。「考えればすぐわかってもらえるアイデアだ。私たちは、Community Technology Centerなど地域社会の場を借りて子供たちがコンピュータについて学ぶ手助けをし、教材としてフリーソフトウェアを利用する。そのなかで彼らは、自宅に持ち帰れるコンピュータを作り上げると共に、自分たちの自由を尊重するテクノロジについて学ぶことになる」

3月にEquality Community Technology Centerで始まった今回のPC Garageは、今月の終わりまで続けられる予定である。通常、PC Garageの実施期間は3カ月だが、今回のワークショップは非常に好評で、Equality Community Technology Center側が1カ月の延長を決定したのだ。各週につき14~18歳の学生18人が集まり、コンピュータに触れ、ビデオを見て、さまざまな議論を行う。一方、DaSilva氏とCFSGの仲間は、熱心な生徒たちのためにどんな苦労も惜しまずに、ハードウェアの提供者の募集、その回収とコミュニティセンターへの配送、ハードディスクのフォーマット、BIOSの更新、各システムの動作確認などを行っている。

なぜ、わざわざそんな大変なことをするだろうか。「それは、従来のCommunity Technology Centerの学習コースでは得られない知識があるからだ」とDaSilva氏は語る。「子供たちはそこから多くのことを得ているように思う。私たちのワークショップに参加する子供たちは優れたソフトウェアについて学ぶだけでなく、ハードウェアを識別して組み合わせる方法も習得する。フリーソフトウェアがあれば、ハードウェア機器の有効活用に関して支障が生じることはない」

以前の生徒たちがPC Garageで受け取ったコンピュータをまだ使っていると聞くと嬉しくなる、とDaSilva氏は語る。「以前参加してくれたある姉妹の1人が、最近、センターに戻ってきて、高校でCiscoのルーティングのクラスを受講している、と話していた。私たちのコースのおかげで彼女が使っているハードウェアでは簡単にできても、Windowsの環境では問題が起きて困っているそうだ」

しかし、ソフトウェアおよびコンピュータシステムについてのどんな知識を参加者に与えたところで、結局PC Garageの価値は「参加者が、自らの自由を重んじたテクノロジについて学べること」に行き着く、とDaSilva氏は語っている。また、このワークショップは、ただ参加する若者たちの学びを支援するだけのものではない。「私たちはコンピュータのリサイクル支援も行おうとしている。ニューヨーク市には、市民によって廃棄された装置や、設備のアップグレードにあたって大企業から寄贈された多数の装置があるのだ」と彼は説明する。

PC Garageはこうした寄贈品に頼って実行されているため、CFSGは、常に予備用のコンピュータシステムやメモリを探し求めている。しかし、CFSGの取り組みには人手もかかっている。「私たちは知人に協力を頼むことはあっても、正式な公募で参加者を集めたことはない」とDaSilva氏は説明している。「CFSGは安定したインフラストラクチャの構築を目指している。自分の時間を割いて私たちの目的の遂行に協力してくれる人には、理事会(Board of Directors)への参加依頼も検討する」

CFSG理事会のメンバーは、設立当初の4人から、非営利組織AAFEのElizabeth Wilson氏と地元の企業Pilosoft Colocation ServicesのAlex Pilosov氏を加えた6人に増えたという。「ちょうど、地域社会のボランティア組織がソフトウェア関連の学習コースを提供するのを支援しよう、というアイデアが出てきた頃だったと思う」(DaSilva氏)。

CFSGは、高校生がプログラミングの概念を学ぶのを支援する活動に取り組んでおり、現在はBlender3Dを使った3次元動画の習得コースを開催している。「そのほか、GIMPとInkscapeを活用したグラフィックのワークショップやAudacityによるオーディオ編集のコースも実施している」

CFSGが進めているニューヨーク地域社会におけるフリーソフトウェアの普及活動に興味があれば、info@cfsg.orgまでご連絡をいただきたい。

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