Google、オープンソースプロジェクトを支援する新リポジトリサービスを発表

 米Googleは7月27日、オープンソース・プロジェクトを対象とした新しいホスティング・サービスの試験運用を開始したと発表した。これにより、オープンソース・プロジェクトの開発者は、Googleの検索エンジンを使って任意のプロジェクトを探し出し、参加できるようになるという。

 「Project Hosting」と呼ばれる同サービスは、GoogleのAPIが公開されているディベロッパー向けネットワーク「Google Code」内に設置されるもの。最小限のユーザー・インタフェースを装備し、ダウン時間を短縮するバックエンド・データベースなどが提供される。

 Googleの技術責任者、グレッグ・スタイン氏は、このほどオレゴン州ポートランドで開催されたイベント「O’Reilly Open Source Convention」内で発表を行い、「ほとんどのオープンソース開発者は、他のオープンソース・プロジェクト向けのホスティング・サイトが提供するようなワークフロー機能を必要としていない」とGoogle独自のシンプルなレイアウトについてアピールしたが、既存のホスティング・サイトと競合する可能性については控えめな発言に終始した。

 同氏は、「SourceForgeやTigrisなどは立派な業績を上げている。これらの既存サイトがホスティングするすべてのプロジェクトをProject Hostingが担う必要はない」と語った。

 オープンソース・プロジェクト向けの大手ホスティング・サイト「SourceForge.Net」は、開発者の間で広く活用されており、現在16万6,000件を超えるプロジェクトがホスティングされている。

 米ホワイトページズ・ドットコムのソフトウェア・エンジニア、ジェフ・ワーテス氏は、「何かあれば、まずSourceForge.Netに行く」としながらも、Googleのサービスにも「興味をそそられる」と語っている。同氏は、SourceForgeの検索機能が「Googleに及ばず」、そのサイトも時折動きが遅くなるため、ディベロッパーが求める最新の機能を追加するのが難しいと指摘する。

 SourceForge.netのゼネラルマネジャー、ジェイ・セイルマーコ氏は、自社のサイトについて、長期的なアップグレードの途上にあり、今後ユーザーが不満を感じている多くの問題を解決すると説明している。その一方で同氏は、Googleの動きを歓迎している。「オープンソース・コミュニティにとって良いことは、われわれにとっても良いことだ」と同氏。

 Googleのスタイン氏も、この点を強調し、重複や混乱を防ぐために、オープンソース・プロジェクトの名称を集めた共通のデータベースをSourceForgeと共同で構築すると語った。

 Googleは、開発者が効率的にプロジェクトを検索できるようにするため、自社の検索アルゴリズムを使って参加者の数や最近の活動量に応じてプロジェクトをランク付けする計画だ。活動が停止しているプロジェクトは、Googleのメイン・データベースから徐々に登録解除される。例えば、MP3ファイルを保存するための無料スペースとして利用するプロジェクトや、ユーザーのパスワード収集をもくろむハッカーが立ち上げた偽プロジェクトなどは、ふるい分けられて閉鎖されるという。

 「われわれは皆オープンソース開発者であり、どのような機能が必要なのか知り尽くしている」とスタイン氏は語る。

 Project Hostingは(少なくとも今のところ)実際のソースコードを検索する機能を装備していない。また、プログラマー間のコミュニケーションを促す電子メール・システムも提供されない。

 調査会社米国エバンズ・データの社長、ジョン・アンドリュース氏は、「Googleはエンタープライズ向けの市場に移行しつつあり、Project Hostingは同社にとって新たなカギとなるサービスだ。総体的に見て、検索やセグメント化に関する他の多くの戦略を補完し、ファイアウォール内外におけるオープンソース・プロジェクトの効果的な管理に対するニーズの高まりにも対応できるという点で評価できる」と語る。

 なお、米RedHatも今年6月にProject Hostingと同様のサービスを発表している。Googleは、RedHatのようなオープンソース企業ではないが、WebブラウザMozilla Firefoxの使用を推奨し、データベースMySQLを社内で使うなど、オープンソースの強力な支援者と目されている。

 またGoogleは、Google Mapsなどのサービスを利用するなど、マッシュアップ方式で開発を進められるように、自社のAPI(Application Programming Interface)の活用を積極的に推奨している。

 スタイン氏は、「Project Hostingのサービス提供を通じて、オープンソース開発者のコミュニティにGoogleの利益を還元したい」と語った。

(エリック・レイ/Computerworld 米国版)

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