OSCON開催4日日:禅とトマトの話題

オレゴン州ポートランド発 ― 7月27日、第8回O’Reillyオープンソースコンベンション(OSCON)は4日目を迎え、Perl 6やPythonのアップデート、Zen of Freeについての講演が行われたほか、各種展示はこの日で終了となった。

この日のアジェンダの最初に記されていたのは、Simon Phipps氏による講演「The Zen of Free」だった。Sunのオープンソース担当最高責任者であるPhilips氏は、オープンソースを機能させるものと、オープンソースとはいったい何かを理解することについて語った。

Philips氏は、オープンソースの「禅(Zen)」について簡潔に説明するためにいくつかの「公案(koan)」を示し、オープンソースとは「犠牲なき利他的行為」、「法律家を必要としない使用許諾」、「支配を伴わないコミュニティ管理」、「束縛がないからこそ留まること」に関するものである、と述べた。

基本的に、Philips氏による話題は、さまざまな人々がオープンソース・プロジェクトとやりとりする方法や、プロジェクトとベンダが ― Open Source Initiative(OSI)公認ライセンスを採用することを超えて ― 行うべきことについてだった。ライセンス問題の大部分は解決されたが、今度は組織統制(governance)の領域 ― 各プロジェクトをどのように進め、公約を果たすためのルールをそれぞれの機能にどのように適用して管理するか ― が重要だとPhilips氏は語っている。

担当者が自分勝手にプロジェクトをほったらかしにするなど、統制がうまくいっていないことはすぐにわかる。しかし、どんなときに統制がうまくいっているのかはわかりにくい。Philips氏によると、オープンソース・プロジェクトの統制モデルを基準にして「自由な雰囲気が損なわれていないかどうか」を判断するための「ベンチマーク」が我々には必要だという。

また、去年に引き続き今年のOSCONのテーマにもあった、データの独立性 ― 特定のベンダやソフトウェアパッケージの利用をやめて別のものに自由に乗り換えられること ― の重要性も取り上げられた。誰もが特許侵害をはじめとする法律上のくらだないことに煩わされることなく標準を実装できるように、「標準という企業の言葉を目にしても、非断定的な取り決めの範囲で扱われる世界」にしたい、ともPhilips氏は語っている。

Philips氏の話は、基調講演の形を取ったものとしては、これまでに聞いたうちで最もすばらしい講演の1つだった。

OSCONの場合、毎朝、1時間を超える枠の基調講演を1つだけ行うのではなく、複数の講演が用意されているため、出席者たちはオープンソース業界における著名人の発表を数多く聞くことができる。それはそれですばらしいことだが、どの発表者にも十分な時間は与えられない(つまり、発表の腕前次第でよくも悪くもなる)という副作用もあって、講演の出来不出来には顕著な差が現れる。

Philips氏の「Zen of Free」の後は、Gary Lang氏が演壇に立ってAPIとオープンソースのコードについて語った。残念ながら、この講演はAPIとソースコードに関する知見に満ちたものではなく、Autodeskの歴史について述べていたように思われた。

これに対し、Robert “r0ml” Lefkowitz氏の講演は ― 全面的に同意できる内容ではなかったが ― 非常に楽しいものだった。Lefkowitz氏の話は、オープンソースをトマトになぞらえるなど、ユーモアあふれるさまざまな比喩で始まった。やがて話題は「オープンソースはどれくらい健全か」という点に落ち着いた。

人間が毎日、一定量の果物や野菜の摂取を必要とするように、我々はどれほどオープンソースが必要とされ、健全であるかを判断する必要がある、とLefkowitz氏は述べると共に、人々はいつオープンソースを利用しているのか、という議論も行った。たとえば、Webサーバの大半はApacheサーバなので、Webを閲覧すればオープンソースを利用することになるだろうか (あるいは、ケチャップにはトマトが含まれており、レーガン政権はケチャップを野菜に分類しようと試みたからといって、ケチャップは野菜だと言えるだろうか)といった具合だ。

Lefkowitz氏は完全菜食主義者と菜食主義者について説明しながらRichard Stallman氏の写真を掲げ、オープンソースのダイエットしかしない人々(菜食主義者に相当)を揶揄していた。

このLefkowitz氏の考え方のうち私が賛同できないのは、オープンソース・ソフトウェアの比率が3分の1から3分の2の間であれば「健全」だという理想論に彼が行き着いた点だった。また、食品成分表の形で表せば、独占的ソフトウェアは肉類ではなく、箱入りカップケーキやアイスクリームのようなもの ― 少量なら問題ないが、そればかり食べていると身体を壊す ― に相当するはずだ。

PythonおよびPerlのアップデート

現在、PythonとPerlはアップデートが行われている。Pythonのメジャーアップデートが開始されたのはつい最近だが、Perl 6のほうは開始から相当な時間が経過している(今年のOSCONの発表でも、たびたび冗談のネタになっていた)。この日、OSCON参加者はこれらの言語に何が起こっているかを理解することができた。

Pythonの生みの親、Guido van Rossum氏は「Python 3000」と題して発表を行った。Python 3000は小規模な修正版を指しており、最終的にはPython 3.0として結実することになる。この発表でvan Rossum氏は新たな構想の基本的な考え方について説明し、暫定的な開発スケジュールを提示した。

van Rossum氏が明らかにしたことの1つは、Perl 6のようなやり方での再設計を彼自身はPythonに望んでいないことだった。むしろ、彼がやりたいのは、初期の設計のバグを修正し、いくつかの変更を行うことでPython 3.0を以前のバージョンと互換性のあるものにすることと、廃止予定の機能をこれを最後に取り除くことだという。

van Rossum氏によると、Python 3.0のアルファ版は2007年に、最終版は2008年中にリリースが予定されているそうだ。このスケジュールではPython 2.xシリーズの開発も継続されており、Python 3.0の登場までには、8月に最終版が出るPython 2.5以外にバージョン2.6のリリース予定もあるほか、Python 3.0からのバックポートによる2.7や2.8のリリースもあり得るという。

なお、van Rossum氏が説明していた3.0に向けての変更の大半は、大きな修正ではなくちょっとした調整だった。

一方のPerl 6では当然、大規模な変更が行われているはずだが、どうやらこの変更はほぼ完了しているらしい。昼食後のLarry Wall氏とDamian Conway氏によるPerl 6開発の近況報告では、Perl言語の設計における最終調整の一部について説明が行われた。

この報告は、昨年Perl 6に対して実施された、構文の改善および変更を主とした小規模な改良に焦点を当てていた。たとえば、範囲指定のための「~を除いて~まで」、「これより後で~まで」という表現が追加されており、状況によっては変数や範囲を若干容易に扱えるようになる。

厳密なスケジュールには触れていなかったが、Wall氏とConway氏によると、再設計の中核となる部分は「ほとんど完成」しているそうだ。1つ確かなのは、多くのユーザがPerl 6に関心を寄せていることだ。私が聞いた発表のほとんどは盛況だったが、このPerlの近況報告はそれどころではなく鮨詰め状態で、発表開始時点で会場はすでに満席、多数の出席者が立ち見、またはフロアに居場所を探し求めるありさまだった。

BOFセッション

この日の締めくくりとして、夕方に行われた2つのBOF(Birds Of a Feather)セッションに出席した。1つはSunのオープンソース戦略に関するもの、もう1つはJeff Waugh氏によるUbuntu関連のセッションだった。

OSCONに対して1つ不平があるとすると、それはすべてに対して余裕がないことだ。スケジュールが一杯に詰まっていて、アジェンダにはあまりに多くのイベントが記されているため、ようやく盛り上がってきたところで終了時間を迎えたりすることがある。ちょうどUbuntuのBOFセッションがそうだった。

UbuntuのBOFセッションが始まったとき、部屋にはわずかしか人がいなかったため、出だしは非常にゆっくりとしたものだった ― 出席者の多くは、前のセッションが終わった後、このBOFセッションの開始に遅れないように必死にこの部屋を目指してきたに違いない。しかし、20分後には出席者の数は30人に増え、やがて議論が最高に盛り上がってきたときには、次のBOFセッションのために部屋を明け渡さなければならない時間になっていた。

最後に

OSCON開催日程のうち、終日の予定が組まれていたのはこの日が最後だった。展示フロアはこの日午後5時を持って終了し、明日(7月28日金曜)のセッションは午前8時45分に始まって午後1時に終わる。明日の午後にはウィラメット川沿いの橋を見て廻るO’Reilly主催の観光ツアーのほか、OSCON参加者向けのFree Geek施設の見学ツアーが予定されている。

NewsForge.com 原文