「軍事利用禁止」版GPLを掲げるオープンソース・プロジェクトGPU

GPUはGnutellaクライアントで、ネットワーク上の個人PCが相互にCPUリソースの共有を許すことでスーパーコンピュータをアドホックに構成する。これだけでも十分面白そうだが、それにも増して興味深いのは、そのライセンス、彼ら言うところの「軍事利用禁止」版GNU General Public License(GPL)である。

GPUプロジェクトを率いる2人の開発者Tiziano MengottiとRene Tegelのうち、ライセンスの「パッチ」を推進したのはMengottiだ。そのパッチに曰く、「プログラムとその派生品は、人間に危害を加えることを目的に実行または変更されてはならない。また、人間に危害が加えられるのを看過するものであってはならない」

Mengottiによると、これはとりわけ軍事利用の禁止を念頭に置いたものだという。「私たちはオープンソースの開発のために、自分の自由時間を割いているのです。しかし、オープンソースが軍事産業でも使われているという事実があります。オープンソース・オペレーティング・システムが戦闘機やロケットを動かしているかも知れないのですよ。そこで、このパッチを追加したのです。ライセンスで、そうした利用が明確に禁止されていることを明確にしたかったのです」

そして、次のように述べる。軍事利用禁止が「あまりにも理想主義的」で現実的には無意味だと考える人もいるだろが、アマチュア無線の世界には技術を商用利用してはならないというルールがあり、「なんと、ほとんどすべてのアマチュア無線家たちがこのルールを高く評価しているのです」

しかし、この「パッチ」が、ソフトウェアとソースコードの利用者に完全な自由を保証するというGPLの本旨に反することを認めるにやぶさかではない。件の個所はライセンスの前文に置かれているが、「このライセンスはオープンソースの定義第6節に抵触します」

フリーソフトウェア運動の提唱者でありGPLの執筆者でもあるRichard Stallmanはそうした「オープンソース」の理念を支持しないし、ソフトウェアの利用を制限することで他者の行動を制約しようとする権利がソフトウェア開発者やディストリビュータにあるとも思わないと述べる。「ですが、そうした要件が全く空虚なものだとは思いません。ですから、法的に無効だからといって無視することはできません」

Open Source Initiative(OSI)の創設者の一人Russ Nelsonは、「一人の平和主義者として彼らの趣旨には共感を覚えます。戦争に強い感情を抱く人たちは効果がないと分かっていても敢えて行動することがあります。戦争に直接荷担したくないという意志を明確に示すためです」

GPUプロジェクトのもう一人の開発者Tegelは、GPUのライセンスに件の文を含めることに諸手を挙げて賛成しているわけではないと言う。「趣旨は分かりますし、個人的には同感です。しかし、ライセンスに相応しいかどうかは疑問ですね。たとえば我が国のオランダ軍であれば、殺人集団であり無駄な浪費だと言って否定することはできます。その一方、左派も右派も、連合軍が私たちをナチから解放したからこそ、今、自由を謳歌できるのだと説いており、私も大いに納得できるのです」

しかし、MengottiもTegelも、次の点では一致している。すなわち、ライセンスに新たに追加した文がSF作家アイザック・アシモフの提唱したロボット三原則を下敷きにしているということだ――第1条「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、人間に危害が加えられるのを看過してはならない」。2人とも、この原則はよくできていると言う。「アシモフは正鵠を得たのです。ほぼすべての技術開発は、必ず、あるパラドックスに直面することをアシモフは指摘しました。それはソフトウェアでも原子爆弾でも同じことです。私たちは、将来発生するであろう倫理問題を今から考えなければならないのです」(Tegel)

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