論説:リンクウェア・ライセンスに潜む問題点

先日、WordPress Planetのサイトを見ていたら、31個のフリーのテーマへのリンクがあった。WordPress Divaが提供するテーマだ。もちろん、この「フリー」は無料という意味であり、ライセンスでは、テーマに埋め込まれている2つのリンクを、「テーマを使用する間はずっと」表示するよう定められている。ここで私は、Divaのことを取り立てて責めようというつもりはないが、この種の「リンクウェア」ライセンス(返礼としてリンクが必要なライセンス)では問題が生じる可能性があるということを述べたいと思う。

テーマやWebアプリケーションの利用者に、開発元への逆リンクを依頼するというのは、表面的にはさほど重大な話ではない。たとえばWordPress Divaの場合、見栄えのいいテーマを配布して、テーマのWebページと、家具を宣伝する別のサイトへのリンクを依頼しているだけである。ページの一番下につつましく表示される、ごく小さなリンクだ。なぜそれが問題となり得るのだろうか。

その理由はいくつかある。1つは、再配布に関するライセンス条項がこの場合にはあいまいだという点だ。自分で修正したテーマを再配布したい場合にはどうなるのだろうか。逆リンクが元のまま残してあれば認められるのだろうか。別のリンクを追加してもいいのだろうか。リンクウェア・ライセンスでは、それらの点について何も述べられていない。

だが、何よりの懸念は、リンクが古くなるという不可避の事態が生じたときにどうなるかという点だ。ユーザの中には、広告リンクが組み込まれている点を問題視している人もいるが、私が心配しているのは、元の作者が意図したのとは別のリンク先に変貌してしまうことだ。

ちょっとした実例を紹介しよう。私は、今年のOhio LinuxFestの推進を手伝っている。その一環として、オハイオ州コロンバスおよびその周辺のLinuxユーザ・グループ(LUG)に連絡を取り、この展示会の話を広めて、LUGのメンバたちにたくさん来訪してもらうという活動を行っている。

昨年の展示会で使用したLUGのリストにあたっていく中で気付いたのだが、LUGの中には、既に活動を停止し、ドメイン登録が失効しているものがあった。そして、そのドメインは、ドメイン・スクワッターの手に渡っていた。かつてLUGが使用していたドメインを開くと、広告が満載の不快なページが表示される。(当然ながら、その実例へのリンクはここには示さないことにする)。

WordPress Divaのテーマの使用に関しては、別の制限事項として、「利用者は、アダルト情報、非合法な情報、憎悪や差別に関連する情報を流布または助長するWebサイトでこれらのテーマを使用および表示しないことに同意するものとする」と定められている。だが、wordpressdiva.comの所有者がドメイン登録を万一失効させてしまった場合、ポルノ・サイトなどの好ましくない情報の宣伝をもくろむ者にこのドメインを奪取される可能性は大いにある。少なくとも、ドメイン・スクワッターがこのサイトに宣伝ポータルを立ち上げるのはまず間違いない。

そうなった場合、スクワッターは、Googleの高スコアの恩恵にあずかることができる。リンクウェアのテーマを使用しているさまざまなドメインが、ライセンス条項に従って、スクワッターのページにリンクを張っているからだ。リンクウェアのテーマを使用しているユーザは、元のライセンス条項を無視するか、スクワッターのページにリンクするか、別のテーマを探すかの三択を迫られる。ブログの人気が高まるよう、手間暇をかけてテーマをカスタマイズしてきたユーザなら、これはいささか困った状況である。

リンクウェアの問題を回避する方法

リンクを必須と定める要件は、決して対処不可能な問題ではない。リンクウェアの作者が、いくつかの手順を踏んで、リンクウェア・ライセンスの条項を明確にしておけばよいのだ。

1つ目は、再配布についての条項や、再配布が認められるかどうかについて、ライセンスに明記しておくことだ。修正を加えたテーマを再配布したい場合や、リンクをいくつか追加したい場合はどうなるのだろうか。リンクウェア・ライセンスの中には、この点について何も述べていないものが多く、対処が必要である。

2つ目は、テーマまたはアプリケーション自体にライセンスを同梱する必要があるということだ。WordPress DivaのサイトからSkewed Rainbowテーマをダウンロードしてみたところ、ダウンロード用のページにはライセンスについての記載があったが、テーマ自体にはライセンス・ファイルが含まれていなかった。テーマにライセンスを含めず、ライセンスのURLのみを記載するというのは、作者のサイトが今後もずっと今のまま存在し、そのURLでライセンスを参照できることが前提となるが、これが決して確実な前提ではないことは、ご同意いただけると思う。

3つ目は、リンク先のドメインの所有者が変更になった場合や、そのURLのコンテンツを利用できなくなった場合にどうするかについて、作者が明記する必要があるということだ。私なら、特定のURLに常にリンクを張るという条項が定められたテーマを使用することは気が乗らない。そのドメインがドメイン・スクワッターの手に渡る可能性があるからだ。また、元のURLがなくなった場合に代わりのURLをどこで探せばよいかということも把握しておきたい。

リンクウェア・ライセンスには、当該ドメインの所有者が変わった場合には対象URLへのリンクをエンド・ユーザが中止できるという条項が必要である。その点に関して、作者は、自身のサイトのデザイン変更に伴って古いURLが使用できなくなる事態に備えて、予備のURLも指定しておくとよいだろう。

リンクウェアを必要とするテーマやWebベースのソフトウェアの場合、これらの問題に漏れなく対処しているライセンスでない限り、私は使用を躊躇してしまう。

NewsForge.com 原文