Software Freedom Law CenterがBlackboardの特許に挑む
Blackboardはこの特許が認定されたことを6月26日に発表し、すぐさま競合のDesire2Learnを相手取って特許侵害の訴訟を起こした。
Desire2Learnのアプリケーションはフリーソフトウェアではないが、インターネットベースの教育システムを提供しているフリーソフトウェアおよびオープンソースのプロバイダは、オープンソースのeラーニングアプリケーションに対するこの特許の影響について懸念を表明し、SFLCに再審査の申請を依頼したのだ。
Sakai Foundationの理事長Joseph Hardin氏は、BlackboardがDesire2Learnに対して訴訟を起こすまでソフトウェア特許について考えていなかったが「これが問題のある特許で、我々のコミュニティに危害を加えつつあることがわかったため、この事態を改善する手段を講じているのだ」と話している。
またHardin氏は、Sakai Foundationが今になって行動を起こしている理由を、Blackboardが特許で競合他社を訴える姿勢を見せたからだと説明する。「特許の保有は1つのやり方だが、米国中の人々はおそらく出願すべきでなかった特許を保有している。特許を保有するだけで脅しには使わない場合、問題にはならない。だが攻撃的な方法で利用すればコミュニティ全体の問題になり、もともと質の悪い特許だった場合には問題が複雑化する」
SFLCやSakaiをはじめとするグループは、前述の特許とオープンソースプロジェクトに関するBlackboardのねらいについて話し合う場を持ったが、まったく意見はまとまらなかった。Blackboardはeラーニングソフトウェアを手がけるオープンソースのプロバイダに直接脅しをかけているわけではないが、SFLCの顧問Richard Fontana氏はBlackboardについて次のように話している。「Blackboardは、少なくともオープンソースの商用ユーザとディストリビュータを訴える用意があることを明らかにしている。特許を保有する多くの企業は、オープンソースソフトウェアの開発、利用、販売を行う組織に対しては特許権を行使しないことを公約しているが、Blackboardはこうした先例に従うことを拒否したのだ」
Blackboardの上級副社長で総合弁護士の Matthew Small氏は「当社は常にオープンソースに協力的だった」と言い、Sakaiは「今回のDesire2Learnに対する訴訟を自社の宣伝目的に利用している」との自説を述べている。また「当社の共同代理人の多くが賛成しているにもかかわらず」、Sakaiはこの特許に対するフリーライセンスを辞退したのだ、と彼は語っている。
Small氏は、フリーライセンスはまだ取得可能であり、今回の訴訟は「一連の訴訟活動の第一段階になるものではない」とも話している。さらに同氏によれば、Blackboardはこの訴訟がeラーニング業界を不安に陥れていることを認識しており、この懸念を「言葉だけでなく行動を通して」軽減したいと考えているそうだ。
成功の見込み
Fontana氏は、今回の再審査の試みがうまく行く可能性は高いと述べている。「再審査請求の大多数は、そうした請求の結果としてUSPTOが該当特許の再審査を指示するという意味で、最初から成功を収めている。保有者ではない第三者が請求した(今回のような)再審査の場合、その70%は少なくとも一部の特許クレーム(請求の範囲)が狭められることになる。
「そのうち、約20%は全クレームが取り消される結果になっている。そのため、Blackboardの特許は何らかの形で存続するかもしれないが、おそらく無傷のままではいられないだろう。最も可能性が高いのは、現実的には他社を攻撃できなくなるほどに著しく権利が弱まるという状況だ」
たとえ特許クレームの一部が無事に再審査を通過しても「残ったクレームは必然的に著しく権利が弱くて請求範囲の狭い、非常に危険性の低いものになるだろう。つまり、我々の勝利になるわけだ。さらに、再審査期間中に自社の特許クレームを守ろうとするBlackboardの言動はすべて、そうしたクレームを弱める方向に働く。
「Blackboardは自らのクレームを取り下げるか、修正して文言上の範囲を狭める(権利を弱める)かだろう、と我々は想定している。しかし最低でも、Blackboardは自分たちの特許クレームが実際には見た目より狭いことを特許審査官に主張せざるを得なくなるだろう。その結果、自分たち自身で解釈を狭めたクレームにずっと苦しめられることになる。どう転んでもBlackboardに勝ち目はない」
だがSmall氏の見解は異なる。Blackboardは再審査を歓迎しており、結局は権利が強くなるだけだろう、と言うのだ。
当然のことながらSmall氏とHardin氏では、この特許に対する捉え方が違っている。Hardin氏によると、Blackboardの特許は「ユーザ、学生、管理者に役割を割り当て、アクセス権を判断するために各役割を用いる任意のシステム」を対象として含めようとするもので、「その権利範囲はきわめて広く、関係するすべての要素、場合によってはデータベースシステムを含むすべてが対象になる」という。
一方のSmall氏によれば、この特許は権利範囲が非常に狭く、ユーザが別のマシンから異なる役割でログオンしても日程表を管理できるシステムを対象にしているそうだ。SFLCの申請内容は「この特許の内容を誇張し過ぎており、Blackboardが特許事務所に送った内容が反映されているようだ、とも彼は述べている。
もちろん、こうした特許の権利範囲の大小にかかわらず、大半のオープンソース支持者は、ソフトウェア特許は断じて出願すべきでない、と考えている。SFLCはソフトウェア特許に反対する立場を表明しているが、まだSakai Foundationはそこまで踏み込んでいない。
Hardin氏によると、Sakai Foundationは今のところはまだソフトウェア特許すべてに対する包括的な態度を示していないが、それは今回初めて同組織がソフトウェア特許の問題に直接対処することになったからだという。「我々はこの特許紛争に向き合うのに忙しいが、どのように行動を起こすかについては来週の協議で答えが出るだろう」
Blackboardはソフトウェア特許に賛成しているが、「ソフトウェア特許や特許全般については非常にもっとも議論が存在する」とSmall氏は言う。また「特にBlackboard絡みの議論の多くは、概してソフトウェア特許に関するものだ」とも述べている。
最後に、Hardin氏は次のように語っている。「むしろ自分は、より高度な学問における教育や研究向けの興味深いアプリケーションについてもっと話をしたかった。ソフトウェアも、オープンソースのコミュニティも刺激的だが、結局のところ、どうしても必要な要素ではない」
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