Free Ryzom、緒戦は敗退するも戦いを継続

Free Ryzom キャンペーンは先の入札で MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG) 「Ryzom」の所有権の獲得に失敗したが、 また別のゲームの開発や獲得に向けて新たに再出発をしようとしている。 ただし今はまだ、その新たなキャンペーンの戦略がどのようなものとなり、 どれほどの支持を得られるのかは定かではない。

先月取り上げた ( 翻訳記事)ように、 Free RyzomキャンペーンはRyzom開発元である Nevrax SARL社の破産手続きの際に Ryzomの権利を買い取ることを目的として11月に設立されたプロジェクトだ。 プロジェクトはキャンペーンが終盤に達した12月下旬には 170,000ユーロを超える寄付の約束を取りつけることに成功していて、 その中にはFSF(フリーソフトウェア財団)からの60,000ユーロの寄付の約束も含まれていた。 FSFが多額の寄付を申し出たのは、Free Ryzomキャンペーンが GNU/Linux用のフリーな3Dドライバをビデオカードメーカがリリースすることの 後押しとならないかと考えてのことだった。 また今までよりも多くのユーザを フリーソフトウェアへ引き付けるきっかけとなるだろうとの思惑もあった。

買い取りの入札が失敗に終わったというニュースは、 Free Ryzomキャンペーン幹事のXavier Antoviaque氏によって Free Ryzomキャンペーンの メールフォーラムへと 12月21日に届けられた。 Antoviaque氏の説明によると、裁判所ではRyzomに対し他にも2件の入札があったとのことだ。 そしてその2件のどちらも「僕らよりも多くの社員を抱え、 僕らよりも大きな金額を提示していた」のだと言う。 なお入札で最終的にRyzomを獲得したのは、 Gameforge社というドイツのゲームメーカーだった。

この結果に対しAntoviaque氏はほぼ間髪を容れずに 新たなスレッドを開始して、 次に行なうべきことをサポータに問いかけた。 「僕らのキャンペーンは、これでただ無に帰されるだけであっていいのか? 髭面のヒッピー連中がゲームを買おうとして失敗した話として残るだけで? そうじゃなくて、 何かフリーソフトウェアのための組織を立ち上げるためのきっかけとして この機会を活かすべきじゃないのか? 何度も何度も、何度だって成功するまで挑戦するための組織を」。

Antoviaque氏はFree Ryzomキャンペーンが現在再出発に適した状態にあると指摘する。 「今回は僕らと違った普通の会社組織が入札に勝ったという結果になってしまったけど、 それでもこのキャンペーン自体は成功だったと思う。 ネット上ですごく評判になったし、 メジャーなメディアでも取り上げられた。 2件のFOSS投資家を見つけたし、 FSFの支援も取り付けたし、 170Kユーロもの寄付の約束が登録されたじゃないか。 それに…これがたぶんいちばん大切なことだと僕は思うのだけど、 みんな、僕らは一人じゃないって分かったじゃないか。 みんな、僕ら自身の世界である高品質MMORPGを 自分たちの手にするという夢を持ってるって分かったじゃないか 」。

Antoviaque氏はまた、これから再出発して開始する運動の方が成功する可能性が高いと考えているようだ。 「準備のための時間があるということ。これは大きい。 長い時間をかけられるのだから、 寄付の約束だけでなくて、 実際の多くのお金を集めることができるかもしれない。 それに今回の初めての挑戦では一から積み上げなければならなかった、 経験やコネクションや信頼も、 次回の場合には最初から手にしているんだから 」。

86人のフォーラムメンバーが参加したフォーラム上のアンケートによると、 Free Ryzomキャンペーンのサポータの80%が新たな運動にも興味を示しているとのことだ。 さらに再出発の方法についての提案なども早速届き始めている。 Antoviaque氏自身の考えとしては 「例えば、Ryzomをフリーソフトウェアとして公開してもらうようGameforge社を 説得するという手もある。 あるいは、Gameforge社がもしかしてNevrax社と同じような困難な状況に陥ったときに、 再びRyzomの買い取りに挑戦するのもいいかも知れない。 あるいは、既存の他のゲームの中に 高品質でかつ僕らに買うことができるものはないかと当ってみることもできるだろう」 と考えているようだ。

また、Antoviaque氏以外の他のサポータの提案には、 裁判所の決定に異議を唱えることや、 Gameforge社に対して買値を提示してみることや、 他のオンラインゲームの活動グループと協力するということなどがあった。 中には、Free Ryzomキャンペーンに元Nevrax社員が参加していたことに目を付け、 元社員が非合法的にでもコードを公開するべきだという極端なことまで言い出したサポータもいたが、 この案に関しては他のサポータから即刻却下された。

しかし、今後の予定が未定であることに加えて、 再出発したキャンペーンにどれほどの支持が集まるのかという疑問もある。 実際、最初のFree Ryzomキャンペーンのサポータの中にはどうやら Ryzomの続行にのみ興味があったと思われる人たちも含まれていたようで、 そのような人たちは 「フリーソフトウェアのゲーム」ということがメインの関心事ではなかったようだ。 またFree Ryzomキャンペーンのフォーラムの別スレッドでは、 多くの人が寄付の約束を撤回したり 今後も支援を続けるかどうかを決めるために具体的な計画案の提示を要求したりしていた。 また個別の提案に対してはっきりと反対の意思表示をしている人もいた。

加えて、 元々のFree Ryzomキャンペーンについては最高額の寄付を約束していたFSFも 支援の白紙撤回を発表した。 FSF常任理事のPeter Brown氏の説明によると 「Free Ryzomが特別だったのは、 完成度の高いゲームをフリーソフトウェアとして獲得できるチャンスだったからです。 FSFは、キャンペーンを続行する人たちがいるのなら、それがうまく行くことを願っています。 ただ残念ながら現時点でのFree Ryzomは、 FSFの注目に値する何千個ものプロジェクトの一つに過ぎなくなったということです 」とのことだ。

以上のような不確定性やつまずきにもめげず、 Antoviaque氏は今もなお再出発の可能性を追求し続けている。 そして今となっては「Free Ryzomキャンペーン」という名称はふさわしくないということで、 現在、新たな運動のための新たなサイト Virtual Citizenship Association (バーチャル市民権連盟) がAntoviaque氏によって開設されている。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalへ定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

NewsForge.com 原文