Linux.conf.au:コンファレンス第2日の参加レポート

15日からニューサウスウェールズ大学(シドニー)ケンジントン・キャンパスで開催されている第7回Linux.conf.au(LCA)の2日目をレポートする。この日は、ミニコンファレンスとChristopher Blizzardによる基調講演があった。

基調講演の中で、Blizzardは、One Laptop Per Child(OLPC)プロジェクトで行ったインタフェースの設計と利用者ニーズへの適合性について語った。Blizzardは少々危険な領域にまで踏み込み、「適合性」があれば「メーターの針を動かす」――普及率を上げる――こともできるだろうと述べ、「『Linuxデスクトップの年』から何年たったでしょうか」とフロアに問いかけた。

Blizzardの基調講演は好評だったが、新鮮味はない。後半の質疑応答時間に出された質問の大部分は「発売はいつか」という類のものであり、答えは「買えません」の一点張り。少なくとも今はムリだ。なぜなら、BlizzardとOLPCプロジェクトはプロジェクトが目的とする人々にPCを届けることに専念しており、趣味人やオタクに販売するのは後回しなのだから。

ミニコンファレンス

第2日の予定表にも多くのミニコンファレンスが並んでいる。初日同様、Debian、GNOME、教育用のミニコンファレンスのほか、この日の呼び物として、ゲーム、カーネル開発、PostgreSQL、OpenOffice.org、Linuxchixのミニコンファレンスがある。

人並みにゲーム好きなので、この日はPaul MurphyによるPythonとBigWorldに関する講演から聴くことにした。開発者がスクリプト言語にPythonを選ぶ理由とBigWorldにおけるPythonの使用法が主な内容。講演の終わりに、スクリプトを使って、MMOG(Massively Multiplayer Online Game)の中のエレメントをリアルタイムに変更して見せた。わずかなコードでも相当のことができるものである。

ルール0:落ち着くべし

この講演が終わるや否やLinuxchixの会場に急行し、Akkana Peckの「Bug Fixing for Non Programmers」を聴いた。プログラマーでない人を前提に、プログラムのバグを特定し改修までしてしまおうという話だ。Peckはその方法を概説したが、「ルール0」は「落ち着くべし」だそうだ。問題を論理的に検討せよということだが、なるほど、忍耐と根気があれば答えは見つかるかもしれない。

Peckは、grepなどの、コードを検索しプログラムを改修する手掛かりを探すツールについて説明し、またオープンソース・プログラムのソースをコンパイルする一般的な手順を手短に解説した。このほか、パッチの発行手順、プロジェクトや保守担当者との付き合い方についても説明していた。

フロアの反応は、講演で取り上げられたツールについては先刻承知という風だったが、見つけたバグの通報と改修の方法には興味を引かれたようだ。後半の質疑応答は活発で、とりわけプロジェクトの保守担当者が新しいコードの受け入れに消極的な場合にプロジェクトパッチを受け付けてもらう方法に集中していた。

カーネル・ハッカーから見たWesnoth

Rusty Russell
Rusty Russell
Peckの講演もよかったが、その次に聴いた講演が最高だった。ゲームのミニコンファレンスの一環として、カーネル開発者であるRusty Russellが行った講演である。Russellは、Battle for Wesnothプロジェクトに関わるようになった経緯と、ターン型戦略ゲームの機能追加やバグ改修を行った際の難しさについて語った。会場は超満員、座席はおろか、立ち見しやすいコーナーはどこも人で溢れていた。

RussellはまずWesnothの映像を再生しようとしたが、何度か失敗した挙げ句、フロアからの助け船でようやくプロジェクターを動かした。その後、自身が経験した技術的課題について語った。フロアにはプログラマーではない人もいたため、話は概説レベルになった。

Russellの話は分かりやすく、しかも面白かった。私が聞いたほとんどの講演は多かれ少なかれユーモアがあったが、Russellにはプレゼンターの素質があり、すし詰め状態の会場に笑い声が絶えなかった。

攻撃シミュレーションを高速化するためにゲームのAIを調整した仕事や、オープンソース・ゲームとカーネルの仕事との相違点について語り、「カーネルの場合、ミュージシャンと仕事をすることはなく」、ゲーム・プロジェクトではミュージシャンやアーティストが関わるが、彼らはオープンソース・ライセンスについてあまり知らない。つまり、自分の作品に他人が手を加えることを許すという発想に馴染みがないと指摘した。

お茶の時間

この講演の後は、午後のお茶の時間だ。毎日午前と午後の2回、軽食――ペストリー、果物、スナック類、飲み物――が振る舞われる。

参加者はLCAの広い廊下に出て、軽食が用意されているテーブルに向かう。そこで、かなりの時間、そうした人々を掴まえては彼らの職業や印象を尋ねてみた。それによると、ほとんどの人は何らかの形でLinuxに関わっており、システム管理関係者とプログラマーが多かった。コンファレンスについては、これまでのところ概ね好評だが、初めの頃ネットワークに接続ができなかったことについては若干の不満が聞かれた。ただし、この問題は解消されており、全員ではないにしてもほとんどの人はワイヤレス接続できているようだ。今は、講演時に参加者から一斉に出される接続要求はうまく捌かれている。

Debianメーリングリストに参加しているGmail利用者の数

お茶の後は、Debianのミニコンファレンスに参加し、Pascal Hakimによる20分間の講演を聴いた。HakimはDebianリスト・マスターの一人で、Debianメーリングリストの実態を技術的および社会的な観点から解説した。

Hakimによると、Debianリストに登録されたアドレスは176,769。重複を除くと90,409で(複数のリストに登録している人がいるのだろう)、そのうち25,000ほどがGmailのアドレスだ。Gmailの市場占有率に比べるとどうなのだろうか。

平均トラフィックはというと、15日月曜日のメッセージは1,133,933通で、これは取り立てて大きな数字ではないという。

Hakimはスパム問題にも言及した。真っ先に述べたのは、メールの確実な送達を最優先するということ。合法メッセージの送達を阻害する可能性とスパムを見逃す可能性のどちらかを選ばねばならないとしたら、スパムの阻止よりも合法メールの送達を優先するという。

この講演の次に予定されていたJonathan Oxerの「Release Monkey」を聴きたいと考えていたのだが、何らかの理由で予定が変更され、代わりにMaemoに関する講演があった。講演者の名前は聞き漏らしてしまった。内容は興味深くはあったが、少々散漫な講演だった。

次に聴いたのは、CanonicalのRobert Collinsの講演だ。CollinsはDebian不安定版で遭遇した問題について語った。Debianの不安定版はその名の通りになることが多すぎる、不安定アーカイブのパッケージをできるだけ壊さないような対策を講じるべきだと述べ、たとえば中核的なパッケージ(GCCなど)がメジャー・アップデートしたときは、GCCを使うパッケージが壊れない程度に安定するまでアーカイブを分岐させることを提案した。

討論は活発だったが、結論は何も得られなかった。

5時半にミニコンファレンスが終了すると、直ちにLinux Australiaの集会が開かれた。それから、Googleが支援したコンファレンス・パーティーでみんなが楽しんだ(みなさんそう言う)。

LCAの会期は1月19日金曜日まで、会場はニューサウスウェールズ大学。17日はOpen Dayで入場無料だ。さまざまなテクノロジーが展示されているので、お近くの方でまだLCAに登録していないなら、登録して会場に出掛けてみてはいかがだろうか。

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