フリーソフトウェア化を視野に入れたFedoraによるリポジトリの再編成

Red Hatの支援するFedoraプロジェクトは現在、次バージョンのリリースに先がけて様々な改変を進めているところである。例えば来るFedora 7ではCoreおよびExtraソフトウェアリポジトリが統合される予定であることを契機に、非フリー系および非オープン系ソフトウェアについてはプロジェクトのガイドラインに則していないものをリポジトリから取り除くべく、Fedora開発陣による監査が行われている。そして最終的に同プロジェクトは、そのパッケージガイドラインを“フリーソフトウェア”オンリーとした内容に改訂するかもしれないというのだ。

2006年4月にRed Hatのオープンソース事業の責任者を務めるMichael Tiemann氏からFedora Advisory Boardメーリングリストに寄せられたメッセージを受ける形で、役員を務めるRahul Sundaram氏およびFedora開発者のTom Callaway氏によるFedoraパッケージのライセンスに関する監査が始められた。この監査プロセスは入念に実施されており、Fedoraのパッケージガイドラインに正しく準拠させるべく、Coreリポジトリに対してもいくつかの変更が施されたとのことだ。「Fedora Core 6のリリース前には、Fedora Coreパッケージ全体をガイドラインに正しく準拠させるための作業を行いました。これらのパッケージの多くは、新規プロジェクトとしての立ち上げ時にRed Hat Linuxから引き継いだものだったからです」とSundaram氏は語る。

次に行われる作業は、次回のFedoraリリース前にCoreリポジトリとの統合が予定されているExtrasリポジトリに対するクロスチェックを施すことである。このExtrasパッケージについては、リポジトリのパッケージ登録前に行うライセンスチェックも含めて、ピアレビューまでは完了している。

Fedoraパッケージに関する現行のガイドラインでは、“フリーソフトウェア”ないし“オープンソース”の定義に合致していることがパッケージに対して求められており、OSIの認可ライセンスGPL互換のフリーソフトウェアライセンスGPL非互換のフリーソフトウェアライセンスのいずれかが適用されている。今回の監査プロセスにおいては、これらの定義に合致しないプロプライエタリ系パッケージが残されていないかが確認されており、該当するものが存在した場合は、パッケージメンテナおよびFedoraとアップストリームプロジェクトとが協力して、そのライセンス変更が可能であるかの検討が行われた。「こうした作業は、そのほとんどが順調に進みました。一部存在したライセンス変更が不可能であったパッケージについては、収録を断念せざるを得ませんでしたが、その様な場合は可能な限りフリーソフトウェア系の同等品を用意するよう努めました」とSundaram氏は説明している。

ガイドライン改訂の可能性

昨年Tiemann氏は、「Fedoraパッケージの構成方針を、オープンソースベースからフリーソフトウェアベースに変更する案」についての意見を、電子メールにて役員たちに問い合わせている。そしてSundaram氏の意見は、優先順位の1番目はExtrasリポジトリに対する監査ではあるが、ガイドラインに対する変更が不可能という訳ではないというものであった。「あり得るとすれば、現行のガイドラインに定められている“フリーおよびオープンソフトウェア”という点を改めて、“フリーソフトウェア”のみ(定義はFree Software Foundationのものに準拠)を許可するようガイドライン側を改訂することでしょう。より抜本的な変更をライセンスに施すとしても、その場合はコミュニティメンバからのフィードバックを取り入れた上で、公開の場で討論をしてから実施することになるはずです」

Sundaram氏が強く主張しているのは、以前からFedoraの開発陣が、ソフトウェア特許という呪縛に拘泥されないフリーソフトウェアのみで構成されたディストリビューションは実現可能であると考え続けてきたという点である。また同氏は、プロプライエタリ系ソフトウェアをディストリビューションから排除することは、デメリットよりメリットの方が大きいとしている。「ユーザとしても、権利問題のはっきりしたソフトウェアでまとめられたディストリビューションの方が、使っていて安心できるでしょう。各自のニーズに応じて、簡単にカスタマイズできるのですから。こちら側としても、問題箇所の対処が容易になりますし、課されたライセンスを遵守すれば必要なコードにアクセスできるので、サポート対象のアーキテクチャ間で移植をする際にパッケージ構成を変更せずに済むはずです。派生ディストリビューションを作る場合でも、それぞれの用途に応じた改変を自由に施せるようになるでしょう。コーデック類に関して言うと、Fedoraでは任意のオープン系コーデックが使用できますし、プロプライエタリ系のマルチメディアコンテンツを再生したい場合は、ユーザが追加コーデックを取得するだけのことです」

その一方で同氏は、最終的に何を使用するかはあくまでユーザの選択を尊重するという、Fedora側の姿勢を補足している。「自分はどうしてもプロプライエタリ系コンポーネントをインストールしたいというユーザもおられるでしょうし、それはユーザ自身が決めることであって、そうした行為を当方としては推奨はしませんが禁止する訳でもありません。例えばフリーソフトウェアによる統一化の一環として、GStreamerなどを用いてマルチメディアフレームワークを共通化しておけば、ユーザがその他のマルチメディア用コーデックを追加する際のインストールも簡単化され、即座にすべてのアプリケーション上で利用可能となるはずです。来るFedora 7ではCodec Buddyという新機能が実装される予定ですが、これは追加コーデックを必要とするコンテンツをユーザが再生しようとした際に自動的に起動するもので、従来のように意味不明なメッセージを表示する代わりに、該当するコーデックの取得操作を補助するための機能です」

Fedoraは依然として、メインストリームLinuxディストリビューションの1つに名を連ねている。デスクトップユーザに過度の負担をかけることなく選択の自由を広げるというのは、歓迎すべき姿勢だと言えるだろう。ただしこうした変更を、ユーザコミュニティが実際にどのような態度で受け止めるかは、また別の話である。

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