オープンソース形態による高可用性ミドルウェア開発を選択したモバイル企業連合

本年1月にMotorolaより設立がアナウンスされたLiMo Foundationという団体は、モバイルアプリケーション開発に用いるLinuxベースのエコシステムを関連各社の共同で整備しようという試みであるが、その形態は純粋なオープンソース型プロジェクトとは呼びがたいものであった。ところが今回Motorolaおよびその提携企業群は、OpenSAFというミドルウェア開発用の新規プロジェクトを立ち上げることで、真のオープンソース化にむけた新たな一歩を踏み出したのである。

OpenSAFプロジェクトの母体となっているのはService Availability Forum(SAF)で定められたアプリケーションインタフェース規格である。SAFとは通信コンソーシアムの一種であり、メンバとしては、Alcatel、MontaVista、Oracle、HP、IBM、Ericsson、Fujitsu、Motorolaなどが参加している。これらSAFの参加企業には、ワイヤレスサービスの安定接続に必要なすべての高可用性リソースのマネージメント用コアとして機能する、ミドルウェアレベルでのビルディングブロックおよび、ハードウェアに関する規格が提供される。

OpenSAFの活動目的には、ミドルウェアアプリケーションの導入と管理に必要な追加サービスを開発することだけでなく、SAF規格の発展を促進することも掲げられており、そのための手段としてOpenSAFプロジェクトによる成果を積極的に提言してゆくと、2月28日付のプレスリリースには説明されている。OpenSAFの設立メンバに名を連ねているのは、Motorola、Ericsson、MontaVistaなどである。

Motorolaのテクノロジマーケッティングの責任者を務めるJohn Fryer氏は、通信事業者が99.999%の信頼性を求める場合、こうした高可用性ミドルウェアこそが“クリティカルなコンポーネント”の1つになると発言している。そして規格としてのSAFは優れたものではあるのだが、Motorolaなどの通信事業者から見ると、そこには大きな問題点が潜んでいるということになる。「誰もが気づく問題点は、これが非常に複雑な規格であるということです。その必然的な帰結として、開発を進めるにはかなりの長期間を要することになります。私どもが構築したものも含めて、既にいくつかのソリューションは存在しているのですが、必要な機能をすべて網羅するレベルには達していません」とFryer氏は語る。そうした不足分を埋めるためのソリューションは個々の企業が独自に作成しようとしているのが現状であるため、「統一規格としてのSAFそのものが、雲散霧消する崖っぷちに置かれていた訳です」とのことである。

今回行われたOpenSAFの設立によってMotorolaおよびその提携企業群が意図しているのは、機能の欠落分を埋める作業を共同で進め、プログラムコードを公開するというものである。「業界をたばねるために選択したのが、統一された開発環境を整備し、オープンソース型プロジェクトで運営するという方式です。こうしたコンセプトを掲げることで、主力選手となる企業に参加を呼びかけてきました」とFryer氏は語る。実際、プロジェクトへの参加については、ライバル関係にあるNokiaなども「非常に乗り気です」と同氏は説明している。

Fryer氏によると、このプロジェクトで創り出されるソフトウェアは完全にオープンソース化されるが、BSDライセンスのようにOSIの認可を受けたものにはならないとのことだ。「こうしたコードは誰でも自由に使用でき、商用製品に組み込んだり、アプリケーション作成に用いることもできます。ただしGPLコードとは違い、コアとなる部分を変更しない限りという条件付きで、用いたコードを公開しておく必要はありません。成果の提言に関する義務は負わないという訳です。」Fryer氏は、同プロジェクトによる開発活動に他の通信事業者が参加することも歓迎はしているが、その主目的はあくまで規格を採用してもらうことにある、としている。「ある企業がこのミドルウェアを採用したとしましょう。そして、いつの日にか新規プラットフォームの開発が必要となる時期が、この企業にも必ず到来します。そこで使用されているミドルウェアは共通のものなのですから、その際に“標準化された既存のプラットフォームを導入する選択肢もあるので、独自開発は止めませんか”と持ちかけられる訳です。統一規格を採用してもらう1つのいい機会となるでしょう」というのが同氏の説明である。

Acuity Groupのジェネラルマネージャを務めるDan Kusnetzky氏も「OpenSAFというグループには、この業界の大手企業が多数参加しています。多数のベンダで採用されている規格というのは、開発およびサポートに要する経費を削減できるため、サプライヤ側にとってもいい話なのです」と語っている。

Fryer氏は、今回立ち上げられた新規プロジェクトを“刺激的”な試みだと表現している。「Motorolaにとって、オープンソース型プロジェクトに参加するというのは初の試みです。もっとも社内にオープンソース関係のテクノロジグループが1つ存在しているので、様々なアドバイスを得る上で非常に役立っています。」立ち上げが終了した同プロジェクトに対して同氏が期待しているのは、今後の速やかな成長だとのことだ。「2007年末には最初の成果をリリースできるものと予想しています」

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