ビジネスネットワーク作りのイベントを最大限に利用するための7つのヒント

 キャリアの専門家は、リーダーシップの養成と同様、ビジネスネットワーク作りのためのイベントへの参加は誰もがすべきことだと考えている。しかしそのような考え方には、誰もがマーケティング担当者や販売担当者たちと同じように社交的な性格であることを前提としているという問題点がある。この記事では、ビジネスネットワーク作りのイベントがIT技術者にも同様に役立つのかどうか、またそのような仕組みをどのようにIT環境に適用することができるのかを議論する。

 確かにネットワーク作りのイベントに参加することには明らかな利点がいくつかある。例えば仕事を探している場合には、ビジネスネットワーク作りのイベントに参加して人々に接触することにより、募集が広く一般に行なわれる前に新たな職の存在について知ることができる。また接触した人があなたが仕事を探していることを知って、そのような職に推薦してくれることもあるかもしれない。同じことはあなたがビジネスチャンスを探しているマネージャや企業である場合にも言える。さらに、接触した人から技術的な助力を得ることができることもあるし、何らかの専門的なテーマについてや仕入先に関するウェブサイトなど、便利な情報源を教えてもらうことができることもある。これらはすべて明らかな利点であり、また忙しい仕事の合間に社会性をもたらしてくれるものでもある。

 とは言え、おたく風の技術者とその上司が自分たちの性格に合っていない(あるいは必要性のない)アドバイスに従って、奮闘している姿を私はしょっちゅう目にする。しかしそのような努力をしても、自分たちの居心地が悪いだけでなく、接触しようとしている人たちの間での自身の評判を傷付けてしまう恐れもある。

 そこで以下に、平均的なIT技術者にとってのビジネスネットワーク作りをより心地好くより役立つものにするためのアドバイスを述べる。

直接会うネットワーク作りイベントが自分に向いているのかどうかを判断する

 ネットワーク作りのイベントに参加することの最大の問題点は、平均的なIT技術者にとって快適である範囲を越えていることも多い、性格上の特性が要求されることだ。適性検査のExtended DISCの北米支社長Markku Kauppinen氏によると、このことに関しては古い陳腐なステレオタイプ的な見方が、実は事実なのだという。すなわちIT技術職に付いている人々は、社会的スキルよりも、ディテール、問題解決、品質保証といったことをより重視する人たちが多いという傾向が実際にあるのだという。

 オフィスから出て人に会う(特に大勢の人と会う)ということは、マーケティング/販売担当スタッフにとっては自然なことかもしれないが、多くのプログラマにとってはおそらく苦痛をともなう活動だろう。苦痛とまでは言わなくても、そのような体験を切り抜けるために、自分を偽る必要があると感じているプログラマもいる。人との接触についてのストレスが通常は小さいと言われるオンラインでさえ、IT技術者は人との接触に時間を費やすよりも普段の仕事をすることを好むこともある。多くのIT技術者にとっては、ネットワーク作りのストレスやそれにより仕事が中断されるということは時間の無駄であり、本当に必要がある場合にだけ我慢するべきことだと考えているのかもしれない。

 ネットワーク作りに熱心な人たちはたいてい、自分のためになるのだから我慢すべきだと言うはずだ。ことによると私の知り合いのように、そのような最悪の状況を耐え忍ぶために人格を装うことも不可能なことではないし、あるいはイベントに最初から最後までではなく1時間だけの参加であれば我慢できるかもしれない。

 けれども並外れた居心地の悪さを感じる場合には、まったく出席しないのがおそらく得策かもしれない。結局のところ、憂鬱そうな、あるいはむしゃくしゃしている人と話をしようという人もそれほど多くいるわけではないのだ。不機嫌のままイベントに参加して嫌な人だという評判を得てしまった場合、まったくイベントに参加しなかった場合よりも害があることもある。

ネットワーク作りが自分に必要なのかを考え直してみる

 ネットワーク作りをする努力に意味があるのかどうかは状況次第だ。あなたがコンサルタントである場合には、ネットワーク作りは仕事上不可欠だ。例えば私自身のコンサルタントとしての経験から言うと、おそらくこの12年間の80%から95%の収入はネットワークのおかげで得ることのできた仕事によるものだと思われる。

 しかしその一方で、就職口を求めているわけではなく、企業の人事に影響する仕事を行なっているわけでもない場合には、ネットワーク作りはそれほど役に立たないかもしれない(もちろん先々のことまで考えておくというなら無視するわけにもいかないかもしれないが)。さらに言うと、あなたの上司があなたの会社のNDAをどう解釈しているか次第で、接触した人々が手助けをオファーしてくれてたとしても、そのオファーを受け入れることは少なくとも正式には禁止されている場合もある。

 そのような場合には、ネットワーク作りのためのイベントやウェブサイトなどというものは、あまり役に立たないだろう。マーケティング/販売担当の人々とは異なり、たいていのIT技術者には、自分の仕事を遂行するために人に会う必要はないため、同じ時間を費やすにしても、もっと大切なやるべきことがおそらく他にあるはずだ。

イベントに参加する前にネットワーク作りの集まりにどのような参加者がいるのかを確認する

 ネットワーク作りのための集まりは、マーケティング/販売担当の人々で占められていることが多い。このことは彼らが概して社交的な人々であり、ネットワーク作りのイベントに参加することが良いことだと信じていることを考えれば当然のことだ。しかし、まれにある例外的なケースを除くと、彼らはあなたのようなIT技術者と専門的な意見を交換できるような相手ではなく、またあなたが職を探しているときにあなたを雇うことのできる人たちでもない。あなたにとっても彼らにとっても時間の浪費になることを避けるために、ウェブサイトや口コミを通して、参加を検討しているネットワーク作りの集まりがどのような人々から構成されているのかを大雑把にでもあらかじめ把握しておくようにするべきだ。全員がIT技術者であるようなネットワーク作りの集まりを見つけることはなかなかできないかもしれないが、多様な人々から構成される集まりや、ITマネージャや自ら採用の決定を行なうことができる小規模な新興企業の役員がちらほら参加しているような集まりは見つけることができるかもしれない。それ以外の場合には、ネットワーク作りのための平均的なイベントから得られるものは、良くても社会的スキルの実地訓練の機会くらいかもしれない。

中途半端な取り組みは避ける

 非常に頑張ってもせいぜい中途半端な取り組みしかできないという場合には、むしろネットワーク作りをまったく行なわない方が良いかもしれない。恥ずかしがり屋で内気であることを自覚していて、本来の性格ではない外交的な雰囲気を無理に醸し出そうと試みている場合、あなたのことをまったく知らない人から見ると、偉そうで思い上がった態度という印象を与えてしまう恐れもある。

 一方、オンラインで中途半端な取り組みを行なった場合には、LinkedInのようなネットワーク作りのためのサイトに登録して、リンクを増やしたり受け入れたりすることにすべての時間を費やして、他のことは何もしないということになる。このやり方では何百もの名前を集めたネットワークを短時間で築くことが可能だが、その中の人たちといくらか接触することに時間を使わない限りほぼ無益だ。さらに悪いことにオンラインでは、ぶっきらぼうな態度を声や身ぶりで緩和することができない。そしてその証拠は古いウェブサイトやGoogleのキャッシュとしてその後何年間も残ってしまう。

 また最も重要なこととして、ネットワーク作りにおいて中途半端な取り組みをしていると、自分がやっていることの本質が見えなくなってしまうことがある。ネットワークというのは、お互いに助け合うためのものだ。つまり誰かがあなたにプラスになることをしてくれたのであれば、あなたもいつか彼らにとってプラスになることをすると期待されることになる。しかしもしこの基本原則を見失ってしまった場合、得ようとするばかりで与えることをしない人という評判がすぐに付いてしまうこともある。

 例えば私は以前、ある職に適した人を探している知り合いを助けたことがあった。私は彼のために時間を費やして人探しをしたのだが、その企業は結局ヘッドハンター経由で採用することにしたのだった。そのため私は、私の推薦でその職に応募した人に謝罪しなければならなくなってしまった。そのうえ、人を探していたその知り合いは私がそのような立場になってしまったことをまったく理解していないということがやがて判明した。またその後数ヵ月間、その知り合いからは誠意も責任感もまったく感じることができなかった。

 皮肉なことに、応募した人はその職に理想的と言っていいほど適任だったため、知り合いが上記の助け合いの基本原則に従い損ねたことで、すべての人にとってマイナスとなった。また、応募した人も私もこのような経験をしたので、もうその知り合いに関わろうとは思わなくなった。それどころか私たちは、その知り合いに対して私たちが抱く疑念をおそらく他の人たちにも伝えてしまうことになるだろう。もちろん悪意を持って、あるいは積極的にそうするということはないが、会話の流れの中で自然に伝わってしまうものだ。

量より質の出会いを選ぶ

 ネットワーク作りの専門家と言われている人たちがよく言うアドバイスに、集団見合いのように行なえというものがある。つまりすべての人と何分かずつを過ごして次々に相手を替えていくというやり方だ。しかし、本来はその後の長期的な情報交換や助け合いに基づく深い関係を築くことができたときにはじめてネットワーク作りが成功したと言えるのに対し、そのようなやり方では表面的な関係しか生まれないという問題点がある。そのようなやり方から得ることができるのは、どのような人からもらったのかをほとんど思い出すことのできない、数十枚の名刺のみだ。そしてそのような形でネットワーク作りをした相手も、やはり半年後にはあなたのことを思い出すことができなくなり、結果的にどちらも必要なら相手が連絡してくるだろうと考えてお互いの名刺を捨てるということになってしまう。

 そのような不自然なやり方をするよりも、自分に素直になって、自分の仕事の関心事について長い会話をすることのできる相手を探すようにするべきだ。この方法では、会うことのできる人の数は少なくなるかもしれないが、その中の多くの人たちと長期的に連絡を取り合って行くことができる可能性は、おそらくずっと高いだろう。

代わりにコンファレンスやセミナーに参加する

 ネットワーク作りを目的としたイベントに比べて、オープンソースやスクリプト言語といった技術寄りのテーマを中心としたイベントの方が、典型的なIT技術者にとって仲間を見つけることのできる可能性はずっと高い。なおコンファレンスではプログラミング関連のトラックを探すと良いだろう。またおそらく地元の大学や地元で広告を行なっているIT企業のオフィスなどでも、 小規模なセミナーが毎週のように行なわれているはずだ。

代わりにIRCやFOSSへの貢献をする

 おそらくあなたも、IRCチャネルにログインしたり、フリー/オープンソースソフトウェアプロジェクトにパッチを投稿したりすることをビジネスネットワーク作りとはみなしていないことだろう。しかし少し考えてみれば、「プロフェッショナルとして人々と知り合う」ということがどちらにも共通する活動であることが分かるはずだ。もちろんこの場合ネットワーク作りがあなたの主な目的ではないだろうし、そのような活動でのやり取りをネットワーク作りだと考えたこともないかもしれない。しかしそれでも、他の人の名前と彼らが持つスキルを知ったり、あなた自身の能力を実証したりしているはずだ。当然ながらオンラインでのやり取りでは直接会ったときのその人の印象を知ることはできないが、直接会って2時間話したときよりも、その人のプロ意識や働きぶりについてより詳しく知ることができることが多い。

 さらにオンラインでお互いについて知っているIT技術者は、直接に会ったことがまったくなくてもビジネス上の関係を築くことができる。例えば最近、いくつかの記事のために私がインタビューしたプログラマは、彼の持つ能力を必要としている雇用主を知らないかと私に尋ねてきた。メールのやり取りから彼は信頼できる人物だと思っていたので私は喜んで彼が応募しそうな勤め口をいくつか提案し、彼の能力を知り合いに売り込むこともできた。

 同様に、Bruce Perens氏による一時的なベンチャーキャピタルファンドが1999年にIan Murdock氏のProgeny Linux Systemsに出資した際も、最初のきっかけは、直接的に会ったことがあるからというよりは、Debianプロジェクトでの活動を通してお互いについてよく知っているからだった。

 これらの例が示すように、多くの人に信じられていることとは異なり、インターネット経由である程度の信頼関係を築くことは(お互いの公開鍵を使用しなくても)可能なのだ。

まとめ

 性格的に向いている人や非常に柔軟に対応できる人にとっては、ネットワークは貴重なビジネスツール/キャリアツールとなり得る。しかし多くのIT技術者のように、ネットワーク作りという考え方に心地好さを感じないなら、無理をする必要はない。

 ネットワーク作りについての一般的なアドバイスに盲目的に従うのではなく、自分の性格にどれほど合っているのかをよく考えてみよう。同様に、あらゆるネットワーク作りのためのイベントが有益であると仮定するのではなく、自分が最も快適に感じ、同志に会うことができそうなイベントを選ぶようにしよう。また、自分にとってはオンラインでのやり取りの方が直接会う形でのネットワーク作りよりも役立つ可能性があるということを認めよう。そうしなければ、自分が本当に快適に感じるものからどんどん遠ざかり、ネットワーク作りをしようとする努力が実際には有害無益なものになってしまうかもしれない。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalへ定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文