FCC、ソフトウェアラジオに関してFOSSの重要性を認めつつも非推奨

 今日SFLC(Software Freedom Law Center)がリリースした白書によると、SDR(ソフトウェアラジオ)に関するFCC(米連邦通信委員会)による新たな規制は、SDRデバイスを配布するハードウェアメーカに所属しないFOSS開発者に対して規制を行なうわけではないものの、セキュリティ問題を意識して「必要以上に保守的な」内容になっているという。

 SDR(ソフトウェアラジオ、Software Defined Radio)は、ソフトウェアラジオの「父」として知られるJoseph Mitola氏によって1991年に作られた言葉で、ハードウェアではなく主にソフトウェアで機能の制御を行なうワイヤレス通信デバイスのことを言う。SDRには様々な利点があるが、とりわけ使用開始後にも柔軟に設定の変更が可能であることから、通信パラメータが頻繁に変更される戦場などの危険地域での利用には理想的だとされている。現在、SDRは主に携帯電話やワイヤレスカードで使用されている。

 新しい規制は、連邦政府発行の官報上で先月発表され、今日から施行されるものだ。SFLCは規制を精査した結果、この規制は「デバイスにFOSSを使用しているかどうかには関係なく、SDRデバイスを配布するハードウェアメーカに適用される」ためFOSSに限定されたものではないと判断している。またSFLCは、規制の中で具体的にGNU/Linuxオペレーティングシステムが言及されていることから、FCCは実際にオープンソースの重要性を認識しているともしている。

 とは言え白書によるとFCCの認識はFOSSを力強く支持するものでは決してなく、「『オープンソース・コンポーネントに完全に依存する』システムには、承認プロセスの際、セキュリティの観点から厳しく審査すると明記されていることから、『SDRデバイスのハードウェア/ソフトウェアのセキュリティ・コンポーネント』においてFOSSを使用しないように推奨するものである」とのことだ。なおCNet Newsはこのことについて完全な「侮辱」だと表現している。

 100を越える企業メンバーがSDR技術の開発と採用の促進に取り組む、非営利組織のSDR Forumは先週、再検討の嘆願書(40KBのPDF)をFCCに提出した。嘆願書では、企業が「セキュリティの仕組み」をオープンに議論することを禁止するというFCCの公式な方針を変えることと、「オープンソースのアプローチによるセキュリティはそもそもその成り立ち故にプロプライエタリな技術のセキュリティと比較して劣るものではないため、FCCはオープンソース・コンポーネントのセキュリティに対して中立的な立場を維持するべき」であることが要求された。

 なお、この問題は完全に技術的なものというわけではなく、政治的な意味合いも含まれている。GNU Radio Projectの創設者であり主要開発者でもあるEric Blossom氏は以前より「ラジオの作成にフリーソフトウェアを使用するということは、一部の人たちにとってはやっかいなことなのだ」と指摘し、具体的にはアメリカ映画協会などとともにFCCの名前を挙げていた。

Shirl KennedyはDocuTicker/ResourceShelfウェブログの編集長。またInformation Todayの “Internet Waves” コラムも担当。1992年以来、技術関連の記事を執筆している。

Linux.com 原文