Samba、次期バージョンからGPLv3ライセンスに移行――Microsoftと特許契約を結んだ企業には深刻な影響が
Sambaの開発リーダーの1人であるジェレミー・アリソン氏は声明の中で、「Sambaチーム内で検討した結果、Sambaの将来のリリースにはすべてGPLv3およびLGPL(GNU Lesser General Public License)v3のライセンスを採用することにした」と説明する。
Sambaは、WindowsのSMB/CIFSネットワーキング・プロトコルのリバース・エンジニアリング版を使って、Windows以外のOSからWindowsに接続することを可能とするネットワーキング・ソフトウェアである。
同ソフトウェアは、Windows環境でLinuxとUNIXベースのOSを接続するための要であり、例えば「Mac OS X」上でファイル/プリント・サービスを提供する。
アリソン氏は、GPLv3が重要なのは、他のライセンスとの互換性を改善し、世界中で採用しやすくすると同時に、最近の脅威からオープンソース・ソフトウェア(いわゆる“フリー・ソフトウェア”)を保護する条項を持つからだと強調する。
「Sambaやほかのフリー・ソフトウェアの普及を促進するうえで重要な変更だと考えている」(同氏)
Sambaチームは、今後のリリースではライセンスの移行を明確にするため、バージョン表記を改め、予定していたリリース「3.0.26」を「3.2.0」に変更するという。バージョン「3.2.0」以降はGPLv3を採用し、「3.0.x」以前はGPLv2を残す。
この移行は、Microsoftとソフトウェア特許契約を交わした企業にとっては都合の悪いニュースとなりそうだ。GPLv3はそうした契約の裏をかく内容になっているからだ。
「2007年3月28日以降に交わされた特許契約が、GPLv3のセクション11に基づいて“差別的”と判断されると、同ライセンスとの完全な互換性を保証できない。また、その日付以降に特許契約を交わしたSambaディストリビューターは、GPLv3でカバーされるバージョンをまったく配布できなくなる」(アリソン氏)
影響を受けそうなベンダーとしては、最初にGPLv3条項を促したNovellとMicrosoftの提携にならって契約を交わしたXandrosやLinspireがある。
Microsoftは特許契約を交わした同社パートナーの中でGPLv3の条項に影響されるベンダーはないと説明しているが、業界筋の意見はまったく異なる。
アリソン氏によると、Sambaはライブラリ指向のLGPLv3も採用することから、ライブラリにリンクするプログラムが“GPLv2専用”ライセンスでライセンス供与されている場合、Sambaライブラリを使っている企業にも影響が及ぶという。
「LGPLv3の下でリリースされたライブラリをGPLv2専用コードで使いたい場合、コード上のライセンスを変更する必要がある」(同氏)
なお、「GPLv2以降」のライセンスを使っているプログラムはLGPLv3のライブラリにリンク可能だ。
アリソン氏によると、Sambaプロジェクトは常に以降のGPLバージョンに自動的にマイグレーションするためのオプションを使ってきたため、Sambaのコントリビューターはコードを今後も同じように提出できるという。
Sambaチームは、コードが広く使われているうちは、GPLv2バージョンのセキュリティ・アップデートを提供し続けるが、新機能についてはGPLv3対応バージョンしか開発しないとしている。
アリソン氏は、GPLv3の「反DRM(デジタル権限管理)」条項がSambaユーザーに影響を及ぼすことはないと見ている。
「GPLv3の新たなDRM条項に抵触するようなやり方でSambaを配布しているベンダーはないと思うが、もし疑問な点があれば弁護士に相談してほしい」(同氏)
(マシュー・ブールスマ/Techworld オンライン英国版)
Sambaのサイト
http://www.samba.org/
提供:Computerworld.jp