IBM、SOA/Webサービス関連技術の特許を開放――150以上の知的財産で特許権を不行使、ロイヤリティ・フリーのライセンス契約も不要に

 米国IBMは7月11日、同社が保有する知的財産の一部を、だれもが普遍的かつ永続的に利用できるように開放すると発表した。開放の対象となるのは、 SOA(サービス指向アーキテクチャ)やWebサービス関連の標準規格を実装する際に必要となる特許で、その数は150件を超えている。

 IBMによると、今回の試みは特許に関する同社の取り組みの中で史上最大のものだという。

 同社オープンソース/標準担当バイスプレジデントのボブ・スーター氏は、開放する特許について、「SOAの導入時などに使用されている、コア・インフラストラクチャ標準とでも呼ぶべき規格にかかわる技術」と説明した。IBMは、自社の特許を開放したことで、これらの標準規格を活用したソフトウェア開発が活発化するのを期待している。

 IBMが発表した対象標準規格リストには、SOAP(Simple Object Access Protocol)、SAML(Security Assertion Markup Language)、XML Schema、SCA(Service Component Architecture)や、WS-PolicyなどのWS-*系が含まれている。

 もちろん、これらの標準規格を策定したのはIBMだけではない。W3C(World Wide Web Consortium)やOASISといった組織が管轄権を握っているものも多い。だが、IBMがその発展に大きく貢献したことは疑いようのない事実だ。

 こうした標準規格とIBMの特許を併用する際、従来は開発者や顧客が申請書類を提出するなど、ロイヤリティ・フリーのライセンス契約を結ぶ必要があった。しかし、そうした契約も必要なくなるという。「すべての技術を簡単に実装できるようにすることがわれわれの目的だ」と、スーター氏は話している。

 IBMによる特許非係争声明には、開放の対象となる特許の利用条件として、「これらの標準規格を実装する過程で、必要となる特許が無断利用されたという理由でIBMおよび他社を訴えないこと」と記されている。

 これにより、例えばオープンソース・ソフトウェアの開発者などは、新しいプロジェクトを立ち上げる際に、IBMからライセンスを取得する手間を省けるようになる。もっとも、一部の開発者はこれまでもライセンスを取得せずに標準規格を実装していたと、スーター氏は語る。

 現在、IBMはおよそ4万件の特許を所有している。このうち、同リストに含まれる標準規格に関連した150以上の特許がすべて自由に利用できるようになった。

 調査会社Forrester Researchのアナリスト、マイケル・ゴールド氏は、IBMがこうした方針を採ったことでユーザーの懸念事項が1つ減ったと指摘する。同氏は、Sun MicrosystemsやMicrosoftなどがIBMの取り組みに刺激を受けることを期待している。

 今回の発表を受け、Sunのオープンソース責任者、サイモン・フィップス氏は、スーター氏のブログにコメントを寄せ、IBMのやり方に疑問を呈している。

「ボブ、おめでとう。よくやったね。ただ、1つだけ質問がある。なぜ特許の利用を『Necessary Claims(必要事項)』という枠に収めてしまったんだい? これだと、コードを記述したことで特許権を行使される可能性があるかもしれないと、開発者は不安に思うのではないだろうか」(フィップス氏が投稿したコメント)

 フィップス氏は、Sun自身も同様に特許の開放を宣言しているが、同社は特許の利用をNecessary Claimsには限定していないと述べている。

 一方、MicrosoftはIBMの声明に対する見解をまだ表明していない。

 IBMは2005年にも、500件に上る自社の特許をオープンソース開発者に開放した。その後、医療ケア業界や教育機関に対しても、同様に特許利用を認めている。

(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)

米国IBM
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提供:Computerworld.jp