WordPress用のスポンサー付きテーマの排斥宣言

 オープンソース系のブログ用プラットフォームとして最大の人気を博しているWordPressの創始者にして開発者であるMatt Mullenweg氏から「スポンサー付きテーマはthemes.wordpress.netからすべて排除すべし」という単刀直入な勅令が発せられたのは、7月21日から開催されるWordCampコンファレンスを前にしての出来事であるが、これはWordPressコミュニティで広範な支持を得た上での宣言である。

 今回の一件と直接関連したニュースとしては、有名なWeblogToolsCollectionブログにおいて今後スポンサー付きテーマを扱わないとした、7月10日付けのMark Ghosh氏によるアナウンスがある。その際に同氏が引用していたのが「とあるテーマ関連のブログ」にて以前に掲載された記事であり、「これを読み終えた私は非常に後味の悪い思いをしました」というコメントの後、この問題に関する詳細な検討が述べられている。つまりここで引用されたテーマ制作者は、自分の作ったテーマのフッタにはスポンサー付きリンク権を2つオークションにかけてあるので、このテーマをダウンロードして使用する人間はこのリンクを削除したりしてはいけない、と述べていたのである。

 この投稿記事に対するGhosh氏のコメントは、下記の通りである。

スポンサー付きテーマをダウンロードして自分のWordpressブログにインストールした場合、これらのスポンサーは、単にあなたのブログのフッタ上に自社へのリンクが表示される露出効果を得るだけでなく、そうしたブログに対するGoogle PageRankにも寄生することになるのです。とは言うものの、スポンサー付きテーマを使用するのも、そのリンクを自分の構築するページの下端に残し続けるのも、すべてはテーマを利用するユーザの判断です。

 ところで、スポンサー付きリンクとは何なのであろうか? その辺の説明はSassy Lawyerというブログに上手くまとめられた記事が掲載されているので、これに目を通せば何が問題となっているのかの概要を大方推し量ることができるだろう。

これはある意味必然だったと言えるのでしょう。SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)の“専門家”達は、フリーのWordpress用テーマのフッタにリンクを配した結果として、ページランキングにおけるこの種のWebデザインサイトの順位が跳ね上がったことに着目し、この現象を利用すればスポンサーとなるクライアントの関心を引くことができることに気づいたのです。クライアントからすれば、これは実質的に無料広告に等しい存在です。経費的に見れば、様々なサイトで自社の広告用リンクを掲示してもらう代わりに、特定のWebデザイナに資金を提供し、広告サイトへのリンクをフッタに組み込ませて、それをフリーのWordpress用テーマとして公開させればいいのですから。結果的に、このテーマを選択したWordpressユーザの構築するすべてのブログ上において、自社の広告を実質無料に近いコストで展開できることになります。

 現状では数百ものWordPress用テーマが流通されている。それでもなお自分の好みにあったものが存在しない、あるいは自分のブログには独自のルック&フィールを付け加えたいという時は、自分でオリジナルテーマを作成することも自由に行える。ただしその中にスポンサー付きリンクが含まれている場合、それはもはやWordPress ThemeViewerに歓迎されるものではなく、今後はWeblogToolsCollectionに掲載されることもないということである。

 こうした問題は、今回WordPressにおいて新たに発生したというものではない。1つの転機を迎えたのはMullenweg氏がこの4月にWeblogToolsCollectionのブログにこうした問題を詳しく解説した記事を投稿したことであり、スポンサー付きテーマをWordPress.orgから排除すべき否かを問う投票をWordPressコミュニティに対して呼びかけたことであった。同氏はこの投稿記事の中で、スポンサー付きテーマの背景に潜むコンセプトを説明し、そこでの結論として「デザインとテーマを主題とした私たちのコミュニティは、広告付きテーマが出現する前も順調に運営されており、これらが存在しなくなっても同様に上手く立ちゆけるでしょう。広告付きテーマはユーザの意向を無視しており、何が安心して利用できるテーマであるかを分からなくさせているのです」と述べていた。

 このニュースを聞いて「何を些細なことで騒ぎ立てているのか」と思う方もおられるだろうが、WordPress用のスポンサー付きテーマは既に1つの確固としたビジネスモデルとなっており、マーケティング業者やブログやテーマの作成者における収入源としての地位を確立しているのである。

 そして簡単に予測できるように、この件に関しても感情論が高ぶっており、その影響は双方の陣営に及びだしている。ブログ作成プラットフォームとしてのWordPressが爆発的に普及し始めたのは2004年のことであり、当時はSix Apartが同社のMovable Typeプラットフォームに関するライセンス条項を変更し、これが結果的にユーザの離脱を招いてWordPress人口を増やすことになっていた。ダウンロードするだけで実装可能というユーザフレンドリなテーマをここまで大規模に提供しているブログ作成プラットフォームは、現在に至るも他に存在していない。例えば、1年を通じてブログの外観を毎日変更するということも、その気になれば簡単に行えるのだ。

 いずれにせよ、こうした動きに反して“私は是非ともスポンサー付きテーマを使いたい”という人間にとっては、WordPress ThemeViewerやWeblogToolsCollection以外のサイトを探さなければならない時代が到来したのである。

Shirl Kennedyは1992年よりテクニカルライターとして活動しており、現在はDocuTickerおよびResourceShelfウェブログのシニアエディタを務め、Information Todayの「Internet Waves」コラムにも寄稿している。

Linux.com 原文