Linuxユーザの多くが複数のOSを併用していることを示す調査結果

 最近私は、Mac OS X 10.4を搭載したMacBook Proを会社から支給された。このプラットフォームを選択したのは、Linuxでは使用できないアプリケーションを業務で使う必要性を考慮した結果である。実際、私がLinux以外のプラットフォームも使い出してからかなりの年月が経っており、こうした異種プラットフォームの混用状況については常々気になっていたところである。そこで今回私は、Linus Torvalds氏といった著名なLinuxユーザを含めて、非公式な世論調査をしてみることにした。各自のプラットフォームをどのような形態で使用しているかを、私の使用状況と比較するためである。

 私がMacBook Proを選択した理由は、以前使っていたLinux版よりも高機能なビデオ編集用ソフトウェアを必要としたためである。MainActorは今では販売されていないが、それは親会社がコーデック開発を主軸にするよう方針転換をしたからだ。Kinoプロジェクトは未だ健在で改訂作業も継続されてはいるが、残念ながら商用製品に比肩するだけの完成度には達していない。Windows用のオプションを選ばずMac用のFinal Cut Expressにしたのは、同僚からの推薦があったことと、Microsoftに対する不信感が定着していたためである。

 今回の調査では、地元のLUGメーリングリストに参加しているメンバに協力してもらい、下記の質問に回答してもらった。

Linuxをメインのプラットフォームにしている方々に伺います。

  1. WindowsやMac OS Xも使用していますか?
  2. 使用している場合、どのような用途に使っていますか?
  3. 使用していない場合、これらのプラットフォームを利用する以外に目的とする作業(例えば特定のゲームなど)が行えないという場合はどうしますか?

 またこのメーリングリストのメンバ以外にも、Linus Torvalds氏などの広く名の知られたユーザ数名に直接質問状を送付している。そして得られたのが、以下の結果である。

 回答して頂いた21名のユーザのうち約3/4がWindowsも使用しており、主として業務目的に使っているとのことであったが、その他の用途としては、ゲーム、写真編集、PDAとの同期、OCRが挙げられており、中にはテキスト編集という回答もあった。

 同様にMac OS Xを使用しているユーザ数は約1/4であり、これも業務目的での使用がメインであった。1つ意外だったのは、Linux以外は使わないとしたユーザ数が15パーセントに達しなかったことである。

 この結果から分かるのは、このグループのメンバは政治的や哲学的な理由があってLinuxに固執するというのではなく、各自の求める要件を満たすプラットフォームを使うという、実用主義的な傾向を示していることである。

 その一方でLinux純粋主義者的な回答が得られたのは、やはりLinus Torvalds氏からであった。「私はどちら(WindowsもMac OS X)も使っていません。OS Xを使う必要性はありませんし(そこで行える作業の大半はLinuxの方が上手く行えます)、Windowsで提供されているもので私の興味を引くものはありません(主としてゲームですが、そうしたゲーム用のマシンはいくつも持っています)」

 その対極に位置するのが上級ハッカーのH.D. Moore氏で、同氏はWindowsおよびMacプラットフォームを定期的に使用しているが、それはMetasploitによる貫入試験を施すためだとのことである。この件について同氏は「Windowsを仲介したLinuxマシンへの攻撃を検証するのにWineを使うのはバカげています」と説明している。

 ベテランLinuxユーザの1人であるJohn Dierdorf氏からは、WindowsとLinuxの混在環境をどのように運用しているかの解説が送られてきた。

KVMスイッチを介してメインのLinuxデスクトップマシンと1台だけ所有するXPマシンとを接続し、作業に応じて切り替えていますが(同時に併用する場合もあります)、特に大きなトラブルに遭遇したことはありません(機械的にも精神的にも)。ハードディスクはSamba経由で共有させています。具体的な作業としては、写真の編集はXP側で行い、写真のWebページへの組み込みや電子メールでの送付はLinux側で行うという使い分けです(XPマシンにはメールクライアントはインストールしてなく、ブラウザも緊急時の予備として置いてあるだけです)。多くのオープンソース系プログラム(Emacs、Vim、OpenOffice.org、Firefox、Perl、ImageMagickなど)は、両方のマシンで使っています。また各マシンを他方のバックアップ先に使っており、WinファイルをLinuxマシン側にコピーし、その逆も行うというようなバックアップを行っています。

 今回の調査は回答者数が25にも達しておらず、とても正確なサンプリングに基づいているとは言い難いが、多くのLinuxユーザは排他的にプラットフォームを選択しているのではなく、各自の必要に合わせて柔軟な選択をしていると結論してもいいのではないだろうか。また敢えて言うならば今回の調査結果は、かつてのプラットフォーム選択が、Windowsであれ、Linuxであれ、Appleであれ、実質的な二者択一であった10年前からの時代的な変化を示しているとも見なせるだろう。それはおそらく、コンピュータ消費者の成長を示しているはずである。

 私が入手したMacBook Proは、不良問題が発生していない訳ではないが、ハード的には悪いものではない。そこで現在はこのマシンをネイティブUbuntuとOS Xのデュアルブート対応にしようと作業を進めているところであり、これがうまく行くと、ビデオ編集を必要としない出張中には、通常の業務時とは異なる自分好みのプラットフォームで作業ができるようになっているはずである。

Linux.com 原文