Songbirdオーディオプレーヤー:有望だが改善が必要

Songbirdは、Mozillaをベースとする野心的なクロスプラットフォームのミュージックプレーヤーだ。まだ開発の真っ最中だが、2006年に0.1リリースをレビューしたときと比べ、長足の進歩を遂げた。現在のSongbirdは実に甘美な声を聴かせる。ただし、一流の仲間入りをするにはインタフェースに磨きをかける必要がある。

 最新リリースの0.25は、Linux版、Windows版、Mac OS X版がダウンロードできる。Linuxビルドには、32ビットと64ビットのIntelアーキテクチャ対応版がある。メディア・バックエンドとしてLinux版ではGStreamerが使用されるが、Mac OS X版とWindows版ではVLCが使用されるため、適切な依存ファイルがあらかじめインストールされているか確認が必要だ。一般に、最新のFirefoxを実行できるLinuxシステムではSongbirdも実行できるだろう。

 危険をいとわなければ、SongbirdのNightly Buildを試すことや、ソースコードを入手して自分でコンパイルすることもできる。こういった試験バージョンには新機能が含まれている可能性がある。Songbirdには既に”エンドユーザ”向けのリリースがあるが、0.3を前にして多くの作業中の変更点がある。

 手っ取り早く始めるには、使用するアーキテクチャ向けの基本バイナリをダウンロードする。gzipのアーカイブで提供されているので、これをファイルシステムのどこかに展開し、実行できる。展開されたSongbirdディレクトリに移動し、「./Songbird &」と入力して起動する。

聴けるものが得られるもの

 Songbirdと私の出会いは最初の一歩からつまずいた。メインウィンドウが表示されたが、すぐにそれを覆い隠す形でファイル選択ウィンドウが表示されて、ディレクトリの選択が求められたのである――何のためか、その理由を示さずに。幸い、このウィンドウをキャンセルしても問題は起こらず、正しい進路に戻ることができた。

 自動検索機能でオーディオファイルを探し出し、見つかったすべてのファイルにインデックスを作成するか、監視対象とする複数のフォルダを手動で指定できる。フォルダをあれこれと指定してみたところ、Songbirdは目を見張る速さでスキャンし、フォルダのコンテンツにインデックスを付けた。まったく同じコンテンツにAmarokやRhythmboxを使った場合とは段違いの速さだ。

 少なくとも、見た目は。真相を明かせば、Songbirdはインデックス作成を完了する前に[Library]ミュージックブラウザのウィンドウに切り替えるのだ。トラックをランダムに読み込んでいるらしいが、その処理が終わったかどうかはいっさい通知しない。インデックス作成がまだ実行中であることを示すプログレスバーは表示されないが、それから2時間にわたって5分おきにアーチストの名前が2人ずつソング・ブラウザに現れ続ける。インデックス作成が終了したと判断するには、[Artist]列と[Album]列の合計値を自分の記憶と照らし合わせるしかない。

 再生の品質自体は完全だった。まさにGStreamerベースのプレーヤーに期待される品質である。トラックのランダムな位置にジャンプしても、再生が途切れたり、不快な金属音がすることはなかった。テストしたのはMP3、Vorbis、AAC、FLAC、WMAの各ファイルだが、どれも音質はすばらしく、読み込みは迅速で、しかもトラック番号などのID3タグも認識された。WAVファイルを再生できないのはがっかりだが、サポート対象ではないので仕方ない。マニュアルの説明によると、Windows版とMac OS X版のSongbirdは、iTunesがコンピュータにインストールされている場合にiTunes Storeで購入した暗号化トラックを再生できるらしいが、これに該当するトラックが手元になくテストはできなかった。

デフォルトのRubberduckyスキンを使った状態のSongbirdのインターフェイス。左側のペインには、あらかじめいくつかのブックマークが用意されている。これらの記事には、たくさんのユーザーインターフェイスに言及した解説が見つけられる。たとえば、ボタンの変更、ブラウザの中で再生トラックがハイライトされないこと、このアプリケーションが自身のウィンドウマネージャコントロールで描画されていることがある

 再生の品質に問題がない代わりに、アプリケーションがまだ完成していないことがよくわかる、細かい不具合がたくさんある。FLACファイルのメタデータにインデックスを付ける機能が働かなかったが、[File]メニューを使ってファイルを手動で開くとトラックは正常に再生され、その後で[Library]ブラウザにファイルが表示された。[File]メニューから開いたFLACトラックの再生が終了すると、フォルダにある次のファイルが再生された。しかし、同じトラックを[Library]ブラウザでダブルクリックして再生した場合は、次のトラックが再生されない。

 さらに注意が必要なのは、現在のトラック名がウィンドウ上部の擬似LCD”前面パネル”に表示されるのに、ブラウザではトラックが強調表示されないことである。現在のトラックにジャンプするボタンは、現在のトラックが既に画面に現れているときにしか機能しないらしい。また、[Copy to Device](デバイスにコピー)ボタンと[Burn CD](CDに書き込み)ボタンはまったく機能しないようだ。

 また、トラックの再生中に[Library]ブラウザで別のアーチストやアルバムに切り替えると、ランダム再生やリピート再生のコントロールの状態とは関係なく、再生中のトラックが終わると再生が停止する。

 Songbirdがミュージックプレーヤーとして常用に耐えられるのか疑問に感じる人にとって、こういった不具合から導き出される答えはノーである。とはいえ、待ちながらSongbirdの小粋な機能を楽しむことはできる。

自分のハードディスクよりも多くの音楽がWebにある

 ジュークボックスをまた1つ増やす機能のほかに、SongbirdにはWebブラウズの機能が統合されていて、これが魅力的な音楽ソースを提供する。最も単純なケースでは、この機能を使ってMP3ファイルとShoutcastストリームへのリンクをページから抽出できる。これで、静的なHTMLページ、RSS対応ブログ、検索エンジン、オンラインストアなど、さまざまなサイトから音楽を自動的にリストアップできる。

 オンラインストアのような複雑なケースでは、通常のWebブラウザを通じて承認と支払い処理を行う方法がよく使われている。ここでは、SongbirdはFirefoxやその他のMozilla系ブラウザと同じように動作する。唯一の違いは、トラックを購入すればすぐにわかる。Songbirdはトラックをダウンロードし、ライブラリにすぐに表示して再生できる状態にする。ブラウザとミュージックプレーヤーを個別に使う場合よりもクリックの回数は数回少なくなり、大量に音楽を買うならこの違いは意味がある。

 Songbirdで検出されたWebミュージックファイルは、[Web Library]リストに自動的に追加され、インデックスが付けられるが、ダウンロードはされない。コンピュータのフォルダと同じ感覚で[Web Library]リストにアクセスして、ファイルをダウンロードしたり、ダウンロードしないで再生したりできる。非常に便利である。

 現在のビルドのSongbirdでは、20を超えるサイトへのリンクがあらかじめサイドバーに設定されている。その中には、Amazon.comのような営利サイトからCreative Commonsのようなフリーのリソース、さらには音楽中心の個人ブログまでが含まれる。ただし、サイトのカテゴリ分けは意味もなく複雑で恣意的に感じられる。用意されたカテゴリは、[Bookmarks]、[MP3 Blogs]、 [Searches]、[Music Stores]、[Radio]、[Network Services]、[Network Devices]である。すべてのリンクはWebページを指していて、コンテンツはまったく同じに扱われる。ある独立系のミュージックサイト(Ninjam)を[Network Services]フォルダに入れ、同類の別のサイト(Elbo.ws)を[Searches]フォルダに入れているが、これが何の役に立つのだろうか。

インストーラとユーザインターフェイスに苦言:1998年に逆戻り

 最大の問題点はインターフェイスである。冒頭で触れたとおり、Songbirdを初めて起動するとファイル選択ウィンドウが表示される。選択したファイルが何に使われるのか、説明はない。ミュージックファイルをスキャンするディレクトリを尋ねられているのか、それともミュージックライブラリを保存するディレクトリを作成するかどうかを尋ねられているのか。私のファイルライブラリは大きい。説明がなければ、Songbirdがファイルを検出してコピーを作成し、自動的に”管理”するつもりなのかもわからない。オーディオライブラリを丸ごと複製するなど、音楽好きは狂気の沙汰だと思うだろうが、このようにディスクを湯水のごとく使うやり方は、忌々しいことにフォト管理アプリケーションでごく普通のことだ。ディレクトリをどうするのか説明する簡単なダイアログボックスを表示するだけで、この問題は解消される。

 私はファイル選択ウィンドウをキャンセルし、数分を費やしてインターフェイスのあちこちを行ったり来たりした。見たところ、先ほどの気の早いウィンドウは、ミュージックファイルの検索を開始する場所を指定するためのものらしい。インタビューやポッドキャスト、効果音、その他もろもろにインデックスが付けられるのは願い下げなので、このオプションはスキップした。これ以外の組み込みオプションを選択するインターフェイスが用意されていないので、コンテンツディレクトリは個別に手動で指定した。

 FirefoxやMozillaと同様に、SongbirdもXULアドオンを使って拡張できる。インストーラを起動するとお勧めの拡張機能のパレットが表示されるが、何をする拡張機能なのかこれも説明がない。拡張機能のインストールにはセキュリティリスクがともなうため、何を選択しているのかユーザに説明しないのはまずいやり方だ。

SongbirdのビルトインWebブラウザ。ネイティブUIウィジェットにあるClassicスキンを表示したところ

 AppleのiTunesが大成功を収めた結果、他のオーディオプレーヤーはiTunesのインターフェイスを真似ている。しかし、大勢が使っているからiTunesが優れている、とは言えない。Songbirdの左端にある垂直の列にはブックマークされたWebサイトが表示される。ローカルとリモートのコンテンツへのリンクなどがここにある。この列は狭く、スクロールできない。横書きのテキストがこの列を埋めている。まあまあの長さのリストでもはみ出してしまうので、手動で追加するときはテキストを省略して短くする必要がある。あらかじめ設定されたブックマークでさえ、一部は長すぎる。

 Mozillaテクノロジを自由に使えるのだから、水平タブを使ってコンテンツソースを区切るべきである。そうすれば、ひょろ長い垂直の列がいらなくなるばかりか、メインウィンドウのコンテンツペインをジグザグに並べる必要もなくなる。開発者がしっかり取り組めば、アプリケーションのボタンを整然としたレイアウトに再配置できる。ランダムモードのボタンのように2つの状態を切り替えるボタンと、特定のアクション([Burn CD]、[Jump to Current Track]、Webブラウザの[Back One Page]など)を実行するボタンが、ウィンドウの4か所に散らばっているのが現状だ。

 別の問題もある。メインの再生関連ボタンに使われているアイコンが間違っている。[Fast Forward](早送り)アイコンをクリックすると、次のトラックにスキップしてしまう。このボタンには別の標準ボタンがある。Songbirdはこれを使うべきだ。同じことは”現在のトラックの先頭に戻る”ボタンにも言えて、これには巻き戻しのアイコンが使われている。これも変だ。

 組み込まれているテーマ(Songbirdのメニューでは”feather”(フェザー)と呼ぶ)は、見栄えのために使いやすさを容赦なく犠牲にしている。固定サイズのフォントが使用され、ウィンドウマネージャには独自の装飾が加えられている。どちらもアプリケーションとそれ以外のデスクトップとの一貫性を壊すものだ。また、固定サイズのフォントがかなり小さいのは、幅が固定された垂直の列に押し込むための苦心の表れかもしれない。だとすれば、1つの誤りを糊塗するために、もう1つの誤りを犯したということだ。

 システムのウィンドウマネージャ・フレームとボタンを削除し、カスタマイズできない小さなFreedesktop非準拠のフレームとボタンに置き換えたことは、言い訳の余地がない愚挙である。デフォルトのウィンドウマネージャのコントロールとボタンに戻そうとするテーマもあるが、これは壊れている。メニューの配置はがたがたで、正しい色が読み取れないため、白い背景に白いテキストが表示されるなど惨憺たる有様だ。

 さらに、組み込みのテーマはどれもコントラストが極端に低い(黒い背景にダークグレイの文字とか、白い背景にオフホワイトの文字といった具合)。これだけでも1つの問題だ。おかげで、私はユーザビリティとデザインの新しい法則を思いついた。「クールなルックスは使い勝手の敵」とでも言おうか。XULを使ってテーマを適用できるので、誰かがまともなテーマを作成してくれるだろうが、それまでの間Songbirdは、開発者の経験がスキン対応UIのWinampの初期にプロジェクトに携わったコーダー並みであることを示す小細工だらけの証拠品のままというわけだ。

 最後になったが、Songbirdはロゴマークをこれと決めていないらしい。再生中の前面パネル、[バージョン情報]ダイアログボックス、Webサイトのトップには同じロゴ(小鳥のシルエット)が使われているが、Webサイトの他の場所、宣材、資料には子供っぽい、プロが描いたとは思えない素人じみた空疎なイラストが見られる。また、アプリケーションのアイコンには卵が描かれている。

まとめ

 Songbirdが自らに課した目標は見上げるほど高い。オーディオプレーヤーの市場は高度に飽和し、フリーと非フリーの両方のデスクトップには大物が磐石の構えだ。しかし、Mozilla Firefoxを世界最高のWebブラウザに成長させたフリーソフトウェア・コミュニティは、音楽アプリケーションでも同じことができる。

 Songbird 0.25の技術的な土台はすばらしく、Webに統合されたインターフェイスは考え抜かれている。この点はMiroに比肩する。Miroは、単によくできたビデオプレーヤーというだけでなく、他のアプリケーションから乗り換える十分な理由になるほどの体験をユーザに提供する。そういった異体験を生み出す可能性を秘めていることが、Songbirdの本当の強みである。

 だが、現在のバージョンを見ると、デザインの決定においてiTunesとWinampにならうことを進んで選んだことで、評価は大幅に後退する。Songbirdは、iTunesとWinampの過ちを併せ持っている。両者を模倣したプレーヤーを作ることは、Songbirdの成功のチャンスを台無しにする確実な方法である。慣習にとらわれない発想が、Firefoxにタブブラウザやブックマークレットなどの革新をもたらした。Songbirdが過去に拘泥することをやめ、並外れた可能性を伸ばすことを私は願う。

linux.com 原文