将来が期待されるSAM Linux Desktop

  SAM Linux Desktop は、PCLinuxOSを基礎としてその上にXfceを載せたディストリビューションだ。現代的で完備したデスクトップ・オペレーティング・システムを目指している。他のディストリビューションと競うにはまだ解決すべき課題が多いが、インストールが容易で、3Dデスクトップ環境と必要なプログラムを多数備えている。

 SAMのインストール・イメージは、実のところ、インストール可能なライブCDだ。だからまず起動。その際、F3キーを押してキーボード・レイアウトを変えることができる。試しにDvorakに変えてみると、X用の設定と同じように、Dvorakシステム・キーボードのレイアウトも正しく設定できた。ほとんどのディストリビューションはいずれか一方の設定は可能だが、両方というのは珍しい。SAMの起動後、デスクトップにあるリンクからインストーラーを実行した。手順は簡単でわかりやすい。途中、簡単な質問がいくつかあるので答える。メモリーを512MB搭載したSempron 2800のPCの場合、およそ7分でファイルのコピーが終わった。このインストーラーで感心したのは、些細なことかもしれないが、キーボード・レイアウトの選択画面に我がDvorakがあらかじめ設定されていたこと。起動時に選択したのだから当然の帰結ではあるが、ほとんどのインストーラーはこうした配慮をしてくれない。

sam1_thumb.png
SAM desktop

 インストールしたシステムを起動し、素っぴんのXfceデスクトップをロード。デスクトップにあるInstall Video Driverのショートカットを実行した。コンピューターに装着してある我がビデオ・カード(Nvidia GeForce 7300GS)は自動認識されず自分で指定する必要はあったが、ドライバーは自動的にインストールされ、Xを再起動するよう指示してきた。そこで、Activate 3Dショートカットを実行してCompiz-Fusionを全開にしてからXを再起動しログインした。だが、「SAM Linux Menuがロードできませんでした」というエラー・メッセージが表示され、実際、左下のSAMメニューは機能しなかった。おまけに3D効果も皆無。そこで、ネイティブ(我がビデオ・カードをサポートはしていたが)の代わりにxglを使って再度試みた。今度はログイン時のエラー・メッセージは出なかったが、デスクトップの時計が表示されず、表示されるはずの場所には灰色の四角があるだけ。スイッチング・デスクトップなど、一部の3D効果は生きているが、遅くて使い物にならなかった。

 そこで3D効果を無効にしてから、若干のトラブルシューティングを試みた。まず、Install Video Driverを実行してみたが正常にドライバーをインストールできたというメッセージは表示するものの、実際にはそれらしき動きは何もない。xorg.confを見てみると、vesaドライバーをロードするよう設定されていた。どうやら、このスクリプトは構成を変更してくれないらしい。そこで、nvidiaに変更してみたが、今度はXがスタートさえしない。次に、NvidiaのWebサイトに行き、我がビデオ・カード用のドライバーをダウンロードし自分でインストールした。正常にインストールできたので、3D効果を有効にしてみると、これも動いてくれた。もっとも、時計は相変わらず四角い灰色のままだが。

sam2_thumb.png
SAM 3D

 ようやく動いたCompiz-Fusionだが、これには本当に驚いた。信じられないほどの視覚効果があるのに使用感は低下せず、システムが大きく遅延することもない。付属のスクリプトがドライバーをインストールしたというメッセージを表示したのに自分でドライバーをインストールしなければならなかったのは残念だが。

 しかも、gXineでビデオを再生するときに発生していた緑のベールとひどい遅延も消失した。あらゆる種類のコーデックを用意するのも結構だが、そもそもビデオ・ドライバーがなければまともなレンダリングはできないのだ。

 次に、デフォルトのオーディオ・プレーヤーExaileを使ってみた。我がMP3コレクションは人並みの10,000曲程度だが、それでも動作がきわめて鈍く、特にプログラムの検索とロードはどうにもならない。そこで、Audaciousオーディオ・プレーヤーが含まれていたのを幸いに、こちらを使ってみた。このプレーヤーはBeep Media Playerの派生製品、つまり、XMMSの孫に当たる。

 XMMSで問題が発生した経験はなかったので、孫のAudaciousも動くだろうと思ったのだが、スクロール・バーが正常に機能しなかったのにはがっかり。バーが上下方向に動かず、スクロールでしか曲を変えられない。想像できるだろうが、多くの曲を飛ばしてしまうのは愉快なことではない。検索は期待通りに高速動作したが、概して言えば、従来の正常に動いていたXMMSが懐かしい、という印象だけが残った。

 一方、オフィス・プログラムについては、AbiwordGnumeric、NoteCase、Orage、PDFeditが用意されているが、定番のOpenOffice.org(OOo)はない。Abiwordは私のお気に入りだから、総量を抑えるためにAbiwordを選んだとSAMを責めるつもりはない。しかし、SAMをインストールしただけのこの状態ではPowerPointのファイルが扱えないため、私の場合、いずれにしてもOOoをダウンロードすることになる。おそらく、ほとんどのホーム・ユーザーはオープンソースのPowerPointプレゼンテーションを必要としないだろうが、OOoをインストールすれば、汎用ワープロもスケジュール・ソフトウェアもそろい、家計管理もできるのに。

 このほか、デジタル・カメラとスキャニングにはGTKamXsaneが、ベクター・グラフィックスとビットマップ・グラフィックスにはInkscapethe GIMPが用意されている。時間つぶしのゲームも多い。Streamtunerでインターネット・ラジオのストリームを受信し、Gripで曲をディスクにコピーし、そのディスクの破損に備えてGnomeBakerでバックアップを作ることができる。おしゃべりがしたければXChatPidginSkypeが、RSSフィードで最新情報を知りたければLifereaが、絶やさずに連絡したければClaws Mailがある。PuttyTightVNCでリモート接続することもできる。デフォルトのブラウザーはFirefoxだが、Dilloもあるし、Wineは設定済みだ。

 以上、SAMを試用してみたが、その過程でいくつかの障害に遭遇した。今回は見つからなかった問題もあるだろう。だが、こうした問題にも関わらず、SAMは比較的構成しやすく、使いやすいデスクトップ・システムだと思われる。ほとんどのホーム・ユーザーにとって、すぐ使えるプログラムがたくさんあるのは嬉しいだろう。しかも、CD 1枚だ。

 SAMのバグがすべてなくなるのはまだ先のことだろうが、今現在でもダウンロードして試用してみる価値はある。

Preston St. Pierre フレイザー・バレー大学(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)の学生。専攻はコンピューター情報システム。

Linux.com 原文