WindowsのゲームをLinuxで楽しむ PlayOnLinux

 熱烈なゲーム・ファンの中には、自分が普段使っているLinuxコンピューターをデュアル・ブートにしてWindowsも動くようにしている人が多い。ゲームの最新作はWindows用が先に出ることが多いからだが、LinuxでもWindowsゲームが動くとしたら、彼らはどうするだろうか。実は、 PlayOnLinux を使うと、数多くのWindows専用ゲームをLinuxにインストールして楽しむことができる。このPlayOnLinuxはPythonスクリプトを使ったオープンソースのフロントエンドだが、それ以上の機能を備えているすぐれものだ。

 PlayOnLinuxの本体は、WindowsプログラムをLinux上で動かすための互換レイヤーWineだ。ならばWineを直接使えばよさそうなものだが、Wineは必ずしも使いやすくない。そもそもコマンドライン・プログラムであり、Wineが作るWindows環境やそこで動かしたいプログラムの設定を調整する作業は、コマンドライン・オプションでしか実行できない複雑な作業だ。そこで登場するのがフロントエンドPlayOnLinux。Windows用のゲームやアプリケーションをインストール・管理・削除する際に必要となるWineオプションはほぼ網羅している。

 試用のため、インストール可能なFedora Live Games Spinを使って作成したFedora 8システムに、PlayOnLinuxをインストールしてみた。tarパッケージは491KBの大きさがあり、ごく簡単なインストール手順付き。UbuntuなどのDebian系システムには、497KBのコンパイル済みPlayOnLinuxバイナリーが用意されている。

 PlayOnLinuxはゲームだけでなく、拡張パックやパッチのインストールも可能。また、実体はWineであるから、オフィス・ソフトウェア、省力化ツール、グラフィックス・アプリケーションを問わず、Wineで動作するものなら何でも動かすことができる。インストールしたプログラムは、CrossOverのボトル実装に似たwineprefixという個別の環境に置かれ、インストール済みアプリケーションの一覧からアプリケーションを選んでFileメニューにあるRemoveをクリックするだけで削除することができる。

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PlayOnLine

 それだけではない。PlayOnLinuxは単なるフロントエンドの域を超えている。ゲームごとの環境整備やインストールを支援するbashスクリプトが用意されているのだ。公式スクリプトは10本だけだが、PlayOnLinuxのコミュニティー・リポジトリーには50を超えるスクリプトがあり、2つのリポジトリーからはCall of Duty 2、Max Payne 2、Soldier of Fortune、World of Warcraftなどのゲームをインストールすることができる。

 こうしたゲーム・スクリプトのほか、WorkOnLinuxというスクリプトもあり、これを使ってBlender、Google SketchUp、Safari、Winrarなどの自由に利用可能なWindowsアプリケーションをインストールするための環境を作ることもできる。

 もしお好みのWindowsゲームやアプリケーション用のスクリプトがなかったとしても、落胆することはない。どのようなゲームやアプリケーションでも、公式スクリプトのあるゲームと同じように、インストールや実行が可能なのだ。インストールにはLiveInstallスクリプトを、実行にはさまざまなPlayOnLinuxツール(WineBooster、WineMaster、WineConfigなど)を使う。こうしたツールはPlayOnLinuxと同時にインストールされ、Toolsメニューから起動することができる。

 ツールを起動するとWine構成ウィンドウが開き、オーディオやビデオなどに関する構成を変更することができる。たとえば、パフォーマンスを上げたければ、WineBoosterを起動してDirectDrawRendererモードやVideoMemorySizeなどといったWineオプションを調整する。また、ゲームに必要なDirectXとWineの特定バージョンのインストール、GitリポジトリーにあるWineの入手・コンパイル・インストール(WineGitを使用)、Wineのテーマの入手・変更、Windows Registry Editorファイルの編集も可能だ。こうした変更を行うとほとんどの場合Windowsが擬似的に再起動されるが、これはすぐに終わる。

 Settingsメニューからは、Glxgears、Glxmulx、GlxTinouなどといったグラフィック・テストの実行や、コミュニティー・リポジトリー使用の可否の切り替えができる。

 このようにPlayOnLinuxはすぐれものではあるが課題もある。最大の問題は言語だ。インタフェースを英語に切り替えることはできるが、非英語圏の開発者がほとんどであるためエラー・メッセージや情報の一部が未訳だ。また、WorkOnLinuxスクリプトでダウンロードしようとすると、多くの場合、英語以外のダウンロード・ページが開く(Safariスクリプトなど)。

 ほとんどのスクリプトが無限ループになっていることも問題だ。たとえば、PlayOnLinuxスクリプトを使ってゲームをインストールするとしよう。インストールしたゲームのデスクトップ・ショートカットを作った時点で終了するのが普通だが、このスクリプトはアイコン作成ステップに戻ってしまう。アイコンを作らないと指示するまで終わらないのだ。さらに、WineGitのように、Cancelボタンを押してもスクリプトが終了せず、そのステップを中止して次のステップに飛ぶだけというものもある。

 PlayOnLinuxにはこうした問題点はあるが、いずれも些末なものであり、WindowsゲームをLinuxで管理し楽しむのに十分有用なツールだ。

Linux.com 原文