Basket:メモ用アプリケーション

 GNU/Linuxデスクトップにはメモ用アプリケーションが豊富にある。単純な用途向けならKDEのKNotesやGNOMEのSticky Notesがあるし、アドレス帳や電子メールと統合したいならEvolution組み込みのMemos枠を使うのも良いかもしれない。また基本的なメモ以上のことを期待するなら(Monoを使用したアプリケーションであることを気にしなければ)ますます完成度が高まりつつあるTomboyが良いかもしれない。しかしこれまでのところもっとも汎用的で高機能なメモ用アプリケーションは、KDEの Basket だ。Basketはもはや、個人用のwikiやスクラップブック、さらには一時的なデスクトップの作成用アプリケーションとみなすこともできるほど非常に柔軟で何から何まで揃ったツールだ。プロジェクトとしてのBasketの今後は現時点では不明瞭だが、だからといってBasketの力を活用できないわけではない。

 名前からも分かる通りBasketでは、メモという概念が、テキスト/リンク/画像/アプリケーションランチャなども含めたありとあらゆる類いの情報の一時的な入れ物であるというように拡大解釈されている。もっとも初歩的な使い方としては、思いつきを投げ入れておく場所として各バスケットを使うことができる。さらに少しまとまりを持たせたり工夫したりすれば、メモやTo Doリストや、やや荒っぽいが手っ取り早いアドレス帳としても使える。

 KDEのヘルプファイルに含まれているBasketのハンドブックの情報はあまり十分ではないが、必要なことの大半は、BasketのWelcomeという名前のバスケットの中を見たり、メニューの中を見て回ったり、インタフェースを軽く試してみれば知ることができる。

 Basketを使うには、左枠の中にあるバスケットツリーの上で右クリックする。まったく新規のバスケットを作成することから始めても良いし、既存のどれかのバスケット階層の中にバスケットを作成することもできる。どちらにしても、新規のバスケットには名前を付けて、レイアウトとして1コラム/2コラム/3コラム/自由形式(コンテンツをどこにでもドラッグ可能)のうちのどれを使用するかを選択する必要がある。また、作成したバスケットの背景色を選ぶこともできる。

 枠内のバスケット上で左クリックしてProperties(設定)ダイアログを開けば、より凝った設定が可能だ。Properties(設定)ダイアログでは、バスケットの背景に(色ではなく)画像を指定したり、3コラム以上のレイアウトを選択したり、バスケットのオープンや切り替えを行うキーボードショートカットを設定したりすることができる。また、メニューからBasket→Password(パスワード)を選択すれば、バスケットにパスワードをかけて保護することができるし、Settings(設定)→Configure Basket Note Pads(Basket Note Padsを設定)を選択すれば、バスケットからリンクされている様々なタイプのファイルを開くために使用するアプリケーションを設定することもできる。とは言えこれらの設定は任意なので、使い始めるために必要なのは、前述したようにバスケットの名前とコラムのレイアウトを決めることだけだ。

 以上のような準備が終われば、バスケットにオブジェクトを追加できるようになる。文字のメモを追加するには、バスケット上のどこかでクリックして入力を開始すれば良い。必要に応じて基本的なフォントのスタイルや文の位置合わせなどを追加することも可能だ。その他のオブジェクトは、バスケットの中で右クリックしてメニューを出してタイプを選択した後パスを指定するか、デスクトップからドラッグ&ドロップすることで追加できる。

 もう一つの方法として、他のメモ用アプリケーションやテキストファイルから情報をインポートすることもできる。Basketにエクスポート可能なアプリケーションはややKDEに片寄っている――例えばTomboyからはインポート可能だが、Evolutionからはできない。

 マウスのカーソルをオブジェクトに当てたときにオブジェクトの左側に表示されるバーを使用すれば(なぜタイトルバーを使わないのかは疑問だが)、バスケット中のオブジェクトをそのバスケット内で移動したり、左枠にある別のバスケット内にドロップしたり、ビューアやエディタを使って開いたりすることができる。

 バーの他にも小さな下向き矢印があって、クリックすれば様々なタグを追加することができる。例えばTo Doリストの場合であれば、Done(完了)タグやNot Done(未完)タグや、4段階のプログレスバーや、3段階の優先度などを付けることができる。その他にもWork(仕事)やPersonal(個人)などのタグを使ったり、さらには自由に独自のタグを作成したりすることで、フィルタ(Edit(編集)→Filter(フィルタ))を使用したときに表示する内容を変更することが可能だ。

 バスケットでの作業を終えたら、バスケットを保存(アーカイブ)/バックアップ/HTMLファイルにエクスポートなどのオプションを利用することができる。

 Basketは、操作が簡単で覚えやすいにも関わらず非常に汎用的で高機能なので、人気のあるツールになった。その人気ぶりは、バスケットをコンピュータ間やユーザ間で簡単に共有可能にする、WebasketというBasketのオンライン版まで開発されたことにも見て取れるだろう。また「Desktop(デスクトップ)」というタグが付いたバスケットすべてをデスクトップ上の小さなパネルに追加するSuperKarambaアプリケーションも利用することができる。さらにBasketをKontactのプラグインとして追加することも可能なはずなのだが、この機能は現在のところは壊れていて、BasketをインストールするとKontactがクラッシュしてしまう(ただし対処可能だという報告もある)。

 これほど人気のあるBasketだが、今後の行方については残念なことに不明瞭だ。Basket作者のSébastien Laoût氏は、Basket開発に時間を取れなくなったことを発表している。Basket Usability Projectや今後の開発についてのロードマップが存在していたり、プロジェクトマネージャを続けるとLaoût氏自身が講演では述べたりしているのだが、それにも関わらず、Basket開発は一時的に休止しているようだ。つまり、KDE 4版やその他の新機能はもちろん、Kontactのバグの修正も近いうちには期待できないだろうと思われる。

 Basketはフリーソフトウェアなので、このまま消えてしまうとは考えにくい。それでも不確実な状況が長く続けば、しばらくの間Basketが機能しない状態になってしまうという恐れはある。万一そうなってしまうとしたら、それは非常に残念なことだ。というのもBasketは使えばすぐに手放すことができなくなってしまう、他のメモ用アプリケーションとは一線を画するエレガントなプログラムだからだ。Basketプロジェクトができるだけ早いうちに新たなリーダーと方向性を見い出すことができるよう願っている。

Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文