BayStar、SCOに2000万ドルの償還要求:PIPEは決裂か

SCO Groupの最大の出資者が、この金銭関係を早急に解消したいと望んでいる。カリフォルニア州ラークスパーを本拠地とする投資会社BayStar Capitalは、昨年10月、SCO Groupへの5000万ドルの融資のうちの2000万ドルを提供したばかりだ。ところがBayStarは、この出資の償還と、保有しているSeries A-1転換優先株2万株の償還を求める書面をSCOに送ったという。

この2万株は、約2000万ドルに相当する。SCO Group株(SCOX)の金曜日の終値は、1.29ドル(13%)安の8.37ドルであった。

金曜午後、BayStarのスポークスマンBob McGrathはNewsForgeに対し、その時点ではノーコメントであるとした。彼は、「ノーコメントという以外に、何も申し上げることがない」と述べている。

Royal Bank of Canadaの反応

PIPE(private investment in public equity)の残り3000万ドルを提供したRoyal Bank of CanadaのスポークスマンPaul Wilsonは、「まだ償還は要求していないが、現在この投資について再検討を行っており、近いうちに結論を出す」としている。

OSDNのIT株アナリストMelanie HollandsはNewsForgeに対し、「このPIPE取引(全体)は決裂寸前だ。Royal Bank of Canadaも、月曜日、もしくは近日中に償還を要求することになるだろう。」と語った。

4月15日付の書簡で、BayStarは、2月5日にSEC(証券取引委員会)に提出した交換協定の一部のセクションにSCO Groupが違反したと主張している。問題のセクションとは、2(b)(v)、2(b)(viii)、2(b)(viii)、そして3(g)である。これらの部分では、当初の購買契約の諸権限、ディスクロージャーに関する問題、この情報を公に提出する方法などが詳細に記述されている。つまりBayStarは、この取引に関して前もって知らせておかなければならなかったことのすべてを、SCO GroupがBayStarに報告しなかったと(間接的に)言っているのだ。

「BayStarからの書簡には、交換協定についてSCOが犯したとされている違反についての具体的な情報は含まれていなかった」と、SCO GroupのスポークスマンBlake Stowellは言う。「SCOは、BayStarから具体的な情報を入手しようとするとともに、この償還要求に関する義務と選択肢を判断しようとしているところだ」

「しかし、SCOとしては、ここに挙げられている交換協定の条項に違反したとは考えていない。よって、BayStarが保有するSeries A-1転換優先株の償還に応じる義務はないと考えている」

Stowellは「一体何のことなのか、困惑している。BayStarに対するディスクロージャーは、完全に公正に行ってきたと信じている」と語った。

Stowellによれば、BayStarからの書簡に関して、Royal Bank of Canadaとの間で特筆すべき対話は持たれていないという。「これは有形の通告だったので、Royal Bank of Canadaに開示する必要があり、実際そのとおりにした。」それ以上の連絡は行われなかったという。

「これ(今回の事態)はBayStarだけの話だと思う」とStowellは言った。

SCO Groupは、少なくとも現時点では2万株の償還を拒否しているため、BayStarは次の手段に訴える必要があるだろう。これが法廷に持ち込まれる可能性もある。

昨年10月、私立の投資会社であるBayStarが2000万ドル、Royal Bank of Canadaが残りの3000万ドルを、あわせてSCO Groupに提供し、危機にあったこのUnix企業を救った。後にBayStarは、別のSECファイリングにおいてこの取引の協定を変更した

Microsoftの関わり

先月のこと、PIPEによるSCO Groupへの資金提供のアイデアは、もともとMicrosoftの上級幹部数人によるものであったことを、BayStarが認めた。McGrathは、会長のBill GatesとCEOのSteve Ballmerはそこにはいなかったと言っている。

BayStarがこれを認めたことで、MicrosoftからSCO Groupへ金が流れていると考える根拠がますます増えたことになる。オープンソース・コミュニティのメンバの多くが、エンタープライズITシステムとしてUnixおよびLinuxを使っている多数の企業に対する訴訟の費用として、Microsoftが秘密裏にSCOを支援していると考えている。SCO Groupは、プロプライエタリなUnix System VのコードがオープンソースのLinux ITシステムに流用されたとして、IBM、Novell、DaimlerChrysler、AutoZoneをはじめとする数多くの企業を訴えている。

Microsoftがこれに関わっていると考える最大の根拠は、SCO Groupの元契約社員Mike Andererによるメモだ。このメモには、SCO Group幹部Chris Sontagに宛てられた報告書の詳細が綴られており、オープンソース・コミュニティのリーダーであるEric S. Raymondはこれを入手した後、3月3日に「Halloween X」ドキュメントとして発表した。

「これはSCOにとってよくない知らせだと思う」とTheStreet.comに語ったのは、Decatur Jones Equity Partners-SoleilのアナリストDion Cornettである。「BayStarが2000万ドルを取り戻せる可能性はあまりないだろう。私立の普通株投資会社が、償還を望んでいない会社に対して償還を要求するのは非常に難しいからだ。しかし、SCOが今後資金援助を受けるのは困難になるだろう。」

多額の訴訟費用が必要なSCO

SCOは、大部分のリソースを、IBMなどの企業に対して起こした訴訟に関連する調査、告訴、成立のために使っている。相手取った企業のほとんどは、SCOにとってかつての、または現行の顧客である。SCO Groupは、知的財産権の侵害とライセンスへの違反を理由に、IBMに対して50億ドルを要求している。

CornettはTheStreet.comに次のように語っている。「IBMのような巨大企業を相手取って裁判を続けるには、当然、多額の資金が必要だ。おそらくSCOは、すでに持っている6500万ドル全額をこの戦いにつぎ込むことになるだろう。訴えを取り下げない限り、数年にわたる長い訴訟になると思われる。」

Hollandsは数ヶ月間にわたり、SCO Groupの財政についての記事をNewsForgeおよびITMJに寄稿している。

BayStarの動きについて、Hollandsは次のように分析している。

3月15日以来、私はSCO GroupのPIPE取引が危うくなるのではないかと予想していた。取引が決裂するか、または、SCO株が安値を続けていることを考慮してBaystarおよびRoyal Bank of Canadaが近い将来、償還を求めるのではないかと考えていた。

SCOXのClass A seriesには、8.47ドルという償還のトリガー点があった。3月には、SCOXの大規模な売りがあった。この原因は、1つは市場全体の売り傾向と重なったということがあるが、この8.47ドルという基準に関連した売りがSCOX株の値下げを促進したとも考えられる。2004年3月18日のSCOXの終値は8.75ドルだが、日中取引中には8.44ドルまで下がった。その後、3月24日には大きく値を下げ、7.80ドルでその日を終えた。

さらに、例の買戻しの発表は、PIPE取引に関連した、株価をしきい値以上まで持ち上げるための必死の手段であったか、あるいは本当に、Canopyに現金を渡すためだけのまどろっこしい手段だったかのどちらかである。現在、このPIPE取引には、一定のレベル以下までSCOXの普通株株価が下がった場合、出資者に償還を許可する条項がある。

今年に入ってから、SCOXが10.50ドルおよび8.50ドル(私はこの2つの基準値がPIPE取引で重要だと考えている)以下で取引されたことが数回あった。11ドルレベルまで持ち直す前には、2週間にわたって8.50ドル以下で取引された。市場と株価のパターンには数多くの流れと傾向がある。

しかしながら、この株がその時々で「ランピング(ramping)」されていた可能性があるということをここに記しておきたい(ただし、直接の証拠は何もない)。ランピングとは株価操作の一種で、株価を上昇させるために、市場の参加者が一斉にある行動を取ることである。この操作は、株価が重要なしきい値(合併や転換可能取引に関連する転換率、またはPIPE取引などの償還基準値)を下回る恐れがある場合や、これ以下の安値を続けている場合に行われる。

注意が必要なのは、SCO Groupは2つのPIPE契約を行っており、それぞれに大量のSEC登録ドキュメントがあるということだ。要するに、最初のPIPEに文言があり、それが2つ目のPIPEによって変更されているのだ。これは、SCO GroupがSeries A(またはA-1)一般株の償還のために、一般株を登録したことに関連している。

最大の疑問は、Series A-1で規約が修正されたことで、いずれか、または両方のPIPE取引の時計がリセットされたのかどうかだ。私(そしてほかの人たち)の考えでは、新しい文言は時計をリセットすることはなかったが、重要な事件であったことは確かだ。