OpenDocument Foundationに何が起こっているのか?

 OpenDocument Foundationは5年前、「オープンな標準規格策定プロセス」においてOpenDocument形式を推進することを主な目的としてGary Edwards氏Sam Hiser氏Paul "Buck" Martin氏(marbux)によって設立された。しかしここに来て針路を変更し、逆戻りし始めた。ODFという名前が付いているのにも関わらず、現在ではW3CのCompound Document Formatを支持している。なぜこのような針路変更が起こったのかは、ちょっとした謎だ。

 OpenDocument Foundationが立場を変えたことについて、Hiser氏は同氏のブログで最近いくつかの記事を書いている。またOpenDocument Foundationのウェブサイトのトップページにも、長くまとまりのない文章の中にその理由の説明がある。それらの文章を私が正しく理解しているならば、Hiser氏とOpenDocument Foundationの主張は、CDFはMicrosoftの文書形式と親和性が高いのに対して、ODFはそうではないので良くないというものだ。

 2年前のLinux.comの記事でHiser氏は、MicrosoftのAlan Yates氏によるODFを非難した文書について、ODFを擁護して次のように述べていた。「(その文書は)虚偽の言明の寄せ集めであり、心理学で言うところの転移で埋め尽くされており、Microsoft自身のありとあらゆる不正行為をライバルによるものだと転嫁しようとしている。そういう意味ではこの文書は、典型的なMicrosoftのメッセージだ」。

 また今年の6月にはHiser氏はブログで次のように述べている。「ODFは、単一の組織による管理を防ぐよう、オープンで、マルチベンダーで、多様な利害関係者が参加するプロセスによって開発/保守される。一方OOXMLは、正式な標準規格団体に提出されてはいるものの、OOXML標準の管理は結局のところは単一の組織にかかっているため、開発/保守に関してODFよりもオープンではない」。

 以上の2つの見解――Linux.comのHiser氏自身による記事も、ブログの記事も――はいずれもOpenDocument Foundationのサイト上で示されている説明と矛盾する。

 最近のブログ記事ではHiser氏は、「われわれOpenDocument Foundationのメンバーは、今年のODF開発の方向性を残念に思っている。ODFは、われわれが考えていたような、あるいは当初計画されていたような、オープンなプロセスをともなうオープンな形式ではないとわれわれは考えている」と述べている。この記事もやはり、6月に述べた見解とは矛盾している。

 またその後の記事では、「ODFが抱える弱点のうちの一つは、ODFが特定の一アプリケーションから生まれたものであり、その創始者たちがODFをバザールに対して一般公開するのを渋っているということだ。皮肉屋ならば、このことが某超大手企業の文書形式をだめにしている問題と本質的にまったく同じだということに気付くだろう」と不平を述べている。

 言うまでもないことであるが、その内容は正確には正しくない。ODFはオープンな標準だ。一方「某超大手企業の文書形式」はそうではない。その点からしてすでに正しくない。確かに、ODFにはSunとOpenOffice.Orgの後ろ楯があり、Microsoft Office形式にはレッドモンドの後ろ楯がある。しかし普通の人々にとっての決定的な違いとして、ODFでは、誰でもが皆、データを読んだり表示したり変更したりすることができるアプリケーションを書くことができるということがある。つまりは相互運用性ということだ。それに対してMicrosoftの文書形式はそうではなく、Microsoftの独占状態を長引かせて維持するような設計になっている。しかしどうやらHiser氏はそのような細かい点にはもうこだわっていないようで、現在ではこのことを「選択の自由、オープンさ、価値、相互運用性、という死ぬほど退屈な決まり文句の繰り返し」として片付けている。

 この問題をブロガーたちは思う存分に楽しんでいるようだ。中でもHackFUDサイトはおそらく、業界誌/ブログを問わずこの問題に関して私が見た中では最も優れた、最も教育的な論じ方をしている。この状況についてのHackFUDの見解は次の通りだ。「Open Document形式に関する限り、議論の余地はない。ODFは世界的に認められた標準である、以上、終わり。現在もこのことを議論しているのは、OpenDocument Foundationの中の人たちだけだ。そして私が知る限り、その人数はすべて合わせて総計2、3人だ」。

 OpenDocument Foundationのメンバーと運営者についてHiser氏に尋ねたところ、「OpenDocument Foundationの創設者で代表のGary Edwards、法務担当ディレクタのmarbux、ビジネス関連担当の私がいる。OpenDocument Foundationは501(c)3の非営利組織だ」との回答を得た。しかしHiser氏によるとOpenDocument Foundationの余命はいくばくもないのだという。「われわれはもうODFとは関わらないので、OpenDocument Foundationを存続させる目的はなくなった。組織は徐々に活動を終了することになる。ただしわれわれの開発作業は、何らかの建設的な形で続行する」。

 6月の時点の見解と現在の見解に矛盾があるように思われるということについてHiser氏は次のように述べた。「引き合いに出されている記事は、5月まで公開されなかったが、原案は1月か2月に書いていたものだ。ODF開発の方向性についての問題は、3月か4月になるまでは完全に明白なわけではなかった。6月までは、開発の方向性に影響を与えようと内部的に努力を続けていたのだ。そして6月になってmarbuxとGaryが 『ODFはゲームオーバー?』という文書を発表した」。

 OpenOffice.orgのコミュニティ担当マネージャであるLouis Suarez-Potts氏に最近のOpenDocument Foundationについて何か知っているかと尋ねたところ、「私に聞くよりも、OpenDocument Foundationのウェブサイトを見た方が状況がずっとよく分かると思う」と述べた。そこでOpenDocument Foundationのウェブサイトを見てみたところ、ページ左側にあるリンクは「404: ページが見つかりません」エラーを表示した。

 Suarez-Potts氏はまた、Hiser氏が新たに入れ込んでいるフォーマットを皮肉った。「CDFの実装が現在いくつ存在するのか、あるいは今後いくつ生まれるのかということは注目に値するだろう……もし一つでもあるのならば是非教えて欲しい」。

Linux.com 原文