GPLv3 DD1 & Rationaleの訳

ということで、GPLv3がらみの翻訳は、できれば日本を発つ前に一区切り付けておきたい。

などと抜かしていたのは今や昔、結局こんな時期になってしまった。ということで、GPLv3 1stドラフトの全訳1st Rationaleの全訳を掲載。

例によって私の訳は、それなりに法律ジャーゴンに気を配りつつも「日本語として素直に読める」ことを優先しているので、訳語の選択や法的文書としての体裁には問題があるかもしれない。識者諸氏のご叱正をお待ちする次第。「これのどこが素直に読めるんだ」という向きもあるでしょうが、原文からして結構ややこしいのですよ…。もちろん派手に訳し間違えている可能性もある。何かおかしいところがあれば、遠慮なくコメントして頂きたい。読みにくいところは、おそらく私もちゃんと理解できていないのである。

GPLv3原文はすでに2ndが出ている(再来月の頭には3rdが出る)ので、今さら1stを読みたいと言う人は少ないかもしれないが(もちろん2ndの訳も間もなく出しますが)、FSFというかRMSがGPLv3で表現したかったことは、どちらかと言えば1stのほうに素直に出ているというのが私の感触だ。2ndには1stを読んだ多くの方々から寄せられたコメントが反映されており、ライセンスとしての完成度も格段に上がっているが、当然のことながら1stほど先鋭的ではない。もちろん1st Rationaleを読めばわかるように、1stも妥協の産物ではあるのだが。

ともあれ、Rationaleの最初のほうだけでも読んでみて欲しい。私たちが今や空気のように享受しているハックの自由を今後も維持していくにはどうしたらよいか、一つの具体的な方法論が示されているからだ。それは実装としてのGPLv3とは独立した、普遍的な思想である。オープンソースにしろフリーソフトウェアにしろ、それが拠って立つ自由を守るにはそれなりにコストがかかる。場合によってはややこしいこともいろいろ考えなければならない。それさえ理解していただければ、訳者冥利に尽きるというものだ。同意するか反発するかはあなたの自由。だが一度は、自分の頭でじっくり考えてみてほしい。