ありふれた話ですが

カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の元教授、学部長で、現在はGoogleのチー フエコノミストとなった経済学者のハル・ヴァリアン (Hal Varian)が、New York TimesのFreakonomics blogでインタビューに答えている。全体になかなか興味深い内容だが、特 に以下のくだりは大学の新入生のみならず、今後自分の専門性の重心をどこに 据えたいか迷っているプログラマなどにも参考となるだろう。

多くの人から引っぱりだこの職業に就きたいということであれば、ありふれて いて安いものに対し、希少で補完的なサービスを提供するのが良いわけです。 では、至るところにあって安価なものとは何でしょう? それはデー タです。そしてデータに対して補完的なサービスとは? そのデータを分析する ということです。ですから私としては、データベースや機械学習、計量経済学、 統計学、視覚化といった、データの操作や分析のやり方を学ぶ授業を多く取っ て勉強するのをおすすめします。
当たり前の話ではあるのだが、改めてこれくらいスパっと言われると気持ちが良 い。まあ、みんながみんな勉強したらそれはそれでコモディティ化してしまう し(例えば個人的には「仕様通りのコーディング能力」というのはすでにコモディ ティ化しつつあるような気がしなくもない)、実のところデータ分析は(ある 種のセンスは問われるものの)定石化というかマニュアル化がしやすい分野でもあ るので、ヴァリアンの発言は若干眉につばを付けて見る必要があるようにも思 うが(ニコラス・カーあたりは辛辣なことを言いそうだ)、それでも「ありふれていて安いものに対し、希少で補完的なサービスを 提供する」というのが今後多くの分野で鍵となる基本原則なのは確かだと思う。 オープンソース・ソフトウェアはそこら中にあるがそれをデプロイしてまともなサービスをローンチするのは大変です、とか、みんなが知っているありふれた事柄について気の利いたことを書くとアルファブロガーになれます、みたいな、これまたありふれた話ですけどね。

ヴァリアンはもちろん著名な経済学者だが、個人的には旧BSDライセンスから宣 伝条項を外してくれた恩人という印象が強い。彼がカール・シャピロと書いた「ネットワーク経済」の法則は、結構古い本な上に邦訳の題名がよくあるビジネス書みたいなので損をしているが、最近出た新書のあれやこれやを読むよりは、今だにずっと勉強になると思います。